続き
桃時「ただいま〜」
雨花「お邪魔します!」
「こ、こんにちは……」
ここは、桃時の家。雨花は桃時と共に保護した女の子を連れて桃時の家にやってきた。
「ん?桃時の他に誰かいるのか?」
家の中から出てきたのは……
雨花「こんにちは!桃時ちゃんのクラスメイトの「雨花」と申します。」
桃時「お父さん。少しの間雨花とこの女の子泊めて良い?」
「やっぱり桃時お姉ちゃんのお父さんなんだ……」
雨花たちの目に前にいる男性は、桃時の父親だった。
「別に構わない。楽に過ごしてくれ」
桃時「ありがとう。じゃあ早速だけどアタシの部屋に案内するわね」
雨花「はーい」
「…………」
雨花「…………。大丈夫だよ」
「え?」
雨花「桃時ちゃんは優しい人だよ。それに迷惑かけてるとか想わなくて大丈夫。少しでもここがあなたにとって居心地が良いものになったら良いなってわたしは想うけど、もし少しでも苦しいことや嫌なことがあったら言ってね。だってここに連れてきたのはあなたがしっかりリラックスしてもらうためなんだから!」
「…………!、うん!」
桃時「早く付いてきて〜」
雨花「はいはい〜」
「うん!」
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雨花「いやあのさ……」
「「部屋デカすぎじゃない!?!?」」
桃時の部屋は、二十畳はあるだろうとても広い部屋だった。大きなクローゼットもあって、天蓋付きのベッドでとても大きい。
桃時「前はもっと大きな家に住んでたからアタシからしてみれば狭い方なんだけど……」
雨花「嘘でしょ!?いやいやどう考えても大きいでしょ!?」
桃時「まぁでもベッドは大きくて良かったわ。三人で寝れるもの」
雨花「うわぁふかふか……」
「すごい……」
桃時「え?」
「すごいよ!!!!」
桃時「!」
女の子は目をキラキラさせて喜んでいた。
「なんかお姫様のベッドみたい!!すっごく綺麗!!本当にこのベッドで寝て良いの?」
桃時「……ふふっ。えぇもちろん」
桃時は女の子の頭を撫でる。
「えへへ。ありがとう!」
雨花「桃時ちゃんが子供相手に優しくしてる……明日は嵐……?」
桃時「それどういう意味よ……?」
雨花「ひぃ!すみません!」
桃時「あんただって昔は子供に近づこうとすらしなかったのに〜ぷぷっ」
雨花「わたしの手には魔の獣が封印されてるんだ。だから触れる訳にはいかないのだよ!!!!」
桃時「あんた馬鹿じゃないの」
雨花「うむ!否定はしない!」
「ははっ!お姉ちゃんたちおっかしい〜」
雨花「やった!褒められた〜!」
桃時「なに喜んでんのよ」
雨花と桃時がはしゃぎ合い、女の子もそれをみて笑っている。
とても仲睦まじい光景だった。
それを遠くからみている男性が一人。
「良かったな。桃時」
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桃時「うわぁ!今日はごちそうね!」
雨花「すんごい手が込んでる……ありがとうございます!」
「美味しそう……」
桃時の父親が作ったのは、
自らルーを作って、スパイスを調合し、野菜を刻み入れたとても難易度の高い料理だった。
「いいから食え。君たちは苦手ものがあったら言いなさい。無理しないで」
桃時「美味しそう〜いただきます!」
「い、いただきます!」
雨花「いただきます。……ねぇ桃時ちゃん」
桃時「ん?何?」
雨花は小声で話す。
雨花「桃時ちゃんの食卓って黙って食べてるじゃないの?結構話してくれてるけど……もしかして気を使わせちゃってる?」
桃時「違う違う。うちの父親は寡黙でぶっきらぼうな人だけど別に人が嫌いなわけじゃないのよ。寧ろテンションが上がって喜んでるの。だから気にしないで良いわ」
雨花「そかそか!ありがとう!分かった」
「おいひい(美味しい)」
雨花「口に付いてるよ。ほら拭いてあげる」
桃時「あんたはお姉ちゃんか」
「…………」
前までの桃時は
「女の子」になるために
「女の子」として認められるために
必死で自分を取り繕っていたが
今は「桃時」として生きていけてるのだな
それもこれも……
雨花「桃時ちゃんにも付いてるよ?」
桃時「え!嘘!?どこ?」
雨花「任せてわたしが拭いたげる」
桃時「よろしく〜」
あなたのおかげなのかな
雨花さん
桃時家の食卓は、いつもと違って
とても賑やかな食卓になったそう。
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桃時「ご飯中ずっと話してたから、お風呂入ったら完全にダウンしちゃったわね。この子」
雨花「寝かせてあげよう」
雨花と桃時は、ベッドに女の子を寝かせた。
桃時「よく眠ってる」
雨花「桃時ちゃんの小さい頃の服があって良かったね」
桃時「あんたはその服小さいんじゃない?」
雨花「全然大丈夫!でも明日一旦家に帰って服持ってくるよ!」
桃時「この子のことはお父さんがみててくれるし、お父さんからも学校には行けるなら行った方が良いって言われたし、行くしかないわね」
雨花「それにこの子が気にしちゃうかもだしね」
「よし」
雨花は部屋の外に出ようとしている。
桃時「あんた何してんのよ」
雨花「電話しに行くんだよ」
「「この子の母親に」」
桃時「!」
雨花「行ってくる」
ガシャン
桃時「この子が心から安心できるようになったら良いけど……」
雨花「あのこちらの娘さんのお母様の携帯でお間違いないでしょうか?」
雨花は女の子の名前を載せて、メールをする。
数分後
『はい。私はこの子の母親です。』
雨花「あのご主人様からお伺いしているかもしれないのですが、わたし、あなた様方の娘さんをお預かりしている「雨花」と申します。」
『娘をお預かりして……いる?』
雨花「はい。ご主人様から聞いていらっしゃいませんか?」
『聞いてないです。娘に何かあったのでしょうか?』
雨花「文章だけでお話できる内容ではないので、通話をお願いしてもよろしいでしょうか」
『分かりました』
プープープープーピッ
雨花「改めまして、「雨花」と申します。娘さんをお預かりしている者です」
『はい、私は娘の母です。娘に何かあったのでしょうか?』
雨花「実は娘さんがわたしに助けを求めにいらっしゃって、話を聴いてみると、お父様から暴言を吐かれている話になりまして、最初はお父様も娘さんを連れ戻そうとしたのですが、娘さんがずっとわたしから離れようとせず、わたしともう一人友人がいるのですが、わたしたちがお父様の言葉に言い返していると、徐々に荒っぽい言葉を言われて、「勝手にしろ」と言われ、突き放される言い方をされて、それは絶対に良くないと想い、ご主人様からお母様の電話番号を聴き、ご連絡させて頂いたと言うことになります」
『…………ぐずっ』
雨花「大丈夫ですか?」
『すみません。泣いてる場合じゃないですね。私にとって夫はとても優しい人なので、まさかそんなことをしているとは思いもしてなくて、娘がそんなになるまで悩んでることに気づけなくて、本当に母親失格ですね』
雨花「それはこれから決まるんじゃないですか?」
『え?』
雨花は表情を整えて、話し出す。
雨花「娘さんはあなたの事を「好き」だと言ってました。それはあなたがちゃんと母親として何かしら娘さんの心に残ることを行っていたからです。それに子供って、例えばお母さんが自分を傷つけるだけの存在だとしても、無垢に母親を求めて好きでいることもあります。子供は親を信じたいんです。傷つけられても、嫌いでも、裏切られても、許せなくても、心の中で信じたいと望んでいるんです。そんなお子さんなんだと想います。あなたたちの娘さんは。だからそんな娘さんのお気持ちを裏切らないように、これからお子さんを愛してあげて欲しいと想います。」
『…………あなたのような人こそ親になるべきなんでしょうね。あっすみません。嫌味のようになってしまって……はい。そうですね。必ず娘を迎えに行きます。ちゃんと子供に沿って愛していきたいです。なので、もうしばらく娘を預かってもらっても良いでしょうか?私今はとても離れた場所で出張に行っていて、今すぐには迎えられないので、一週間後、必ず迎えに来ます。こちらの住んでいる場所もお伝えします。なので、お預かり頂いてもよろしいでしょうか……』
雨花「…………待ってます。娘さんと一緒に。約束ですよ。これがあなたが母親として全うできるかの一歩を踏み出せるかどうか……ですから」
『……はい!分かりました。ありがとうございます。』
雨花「では、どこでお預かりしているかは一週間後お伝えします。」
ツーツーツーツー
雨花「…………」
まだ信じられないけど
あの子が「好き」と言ったお母さんなら
信じなくちゃいけないのかな
わたしって
親絡みになると……
雨花「疑心暗鬼……」
雨花は、しばらく「何も映っていない目」で
ぼぉーとして、その後、桃時の部屋に戻った。
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