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#主人公最強
かませ犬S
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#転生
歯磨き粉
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コメント
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うわ、まさか憑依して舞踏会デビューとは……! レクトくん、女装してるのにめっちゃモテモテで草。男の矜持で「最高の令嬢」を演じきったら、令息たちがもうガチで惚れてて笑った。ディアナ先輩が後で「パーティ招待殺到してるんだけど!?」って怒りながらも、リベリオンの話は進んだし結果オーライって感じなのが面白かったです。でも、内心で「こんな令嬢がいたら自分でも惚れる」って思っちゃうレクトくんの自意識過剰っぷりも好き。女の争いを足捌きでかわす辺り、さすが剣士だなと(笑)
「――は? 舞踏会……ですか?」
「うん。レクト君、憑依して代わりに出てよ!」
ディアナの研究室を訪れると、レクトはそんな依頼を受けた。
舞踏会……というのは社交界の催しのひとつで、王族や貴族が多く参加する。
「いやぁ……、イヤですね! 何で俺が……!?」
「まぁまぁ。あたしもそんなのは面倒――じゃなくて、レクト君も良い経験になると思うんだよぉ」
「確かに、普通に参加すればそうかもしれませんが……。
でも、令嬢として参加するんですよね!?」
ディアナは伯爵令嬢である。
そのため、舞踏会への参加というのは――いわゆる、政略結婚の相手を探しに行くようなものだ。
男の自分が、何で男から求婚されないといけないのか……レクトは頭が痛くなった。
「ほら? レクト君が作りたい剣……リベリオンは、特別な技術が必要なんだよ。
だから、鍛冶で有名な家門に依頼しなきゃいけないんだけど――」
「……いや、だからといって、ですね……」
「えー? 結局、その程度なのー?
レクト君、そんなに欲しくなかったんだ? リベリオン……」
「……あー、もう……。分かりましたよ!
でも、舞踏会なんて初めてなんですからね? どうなっても知りませんよ!?」
「やったー! 助かるよ~♪」
あきれ果てたレクトに、にこやかに笑うディアナ。
笑顔の向け先が違うだろう――……レクトは心の中で、大きく叫んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――……はぁ」
「うん? どうしたんだい、ディア」
レクトが溜息をつくと、隣の紳士――ディアナの父が、声を掛けてきた。
ディアナの実家の伯爵家を訪れ、使用人たちと王都に向かい、様々な準備を経て――
……今、レクトは舞踏会の会場を目の前にしている。
「いえ、何でもありませんわ。お父様」
入念にセットされた髪に、美しいドレス。
宝石のあしらわれた髪飾りに、イヤリングやネックレス。
嫌味でないほどの煌めきたちが、ディアナを美しい淑女に仕立て上げていた。
――ただし、中身は男である。
「お前も舞踏会は久し振りだろう? 学院生活も良いが、貴族の付き合いにも参加しないとな」
「ええ、お父様。今後はそのようにいたします。これ以上、ご迷惑はお掛けできませんから」
「あ、ああ……。
それにしても、この前会ったときより……ずいぶんと大人びたな」
その言葉に、レクトは思い切り微笑んで返す。
――が、内心ではぞわぞわしたものを感じていた。
ディアナから押し付けられた、舞踏会。
レクトは初体験であり、ディアナは今まで適当に参加していた。
真面目なレクトとしては、ディアナのようには振る舞えないので――
……今回はもうヤケで、レクトの想像する令嬢を演じきってやろう。そう思っていた。
中途半端にやるくらいなら、たとえやり過ぎたとしても、全力の方が楽だ。
レクトは改めてそう思いながら、舞踏会の会場へと足を踏み入れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今回の舞踏会は王都で行われており、主催は国王だった。
まさか初めてお目に掛かるのが、こんなタイミングだなんて――
……レクトは複雑な思いを胸に抱いた。
本来であれば、剣聖として活躍をして、その功績を認められて……と、想像していた。
しかし現実は、伯爵令嬢の身体に憑依して、美しく着飾って……と、そんな流れになろうとは。
丁寧に礼を尽くし、ひと言ふた言、言葉を交わす。
頭の中では何度も復習したものの――以前セシリアから受けた淑女講座も、ここで役に立った気がする。
「――はははっ。ディア、緊張したかな?
それでは私は、他の家門に挨拶をしてこよう。お前はどうする?」
「私も、他の令嬢や令息に挨拶をしてきます。また後ほど、合流しましょう」
「うむ、わかった。変な男に引っ掛からないようにな?」
「ふふっ。嫌ですわ、お父様ったら」
レクトはディアナの父と別れて……ようやく、ひとりになれた。
令嬢の姿で、見知らぬ男を父親と呼んで――このままでは、頭が破裂するところだ。
「――とりあえず、飲み物でも飲んで……様子を見るか」
会場の端から、全体を見てまわす。
家門を守っているような人たちは、同じような人同士で集まっていて――
まだ年の若い人たちは、同じような人同士で集まっている。
……レクトとしては、後者の方に向かうべきだろう。
ただ、普段接点の無い高貴な人々に声を掛けるのは、なかなか緊張する……。
そんなことを考えていると、ふと男性の声が聞こえてきた。
「――失礼。はじめまして、オールストン伯爵令嬢。
お時間を頂いても宜しいか?」
「ええ。はじめまして――アディソン侯爵令息」
何とか記憶から絞り出し、相手の家門を思い出す。
それに対して、目の前の男性は嬉しそうに話を続ける。
「おお、私のことを知ってくれているとは……」
「当然ですわ。あまり社交界に来ない私でも、令息の名前は耳にします」
そう言いながら、レクトは考え得る最高の笑顔を彼に向けた。
何度も鏡の前で練習した笑顔――……正直、レクトでも惚れ込みそうな笑顔だ。
しかし、その身体の主はディアナである。そのため、レクトが惚れ込むことは無かった。
「オールストン伯爵令嬢。私も、話に入っても?」
「あら。お久し振りです、ゴードン伯爵令息。3年ぶりですわね?」
「ええ。令嬢がヴァルセリア学院に入学する前ですから――」
ふたり目の令息が割って入ってくると、彼らは競うようにしてアプローチを始めた。
「それにしても、ずいぶんと雰囲気が変わりましたね。とても美しくなられた」
「学院で、様々なことを学びましたから。今後、ゆっくりとお話したいですわ」
「……ッ!! それでしたら今度、私の邸宅でパーティを――」
――次のパーティの約束。
レクトはどうしようか考えたが、どうせ参加するのはディアナのはずだ。
とはいえ、勝手に受けてしまうのはまずいかもしれない。
「ありがとうございます。是非、招待状を送ってください。
楽しみにしておりますわ」
……ただ、その言葉に他の令息たちも盛り上がってしまう。
「そういうことでしたら、アディソン家でもパーティを開くので、是非……!」
「私はグレマン男爵令息です。話に加わっても?」
「君! 今は私が話しているところではないか!」
「こんな美しい令嬢を、独り占めするのはよくないでしょう?
私はグレネル侯爵令息――」
……徐々に人が増えてきてしまった。
政略結婚――と考えたとき、ディアナの家門は有望だ。
多くの事業を営んでおり、財政にもかなりのゆとりがあるから――
「……申し訳ありません。そろそろ他の令嬢とも、挨拶をしてきますね」
何とかそう言って、令息たちの輪から抜け出していく。
彼らはしばらくレクトを目で追っていたが、そのうち自然に霧散した。
さて――……と思いつつ、会場の壁に沿いながら、令嬢たちが集まる場所へ近付いていく。
ただ、貴族の令嬢なんて――レクトはディアナとしか話したことが無かった。
そしてディアナもまた、他の家門の令嬢とは、ほとんど接点を持っていなかった。
貴族社会よりも、錬金術。
ディアナの立ち位置の、何と分かりやすいことか……。
「あら? そこにいらっしゃるのは、ディアナ様ではなくて?」
その声に振り向いてみれば、ディアナの記憶にはある、侯爵令嬢だった。
名前は確か――
「お久し振りです、ルーシャ様」
「ええ、お久し振り。今日は調子が良いみたいだけど、男漁りの方はどう?」
ルーシャを補佐するかのように、後ろから別の令嬢がふたり現れ、くすくすと笑っている。
レクトは女社会のことは分からないが――
「あら、男漁りだなんてはしたない。この場にいる令息たちが悲しみますわよ?」
「ふふっ、素晴らしい心掛けですこと。
きっと皆さん、ディアナ様の言葉に感銘を受けますわね?」
――何か、嫌な感じがする。
ひとまずレクトは、近場にいる令嬢たちの立ち位置を確認した。
全員が裾の長いドレスを着ているのと――
……あとはそもそも、令嬢たちは運動のようなことはしないだろう。
レクトは、令嬢たちがお互い邪魔になるように……少しずつ、立ち位置を変えていく。
それに対して、令嬢たちも少しずつ動いていくが――しばらくすると、令嬢同士がぶつかった。
「――きゃぁ!?」
「ちょっと、こっちに来ないで――きゃッ!!」
その結果、3人の令嬢は重なって倒れ――
……ひとりが隠し持っていた飲み物が、ルーシャのドレスに掛かった。
美しいドレスに、毒々しい赤色が滲んでいく。
「ちょっと、あなた!
何てことをするの!? 私のドレスを――」
「も、申し訳ございません!?」
「お許しください、ルーシャ様……!」
レクトは面倒になったので、そのままその場を後にした。
女性には優しく――とは思うものの、今は自分も女性なのだ。
その上で、敵意のある人間には関わり合いたく無かった。
……そんな中、どこぞの家門の令息が声を掛けてきた。
「オールストン伯爵令嬢は、何か剣術でも嗜んでおられるのですか?」
「あ……いえ。多少、知っているだけですわ」
「それにしては……先ほどの、見事な足捌き。ルーシャ様たちをあんなにも……くくくっ」
「あら、彼女たちを笑うだなんて……酷いお方ね?」
そんな話をしていると、再び他の令息たちも集まってきた。
そして結局、また8人程度の集団になってしまう。
話はルーシャたちが酷い目にあったところから始まり、足捌きの話になり――
……そして、貴族の男性は剣術を嗜む文化があるため、自然と剣術の話になっていった。
剣術談義は熱を帯び、令息たちもディアナと一緒に盛り上がる。
基本的に同い年の令嬢たちは、剣術などには興味が無い。
令嬢が好むのは、ドレスの話やアクセサリの話、色恋話や噂話などで――
……そんな話は、令息たちには興味が無い。
「――あ、そういえば。私、武器製造に詳しい方を探しておりましたの」
「それならうちが!」
「いやいや、うちが!!」
「何を言う、一番詳しいのは我が家門ッ!!」
レクトは本題を思い出しつつ、話を切り出すと……それはそれで、食い付きが良かった。
「みなさんの家門は、とても素敵ですのね。大変興味がありますわ」
「それなら招待させて頂きます!」
「鍛冶場にも興味はおありですか!?」
「我が家門には、抱えの鍛冶師が多数おりまして……!!」
レクトが何かを言えば、全員が食い付いてくる。
オールストン家の財力に、ディアナの美しさ。
それに加えて、まるで男友達と話しているような、魅力的な話しやすさ――
……ふと、会場に音楽が流れ始めた。
この会場で行われているのは舞踏会であり、つまりダンスが中心の催し事なのだ。
「オールストン伯爵令嬢! 是非、私と一緒にダンスを……!」
「いや、私が先だ! 抜け駆けをするな!」
「我が家門のダンスは世界一ィ!!」
レクトに対して、ダンスの申し込みが集中する。
中身が男の令嬢に、こんなにも声が掛かるなんて――
……レクトは何故か、面白くなってしまった。
「――まとめてお相手いたしますわ。
それと、私のことは……気軽に、ディアナとお呼びください♪」
最後の最後で、一気に距離を詰めてくる美しい令嬢。
高嶺の花にして、そこら辺に咲いているような花――
……令息たちの心は、ディアナという令嬢にがっしりと掴まれていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――それから1週間後、レクトはディアナに呼び出された。
彼女の研究室に行くと、彼女は拗ねるように怒っている。
「ちょっと、レクト君!
舞踏会に参加した人たちから、パーティの招待が殺到してるんだけど!?」
「ああ……話が盛り上がりましたからね。緊張しましたが、俺も楽しかったですよ!」
レクトは満足そうに答える。
自分なりに、思い描く最高の令嬢を演じきったのだ。
……仮にあんな令嬢がいたら、自分でも惚れてしまう自信がある。
「あのときの記憶、あたしも見たけど……。あたし、あんな風に振る舞えないからね!?」
「でも、鍛冶が得意な家門の令息とは話が付きましたし――
結果オーライですね!」
「レクト君はそうなんだろうけどッ!!」
「うーん……。でも、俺に任せたのはディアナ先輩ですし……?」
ディアナは珍しく、レクトに文句を言い切ることができなかった。
確かに今回は、ディアナ自身の失敗――
「――あ、そうだ!
それなら今後、舞踏会は全部代わりに参加してよ!」
「い、嫌ですよ! 一生代われって言うんですか!?」
「一生代われって言ってるのーっ!!」
ディアナは泣きついたが、レクトを説得することはできなかった。
……初めて、レクトが心情的に勝利した瞬間だった。