物心ついてからこの年齢になるまで、3人の側にはいつでもタブレット端末が存在していた。寂しい時、辛い時、苦しい時はSNSで気持ちを紛らわせた。
それが自然な生き方だった。
渡辺は、この数日の間に起こった国家の出来事をメモし、自分なりにシナリオを組み立てた。
中学生の頃に動画サイトで見た、シリアでのロシア軍による過激派組織の掃討作戦が頭にチラついていた。
白黒の画面に映る敵兵が、廃墟と化した街中を逃げ惑っている。
そこへ容赦なく浴びせられたバルカン砲の銃弾が、さっきまで生きていた人間の身体を木っ端微塵に吹き飛ばし、その度にパイロットは歓声をあげた。
淡々と聞こえる、無線の声と銃弾の音。
渡辺は、一晩中そのたぐいの映像を眺めながら、空想を膨らましていた。
「東京ジェノサイド」
「東京テロ」
は、渡辺にとっては面白い素材でしかなく、同情や憎悪も存在しなかった。
また、その後の世界情勢も同様で、一瞬のうちに人間が消え、テロが発生したかと思えば、アメリカ軍の司令機が羽田空港に墜落する。
この上ない素材に、渡辺は興奮していた。







