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ある日、学校で一つの噂を耳にした。
それは、3年前この校舎の屋上から飛び降り自殺をした生徒の霊が出る、というよくある心霊系の物だった。
周りの生徒は近頃この話題で持ち切り。
廊下を歩けば必ず耳に入る。一つの噂。
「なぁなぁ、旬!今日なんか用事ある!?」
「え、なんも無いけど…」
部活に入っていない僕。
いつも通り帰る支度をしていると同じクラスの友人、長野皇牙《ながのおうが》が勢いよく話し掛けてきた。
「マジ!?あのさ!旬もあの噂知ってるだろ!」
“あの噂”この単語であらかた話し掛けられた意図を理解した。
好奇心旺盛な男子高校生×心霊系の噂。
この二つが揃うと結末は決まって一つ。
「学校に出る自殺幽霊!
今日の夜、一緒に見に行こうぜ!」
案の定、予想通りの言葉が返ってきた。
「んー、どうしようかな…」
あまり気が乗らず、やんわりと行きたくない雰囲気を作り出し断ろうとする。
「えー!いいじゃんかー!
最近ノリ悪ぃしよ、一緒に行こーぜ!なっ?」
雰囲気などぶち壊し詰め寄る皇牙、実の所少し…いや結構苦手だ。
だが、友人関係を築き上げることに苦手意識がある僕にはこの関係を切り捨てられる勇気も無く、ノリを合わせ渋々付き合ってきた。
友人と言えるのかどうかギリギリだろう。
「…分かったよ。行こう」
「っしゃ!じゃあ、夜の8時に校門集合な!」
断り切れず半強制的に参加させられる。この連鎖を止められずにいる僕自身に嫌気がさす。
こんな関係、もう飽き飽きだ。
心から友人と思える関係が欲しい。
日はすっかり落ち、月明かりが降り注ぐ。
約束通り校門前に立ち、腕時計を確認した。
時計の針は8時を指していた。
少しすると、遠くから手を振りながら向かってくる皇牙の姿が見えた。
「着くの早ぇじゃん!もしや乗り気だな?」
そう言いながら皇牙は上着のポケットから懐中電灯を取り出した。
すると、懐中電灯を顎に当て、照らしながら恐ろしい表情を浮かべ低い声で語り出した。
「ようこそ、恐怖の学校へ…」
街灯の明るさはあるものの、夜の薄暗さも相まって、ホラー映画のような不気味さが僕を襲う。心霊が大の苦手な僕は恐怖心で全身を震わせた。
その様子を見た皇牙はケラケラと楽しそうに笑っている。
「見回りが居るかもしれない。早く行くぞ」
「う、うん…」
校門をよじ登る皇牙を前に、恐怖で震えている手を握りしめ、覚悟を決めて僕も後を追う。
校門を越え正面玄関に辿り着く。
昼間の玄関とは何もかも異なり、まるで別の場所とも思えてくる。
皇牙は躊躇なくズカズカと中に入って行ってしまう。
流石にこの空間で一人は耐えられそうにない。はぐれてしまわないように早足で皇牙を追い掛けた。
その後、音楽室やトイレ、使われていない階段など、漫画の知識を元に出そうな場所を巡ってみたものの、特に何も起こらず後は噂の屋上のみとなった。
「なんだよー、なんも出ねぇじゃんか…」
「やっぱり、ただの噂だったんだよ」
「ちぇ…詰まんねぇの」
人影ひとつ見つからず、皇牙は呆れている様子だったが、僕はただの作り話だったと分かり、一安心していた。
すると突然皇牙が立ち止まり、目を細めて口を開いた。
「おい、旬…なんだアレ…」
皇牙の小刻みに震える手で指さした先を見ると、白く光る何かがゆらゆらと蠢いているのが見えた。
「う、嘘…でしょ…」
僕は思わず一歩後退りをする。
しかし僕の後ろには少し段差があり、その段差に足を取られバランスを崩してしまった。そしてその拍子に音を立ててしまった。
その音に反応した謎の光はこちらを向いた。
一瞬の出来事に、皇牙と僕は唾を飲み込み、冷や汗を流した。
緊張が張り詰めた空気を破ったのは震えている皇牙の声だった。
「お、おい、そろそろ帰るか…」
僕は声を出さずに頷く。
次の瞬間、謎の光がこちらに向かってゆっくりと動き出した。
僕らは恐怖が頂点に達し、声を上げ玄関を目指し全力で駆け出した。
突然駆け出した為、普段あまり身体を動かさない僕は足が絡まり誤って転倒してしまった。
皇牙は一度振り返りはしたものの、僕の後ろを見てはまた走り出してしまった。
これは仕方がない、後ろから謎の光が迫っている状況。
きっと僕だって置き去りにして走り去ってしまうだろう。
皇牙の走り去って行く姿を見詰めていると肩を何かに叩かれた。
僕は怖さで泣き出してしまいそうになる。
恐る恐る後ろを振り返るとそこには…