テラーノベル
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遠くの方で通天閣の頂上が見える、大きな淀川の川沿いを走りながら、ジェニはよりいっそう彼に身を寄せた
真夏とはいえ、夜風がノースリーブの腕を通り抜けて行く・・・でも風のほとんどは彼が受けてくれている・・・認めるのは悔しいけどバイクに乗るのは最高だ、アドレナリンが騒いでいる
数分後・・・美しい川に大きな三日月が映るのを眺めながら・・・彼がスピードを落とすとジェニはサンバイザーを上げて叫んだ
「ねぇ!遠回りして!!」
バイクのエンジン音ではっきりとわからなかったが、彼が「ハハッ」と笑ったのが身体の振動で伝わった
次第にジェニはリラックスして彼の腰に回した腕の力を緩めた、右手が無意識に彼の腹部を撫でてしまい・・・それに反応した彼の腹筋が硬く引き締まるのを、薄いTシャツ越しに手に感じた
ジェニが・・・彼とベッドを共にすることを考え始めたのはその瞬間からだった
ジェニは心の中で誰に言う訳でもない言い訳を始めた、そもそも彼はジェニがこれまで目にした男性の中で、誰よりも逞しく、ハンサムでセクシーだ、そう考えるとジェニの両内太ももで、今彼のお尻を挟んでいることにも意識が行く
ジェニは必死に淫らな妄想を止めようとした・・・ところが交差点で停止すると、ジェニは竜馬がエンジンをかける時に手をハンドルだかクラッチだかなんだかわからないそれを、どんな風に握るかに目が行ってしまった
、
まるで愛撫するかのように握っている彼の力強い手は、ジェニを持ち上げたり、降ろしたり、ひっくり返したり、壁に押さえつけたりできるだろう・・・実際に彼に壁に押し付けられて、燃えるようなキスをされた
それにシャワー室での彼の上半身裸・・・バーベルをかちあげる時のあの感じているような唸り声、ビショビショの前髪汗だくの彼・・・
この時点でジェニはクレーンでも使って、引き上げてもらわなければいけないほど、妄想の沼にズブズブにはまり込んで、抜けなくなっていた、家の近所を走っている頃には、ジェニの妄想は佳境に入っていた
真っ白いマトリックスのような世界で、ジェニと竜馬二人だけ、真っ白いシーツに横たわる、一糸まとわぬ竜馬の逞しい体、彼はシャワーから出たばかりで、髪はあのジェニがゾクゾクするような湿ったボサボサ頭で、きれいな目がチラチラ覗いている
彼は意味ありげな含み笑いをし、ジェニもそれに官能的な微笑みで答える・・・その時の自分は処女じゃなく、男を惑わす悪女で、ジェニはバスタオルを床に落とし・・・竜馬の元に向かう・・・それ以上の言葉はなく・・・二人はシーツの海の中で戯れ――
キキーーーッ
バイクが停止し、エンジンが切られ、思わずジェニはゴンっとヘルメットごと後ろから彼に頭突きした、そこでハッと沼から出れた、我に返るのに、少し時間がかかり、現実に戻って目をパチパチした
ジェニが動かないことに気が付いた竜馬が、自分のヘルメットを脱いで、ジェニのヘルメットもスポっと外した
「大丈夫か?」
心配そうにジェニの顔を覗き込んでいる、ジェニはやっと自分を取り戻した
「う・・・うん・・・大丈夫・・・」
何とか取り澄ました表情を装って言った、竜馬がジェニをしげしげと見つめる
「顔が赤いぞ?酔ったのかな?気持ち悪いことないか?君はワインを飲んでいた」
「絶好調よ」
ジェニは赤い顔を竜馬から隠した
そして見渡してみるとバイクは我が家の前に停車していた
父も死んで・・・兄も行方不明で・・・今はこの大きなお屋敷にジェニ一人が住んでいる・・・この寂しくて暗い我が家に、腰にジャケットを巻いているからといって、ワンピースとハイヒールでバイクにまたがっているのは心もとなく、慌ててバイクから降りてホッと一息ついた
・.。. .。.:・
竜馬はしばらくジェニの家の玄関に立って、懐かしい家を目を細めて見渡していた・・・
その二階建ての古風な家は相変わらず、威風堂々とそびえ建っていた・・・玄関までの中庭は広く・・・右側を囲むように庭があり・・・ガレージまで続いている、最近建ったのだろう隣の新築一軒家の三軒分は余裕である
#ロマンスファンタジー
百はな🍑
4,289
#魔法
しろのね
283
30
3
ここだけ時が止まったかのようだ・・・何もかもあの頃のままだ、20年前・・・父の会社の倒産騒動からここに逃げて来た・・・そして竜馬はアメリカに行く前の一ヶ月ここで過ごした・・・楽しくて・・・悲しかったあの日々・・・
「ねぇ、どうして私の家の場所を知ってるの?」
ジェニがジロリと竜馬を睨んだ、途端に竜馬の顔が引きつった、竜馬の中で緊張が走った、彼女は思い出すだろうか?・・・あの時すべてを失って、無一文で家の電気や水道を止められていたので、何日も風呂に入っていなく、腹を減らし・・・薄汚れてTシャツとGパンしか持っていなかった惨めな少年を・・・
竜馬の心臓が動きを速めた、咳ばらいをして、何か言おうとしたが、何も思いつかなかった
ハハ~ン・・・「さては・・・私の住所を調べたわね?」
ジェニは腕を組んで片眉を吊り上げた、竜馬はどこかホッとして、じっとジェニを見下ろしていた
「まぁ・・・いいわ、送ってくれてありがとう・・・」
「玄関に入るまで送る」
竜馬の意外な一言に、またジェニは瞬きをした・・・二人はまた見つめ合った・・・何か依然と違う優しいものが二人の間に流れている・・・ジェニがコホンを一つ咳をして言った
「えっと・・・それじゃぁ・・・このロケットみたいなマシンを道端に置いておくのは近所迷惑だわ、こっちへ・・・」
ジェニが家の電子キーをかざすと、自動駐車場のドアが上がった、だたっぴろい駐車場には今はジェニの愛車水色のラパン(愛称鈴木)がちんまり駐車していた
かつて彼女の父親が生きていた頃は、ここにベンツや商用車が常に沢山止まり、多くの人がこの家を行き来していた、ガランとした駐車場を見て・・・あの頃を思い出していた、竜馬は少しだけ切なくなった・・・本当に一郎さんはいなくなったのだ
「ねぇ!バイクって楽しいわね!私も免許取ろうかしら」
「危ないぞ」
ジェニが笑った
「まぁ!それが運転してる人がいう事?私を強引に乗せたくせに」
「僕の後ろに乗るのなら問題ないが、女性がバイクを所有して一人で乗るのは、お勧めしないな・・・でも今ならいいぞ、運転席に乗ってみるか?」
竜馬はバイクに跨いでいる体を後方に滑らせた
「でも私運転できないわ」
「エンジンはかけないよ「鈴木」の横に置きに行くまで、僕が足で漕いで転がしていくよ」
それならいいと、ジェニは好奇心に負けて、ドゥカティの運転シートにまたがった
少しでいいから運転している気分を味わってみたかった、後ろの竜馬がジェニの体をその胸に引き寄せるとジェニは息を呑んでビクンとした
「これがクラッチ・・・こっちがアクセルで・・・これがウィンカー」
竜馬が彼女を前に乗せてハンドルを握らせて説明する・・・静かにバイクを足でこいで、ガレージにゆっくり向かっていく・・・当たり前だが、大きな家は暗く静まり返っていた、そして20年前に「笹の木」があった場所を通り過ぎる
バイクを運転している間・・・ずっと彼女の背中に触れるやわらかさとしがみつく小さな手の感触を味わった・・・うまく言葉にできないが、彼女の純粋さと信頼して身を任せてもらっていた事実に胸が切なくなった
大人になったのに・・・やっぱり彼女の本質は変わっていない気がした・・・静かにバイクを転がし、カエデの木陰に入った、風に揺れる木の葉が月光と影のダンスを踊る
竜馬は転がしていた脚を不意に止め、腕の中にいる彼女の髪を耳にかけ、後ろから耳にキスをした
ジェニの体が強張り息を呑む音が聞こえた・・・そして彼女はゆっくり顔だけ後ろに振り向いて言った
「ど・・・どうして・・・いつも私にキスするの?」
「君は質問ばかりだな」
竜馬が顔をさらに近づける・・・唇が顎の下のかぐわしい部分に触れそうだ
「あ・・・あなたが・・・謎すぎるのよ」
「ただ・・・キスしたいだけじゃダメなのか?」
月明かりの中・・・ジェ二はハンサムな彼の顔を眺めた・・・じっと彼もジェニを見つめてくる
正直レストランでは、彼のおかげで店の人の目線を気にしてみじめな気持ちになっている所を救われた
そして夜のバイクのドライブ・・・綺麗なものを沢山見せてくれて心が満たされた・・・こんなに楽しい気持ちになったのは父を亡くして以来かもしれない・・・
今夜の彼はみじめなジェニを救い出しにきてくれたヒーローみたいじゃないか・・・ヒーロには美女のキスのご褒美がつきものだ
ジェニが彼にもたれ・・・上を向いて顔を近づけて言った
「ただキスをしたいだけなのね?今日の所はそれでもいいわ・・・」
・.。. .。.:・
月が明るく照らす中・・・カエデの木の下でバイクにまたがったまま二人はキスをした
コメント
1件
わあ、夜のバイクと月明かりのシーン、すごく印象的でした!ジェニの妄想が止まらなくなっていく様子がコミカルで可愛くて、でも最後のカエデの木の下でのキスはロマンチックで胸がときめきました。竜馬が過去にここに来たことがあるっぽい伏線も気になりますね。二人の距離がぐっと縮まった回で、読んでいて幸せな気持ちになりました!