サイド キリ
私がモンダイジ団に入って一週間、この拠点でお世話になって気づいたことがある。
まず、この家、(キノの家らしいけど、ルネ以外ここで暮らしている。)普通の家にはない隠し部屋や隠し扉がかなりある。
キノ曰く、ルネが作ってくれたらしい。
それから、スマホ。太陽光で充電する必要無し。(これもルネとマオが協力して作ったらしい。)
……え、ありえないよね?それとも、最近の高校生ってそんなもん?(作者注※そんなことはありません。)
最後に、未成年だけで暮らしていること。
やっぱりこの団は変わっているな。
「マオ、大変!!」
ある日、まだ空が薄暗く気温が低い早朝に、タエが2階から階段を駆け下りてきた。
ふだんおとなしいタエが大きな声で叫んだので、私も何事かと慌てて声が聞こえたリビングへと急ぐ。
「ニュースの速報!音楽クリエイターのトキが誘拐されたかもしれないって!!」
『ええっ?!』
トキ。その名前は私も知っていた。
18歳という年でありながら、この世界の闇を真っ直ぐに捉えた歌を一人で作って歌った天才。
その歌声で多くの人を魅了している。
私も苦しくなったとき、何度もトキの曲に救われた。
そのトキが……誘拐された?!
ガタッと大きな音を立てて、マオが椅子から立ち上がった。
そして、一直線に玄関へ向かう。
「お、おいマオ!どこ行くんだ?!トキのいる場所なんて分からないだろ?!」
慌ててキノがマオの腕を掴んだ。
「落ち着きなよ。マオが苛立つのもわかるけど、まずは手がかりを探すのが先でしょ?」
「っ……」
ルネが静かにマオを諭す。
ばっとキノの手を振り払うとソファに座って頭に手を当てた。
「ね、ねぇ。マオってトキとどんな関係なの?」
マオの取り乱し方は、尋常じゃなかった。
私は気になって、こっそりとタエに聞いた。
「マオはね、トキの大ファンなの。トキの歌がなかったら今頃自分は死んでたって言ってたくらいに」
「だから俺は絶対にトキを助けたいんだ」
マオがそう言ってパソコンを開いた。
ってか、聞いてたんだ。いや、別に隠すことでもないんだろうけど……。
「頭、冴えた?」
「ああ、今ならどんな手がかりも見逃さない」
そう言ってマオは高速でパソコンのキーボードを叩きだした。