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アウラウラ
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琉姫
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定期テストまであと2週間。
灯の学校はテスト2週間前になると全ての部活動が停止される。とはいえ、勉強漬けで部活に入っていない灯からすれば帰り道がいつもよりうるさいのと、母からの無言の圧力で潰されそうになる以外何ら変わりのない2週間だ。ただ、いつもひとりで歩いている通学路を一緒に歩いてくれる友達がいるということだけは嬉しかった。
「もうすぐテストか〜。あの顧問から解放されるのは嬉しいけど、勉強だるいなぁ」
そういって美英は灯の隣をとぼとぼと歩く。
「あの顧問…。あー、吹部の顧問だからたしか…。」
「関谷だよ関谷!」「いや名前は分かるんだけど、私音楽は選択してないから顔がわからなくて…」 と言うと美英は驚いた顔をした。
「ちょあかりんっ、もう2年生だから顔くらいは覚えとこうよ〜。ほら、いつも派手な色合いの服を着てる先生だよ!今日もザ・蛍光色って感じのオレンジの服を着てたじゃん!」
「派手な…あっ、この前ネギみたいな色の服着てた先生?」「そうそう!その先生だよ。この2週間、多分関谷の愚痴ばっか言うと思うから覚えといて!」
愚痴って…。たしかに吹部の顧問も副顧問も明るい人だとは聞いていたけど…。
ただ、美英の話の内容が何であれ、この下校中の時間だけは『普通の高校生』 でいられるような気がして、灯は嬉しかった。
「…そういえばみはって、どれくらい勉強した?」「んー。副教科はやる気あるんだけど、あの5教科がねー、、。まぁ最悪私には一夜漬けっていう切り札があるから」
「いや質問の答えになってないよ」灯はそう言って笑った。やっぱり、こうしている時間が1番楽しい。
「じゃああかりん、また明日〜」
「またね」
そう言って二人は別の道を進む。家が近くなるほどに、灯は気持ちが沈んでいく。普段は小テストで機嫌をとれるが、定期テストとなると厄介だ。あの母親の冷たい視線がさらに冷たく、何を考えているのかわからないものになる。
ドアの鍵をなるべく静かに回す。
いつの間にか音を立てることすら怖くなっていた。
「…ただいま」 しばらくして部屋の隅で電卓を叩いていた母が顔を上げる。家計簿を書いていたようだ。「…お帰り、今日はいつもより遅かったわね」「今日は友達と一緒に帰ったから」 母は灯をちらりとみて、その視線を電卓に戻す。「そう、手洗いをしたら勉強するのよ」「分かってる」そう言って灯は玄関の隅にカバンを置いて手を洗う。
何かに逃げるように階段を上り自分の部屋へ行く。
(2週間前か…そろそろ私も副教科に手をつけ始めないと)
そう考えながら机の上にペンケースやルーズリーフを出す。
(とりあえず情報を何とかしないと。16進数の計算とか意味が分かんない。いや、まずはビットやらバイトやらの単位の意味を覚えてそれから…)
「おーい、灯〜」
…。
「アカリ…」いつの間に部屋に来たんだろう。
「学校お疲れ様!帰ってきてから早速勉強?」
「うん。2週間前だから副教科にも手をつけないとなって考えてたところ」
「へぇ〜」アカリはいつも通りふよふよしながら机を見る。ただ興味はなさそう。
「にしても帰ってきたらすぐに勉強だなんて、もう少し休んでからにすればいいのに。あ、せっかくだし美術館に来る?歩いてるだけでも楽しいよ!」「それはアカリが遊びたいだけなんじゃ…」「まぁまぁ、細かい事は気にしないで!そうだ!あえて悪い点数を取って、あの怖いお母さんを失神させちゃおうよ!」
それはちょっと…。
やっぱり、アカリは不思議な子だ。顔が私と同じだけど、なんて言うか、私より自由な子だな。色々気になるところはありすぎるけど。
私もこんな感じだったら、まだお母さんと楽しく過ごせたのかな、。いや、でもそれより…
「アカリ」
「ん?なぁに?もしかして、あのお母さんを失神させる気になった?」
「えっいやそうじゃなくて…」
少し息を吸う
「…ありがとう」「?」
「なんて言うか、アカリのことはまだよくわかんないし、信じていいのかよくわからないけど、でも、アカリが来てから、なんだか少しだけ心が軽くなった気がしなくもないような気がするっていうか…。」
「えっ灯。私のこと信じてなかったの⁉︎」
「いやそうじゃないけど、アカリが何なのかまだ分からないから仕方ないっていうかえっと…」
アカリはため息をつき、灯の前でくるりと回る。
「仕方ない。じゃあ、もう一度自己紹介したげる。私はアカリ。灯が『本当の自分』を見つける手助けをしに来たの!覚えといてね!」
本当の自分…。
「ふふっ」「え灯、なんで笑うの⁉︎」
「いや、何でもない。少しだけ元気が出たよ」
「ん?まぁ、それならよかったけど」
結局、アカリが何者かはまだはっきりしないけど、これから長い付き合いになるかも。
灯は気づいていなかった。
母親のために心をすり減らしながら、勉強に日常を奪われながら、美英の前でしか人間らしくいられなかった灯が、
「楽しみ」と思っている事に。
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