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mion
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「お兄ちゃん!! 遅刻するーーー!!!」
朝の大通りに、少女の声が響いた。
真っ赤な長髪を揺らしながら走る少女——神谷満は、全力で前を走る兄の制服を引っ張る。
「急いで急いで急いで!!」
「……まだ間に合う」
「間に合ってないから走ってるんでしょ!?」
対する兄、神谷孤月はいつも通り無表情だった。
眠そうな目。
だるそうな声。
なのに足だけは異常に速い。
周囲の人間が二度見する速度で、人混みをすり抜けていく。
「うわっ!?」
「な、なんだあの兄妹!?」
「速っ……!」
満は笑いながら振り返る。
「ごめんなさーい!!」
孤月は無言。
そのまま校門前へ滑り込んだ。
《アストレア魔導学園》
異世界最大級の魔法学園。
世界中から天才と問題児が集まる場所。
そして今日——
入学式。
「でっかぁ……!」
満は校舎を見上げて目を輝かせた。
巨大な白い塔。
空中を飛ぶ魔導列車。
空に浮かぶ訓練場。
まるで街だった。
「テンション上がる!!」
「……人多い」
孤月は面倒そうに周囲を見る。
すると、
「あっ!!」
元気な声が飛んできた。
金髪ギャル少女が、猛スピードで駆け寄ってくる。
「孤月ー!! 満ちゃーん!!」
「恵里!!」
香城恵里だった。
「久しぶりじゃん! 元気だった!?」
「うん!」
満が笑顔で答える横で、孤月は軽く手を上げるだけ。
「……久しぶり」
恵里はニヤニヤした。
「相変わらずテンション低っ!」
「普通」
「普通じゃないんだよなぁ」
その時だった。
ドゴォォォン!!
校舎の奥で爆発が起きた。
煙が上がる。
周囲の新入生が悲鳴を上げた。
「きゃあああ!?」
「な、何!?」
恵里が目を逸らした。
「……あっ」
満が察する。
「恵里?」
「いやそのぉ〜……」
「恵里」
「発明ちょっと失敗しただけ!!」
「お前かよ」
孤月が即ツッコんだ。
数分後。
新入生達は大講堂へ集められていた。
満はキラキラした目で周囲を見回す。
「すご……人いっぱい……!」
「寝たい」
「まだ始まってもないよお兄ちゃん!?」
その時。
壇上に一人の男が現れた。
黒髪。
若い顔。
軽い笑み。
どう見ても生徒だった。
「えー、入学生諸君。ようこそアストレアへ」
声が響いた瞬間、
講堂全体が静まり返る。
満が小声で聞く。
「……誰?」
孤月が答える。
「……強いな」
「え?」
男は笑った。
「学園長の天城時雨です。よろしく〜」
会場騒然。
「若っ!?」
「嘘だろ!?」
「生徒じゃないのか!?」
時雨はケラケラ笑う。
「よく言われる」
その後ろでは、
副担任の黒峰零牙が頭を抱えていた。
「学園長、真面目にやってください」
「えー」
入学式は順調——
には終わらなかった。
突然。
ビィィィィィッ!!
警報が鳴り響く。
空気が変わった。
教師達が一斉に立ち上がる。
零牙が低い声を出した。
「魔力反応……?」
次の瞬間。
講堂の壁が吹き飛んだ。
ドゴォォォォン!!!
「きゃあああ!!」
「うわぁぁぁ!?」
巨大な魔獣が現れる。
黒い皮膚。
赤い目。
新入生達が凍りついた。
「なんで校内に魔獣が!?」
「結界は!?」
混乱する会場。
その中で。
満が小さく呟く。
「……お兄ちゃん」
孤月は立ち上がった。
「……面倒」
でも、
刀に手をかける。
魔獣が咆哮を上げ、
新入生へ飛びかかった——
瞬間。
ヒュンッ!!
銀色の斬撃。
魔獣の腕が飛んだ。
「……え?」
誰も反応できない。
気づけば。
孤月が、
魔獣の目の前に立っていた。
静かな声。
「入学式くらい静かにできないのか」
魔獣が怒り狂う。
だが——
満が笑った。
「お兄ちゃん、左お願い!」
「……了解」
魔力が弾ける。
新入生達はまだ知らない。
今、自分達の目の前にいる兄妹が——
学園の常識をぶっ壊す問題児だということを。