人はみんなのんきだ。
そんなんだから先を急ぐ人に置いていかれる。
のんきに歩いている人が電車のごとく走る人に追い抜かれるように。
世界一の記録をとって安堵している時にすぐに記録が抜かれるように。
いつ追い抜かれる、追い越されるかわからない。
そんな不安を、みんな持ってない。
でも、追い越されてしまったら、自分のしたことの意味がないじゃないか。
自分が努力したものはどこにいくんだ。
納得できない。
納得できないから、
だからきっと私は、急ぐんだ。
「えー、今年もまた運動会がある」
少し気張った声で先生が言った。
えー!、クラスがざわつき始める。
今は夏真っ盛り。しかも、運動会を夏休み の数日を使ってやるというのだから、みんなの不平不満が飛び交う。
「で、そこで、誰がどの種目をやるのか、学級長、副学級長で決めておけよ」
俺はあれやりたい、一緒にやろーね、そんな声があちこちからする。
先生はそう言ったあと、すぐに自分の机に向かい、偉そうに足を組んですわった。
要するに、学級、副学級長に全投げってことか。
ふぅ、誰にも気づかれないくらいのため息をした後、私はガタンと席を立つ。
その後、一定のリズムで足音を鳴らし、教壇に立つ。
「はい、じゃあ、役割決めていきます」
そう、私が学級長。
なんでこんなめんどくさい事やるのか私にもよくわからない。
推薦で勝手に決められたから。
「黒板に書いて、岡田」
「うぃーす」
この何も考えてなさそうな、ノーテンキなやつは岡田。こいつも何故か副学級長だ。
確かこいつも推薦だったはず…。
「じゃあ、障害物競走の役割から決めていこう」
「網くぐり抜けるやつやりたい人いるー?」
所々少しだけ手を挙げてる人が見えた。
「あのさぁ、ちゃんと手挙げてくれる?」
「はやく終わりたいでしょ?」
急いで。
少し早口気味になる自分に嫌気がさすが、それは仕方ない。
「はい、じゃあ、次は__」
アッハハハ!!w
だから……w
「あー…そこの人達、一応今みんなで決めてるからさ……」
「静に……」
あの先生さーw
それほんとの話?ww
嘘つくなや!
うるさい。
焦って。
もうちょっと焦ってよ。
急がないと。先生に怒られるよ?
そんな呑気におしゃべりしてる場合じゃない。
私は急がないと、皆をまとめないといけないのに。
なんで分からないだろう。そんなことが。
少しして、黙りこくってしまった自分に気づき、すぐにいつもの調子に戻した。
少し、自分の拳の力が強くなったのを感じ、そんな気持ちを急いで捨てた。
「皆静かにしてね!…じゃあ、次は………」
一応岡田もちゃんと書いてくれてるみたいだが、いつも動きがのろいこいつは、まだ書き終えてなかった。
「……ごめんだけど、岡田ちょっと急いで」
「……分かってる」
いや、これは分かってない。見るからに手つきが遅い。
いっそ代わりたくなる。
ほんとうにイライラする。
「あ、南ちゃんのグループは何にしたいか決めた? 」
できるだけ優しく、苛立ちを隠して言った。
「え、まだ5分も経ってないのに決めれるわけないじゃん」
「あ、そうだよね……まぁ、できるだけ急いでね、 」
決めれるだろ。内心そう思った。
ずっとぺちゃくちゃと。
ほんとうに、のろま。
まるで……っイラつく。
「あ、じゃあ、余ったとこ私が入るから、さっさと決めよう」
もうどうでもいい。はやく終わるんなら。
そんな、半ば諦めの気持ちで、なんとか役割を決め終わった。
「はい、決め終わったみたいだな」
先生が何故か満足気に言う。
私が決めたんだけど……?
つい、そう思った。
先生が言い終わると同時に授業終わりの鐘が鳴った。
嫌い。
のろい人が嫌い。
何も考えてない人がきらい。
まるで昔の自分のようで。
でも、そんなこと考えてる自分が
1番嫌い。
「おい」
「中野、」
急に呼ばれたから驚いて振り向いた。
今は休み時間、普段友だちと喋ってるこいつにしては珍しい。
しかも、席がよりによって隣だから、今向かい合って喋っていることになる。
さすがの私でも少し恥ずかしい。
「…なに?」
素っ気ない返事になってしまう。
「お前さ、なんでそんなに急ぐわけ?」
え?
思わず顔が硬直してしまった。
「は?」
なんで、岡田なんかに言われなきゃなんないわけ?
「いや、そのさ」
「別にお前が………いや、やっぱいい」
「あっそ」
何を言おうとしたのか聞こうと思ったが、私は暇じゃなかったからやめた。
そんな会話の後、岡田はすぐ机に突っ伏して寝た。
のんきなやつ。
そんなやつをほっといて、私はスケジュール表を見る。
そこには、沢山の予定が書いてある。
はやく物事を終わらせるたび、面倒事がついてくる。
いや、押し付けてくる。
私はせっかちだから、課題も頼まれ事も用事もすぐに終わらせる。
それを見て優等生だと思う子達がたくさん私に頼み事をしてくる。
最初はすごく嬉しかった。でも、今は違う。
少し、しんどい、、
「はぁ…」
「!」
しまった。ついつい大きいため息をついてしまったと思い、すぐに口を手で塞いだ。
チラっと隣に寝ている岡田を見たが、別に気づいてないようだ。
良かった……。、
そう安心すると同時に始業の鐘が鳴る。
岡田の顔も持ち上がる。
学級長の私が少し早口で言う。
「正座」
「礼」
お願いします
みんなの声が揃い、クラス全体が硬い雰囲気に変わった。
途中で切ります。物語は分けて投稿します。
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