テラーノベル
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食事は必要最低限でいい。
私はそう思って、
生きていけるだけの 栄養を取って暮らしていた
食事の時間は親の口喧嘩を聞く時間だった。
早く逃げたくて、匂いも味も分からないまま
ご飯を口に運ぶ
早く終われ
早く食べてしまえ
早く
早く
早く
いつしか私の体は食事を受け付けなくなった
親がいない場で何か食べようとした事があった
その時、私の体が悲鳴をあげた
無理矢理口に運んでもそれを拒絶してしまう
今思えばきっと 条件反射だったんだろうな
食事=息苦しく早く終わって欲しいもの
になっていたんだ
なんで私が?
あの人達が食事中に騒がなければ
こうはならなかったのに。
食事をしない私を親は叱り
無理にでも食べさせた
それがダメだったのだろう
拒絶感は増して完全に食べることが
できなくなった
そしてついに、入院生活になってしまった
しばらくして、
同じ病室にふくよかな女の子がやってきた
その子は私を見て
『細!何食べたらそうなるの?!』
と言ってきた
ただ何も食べてないだけ
この子は良いな
好きなものを好きに食べられて
この時私はその子を睨んでいたのだろう
その子が焦って謝ってきた
その子はお喋りで、何も返さない私に
ずっと話してかけてくれていた
その子の名前は「わらび」というそうだ
昔わらび餅と言われ、からかわれていたそうで
それを笑いながら辛そうに話していた。
「わらび餅、ってあだ名可愛いのに」
声が漏れていた。しまったと思って
口を抑えわらびの方にチラッと目を向けた
泣いてる
なんで?私?私が泣かせた?
「え、な…ごめ…、え?」
私は混乱した
でも当たり前だ。
からかいに使われていたあだ名を
「可愛い」と言ったんだから
その子にとっては辛い思い出したくない名前を、
私は肯定して褒めて使った
そんなの、わらびの気持ちを踏みにじったのと同じだ
ちゃんと謝らないと
そう思って声を出そうとした
それは言葉にはならなかった
私が言葉にする前にわらびが否定した
『違う。嬉しかった。』
『私、元々わらび餅好きだったの』
『自分の名前と同じで美味しくて、
見た目も可愛くて』
『だから、[わらび餅]って言われた時嬉しかった』
『なのにそのあだ名は[デブ][可愛こぶるな]って意味で使われてて』
『苦しくなって、こんな…入院までしちゃって』
わらびが話す事はいつも明るかった
眩しくて、嫌気が指していた
だから、反応なんてしてやらなかった
なのに、こんな苦しんでたの?
「ごめん、ごめんね」
何故だか私も泣いてしまっていた
そしてしばらくたったある日
私は退院する事になった
嬉しくなかった
わらびはまだ入院が必要らしい
病院食でも美味しそうに食べる
わらびに つられて私も食べてしまっていた
この時にはもう、食べることが辛いことだとは思わなかった
退院の時にわらびが見送りに来てくれた
『寂しくなるけど、退院したらまた会おうね!』
そう元気に言われた
私も会いたいと返して病院から出た
今日は久しぶりにわらびに会う日だ
私は彼女に渡す花を持って 会いに行った
コメント
1件
生きてます 久しぶりに書いたのでごたついています