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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
「ギャァァァァァッ……おのれ、おのれ人族どもがぁぁぁ!!」
リンの放った神聖な光の薔薇によって2枚の翼を焼き千切られた魔王ディルクは、黒い血を流しながら玉座の床へと膝をついていた。
しかし、世界の外側の闇を手に入れた奴の狂気は、これしきの痛みの先へと向けられていたのだ。
「ククク……ハハハ! 確かに今の私でも、3人同時にまともに相手をしては分が悪い。ならば……その強固な『絆』とやらを、内側からおぞましく引き裂いてくれるわ!」
ディルクの残された4枚の虚無の翼が、怪異なほど激しく脈打ち始めた。
奴が漆黒の杖を地面に突き立てると、千切れた翼の残滓(ざんし)から、この世のすべての悪意を凝縮したような『深淵の洗脳呪詛(アビス・パペット)』の黒い鎖が放たれた。
その鎖が狙ったのは、私でも、アルベルトお兄様でもない。
先ほど魔王の直上から強襲を仕掛け、着地の瞬間に僅かな隙ができていた、侍女のリンだった。
「――っ!? リン、避けろ!」
お兄様が叫び、即座に氷の結界を飛ばす。しかし、魔王が自身の魂をさらに削って放った最高速度の呪いの鎖は、お兄様の結界が届くよりも一瞬早く、リンの華奢な身体をぐるぐると絡め取った。
「くっ……!? あ、あがっ……、ローゼ、マリー、様……っ」
リンの美しい顔が苦痛に歪み、彼女の全身から溢れていた神聖な光の魔力が、瞬く間にドロリとした禍々しい漆黒の闇へと染め変えられていく。
彼女の瞳から理性の光が消え去り、かつて裏社会を恐怖に陥れた、あの冷酷無比な「伝説の暗殺者」としての虚ろな真紅の瞳へと上書きされてしまった。
「リン……!」
私が息を呑んだその瞬間。
洗脳されたリンの姿が、空間から完全に消失した。
シュバッ!!!
「――チッ、お兄様、上よ!」
私が叫ぶのと同時に、アルベルトお兄様の背後の空間から、リンが音もなく出現した。
彼女の両手には、魔王の呪いの闇を纏った一対の暗殺ナイフが握られており、一切の躊躇なくお兄様の首元へと振り下ろされる。
「くっ……! ――『絶対零度の盾(イージス・ゼロ)』!」
お兄様が間一髪で展開した氷の盾。
ガキィィィン!と激しい金属音が響き渡り、リンのナイフが盾の表面を激しく火花を散らしながら削り取る。
「リン! 目を覚ますんだ! 僕だ、アルベルトだよ!」
お兄様が必死に声をかけるが、リンの表情はピクリとも動かない。
彼女は操り人形のように冷淡なステップで後退すると、次の瞬間には、私の死角へと潜り込み、神速の暗殺術で私の心臓を正確に突き刺そうと刃を突き出してきた。
「リン……、あなた本当に、魔王なんかに操られて……!」
私は背中の白銀の翼でナイフの一撃を受け流したが、その衝撃は、今の私の肉体にも重く響いた。
神薬によって「白銀の神の領域」へと至った私。そして、さらに研ぎ澄まされたお兄様。
今の私たちの力があれば、魔王の洗脳魔術そのものを、リンごと力技で吹き飛ばして消滅させることなど容易(たやすい)い。
しかし――それが、できなかった。
リンは、暗闇の底で孤独だった私の命を救ってくれた、世界で一番大切な私の侍女。
お茶会の時に優しく髪を梳かしてくれて、私のわがままをいつもおっとりとした笑顔で受け止めてくれた、かけがえのない私の新しい家族。
「くっ……、ローゼマリー、手が出せないね……。彼女を傷つけずに、あの呪いの鎖だけを正確に破壊する方法が……今の僕の広範囲魔法にはない……!」
アルベルトお兄様が、苦渋に満ちた表情で唇を噛み締める。
お兄様の氷結魔法は強力すぎるがゆえに、今ここで使えば、リンの肉体ごと氷漬けにして粉砕してしまう。
それは、私の白銀の魔法も同じだった。威力が桁違いに上がりすぎたせいで、手加減をしてもリンの魂ごと消滅させてしまう危険性があったのだ。
大好きなリンを、絶対に傷つけるわけにはいかない。
その最大の『縛り』のせいで、これまでどんな敵も一撃で粉砕してきた私たちは、初めて攻撃の手を完全に封じられ、防戦一方に追い詰められていく。
「ククク……ハハハハハ! どうした、最強の皇女とその兄よ! 攻撃してこないのか!? さあ、お前たちの愛する侍女の手によって、無惨にその肉体を切り刻まれるがいい!」
玉座の奥で、魔王ディルクが醜悪な高笑いをあげながら、リンへとさらに闇の魔力を流し込み、その動きを加速させる。
「ローゼマリー様……死んで、ください……」
感情の消えた、冷たいリンの声。
彼女の影から、無数の闇の薔薇の棘が触手のように伸び、私たちの逃げ道を塞ぐように襲いかかってくる。
お兄様が命懸けで防御結界を張り続けるが、リンの神速の暗殺ナイフは、結界の僅かな隙間を的確に突き崩していく。
「お兄様、このままでは結界が……!」
「分かっている……けれど、リンを攻撃するわけには……!」
かつてない絶望的な緊迫感が、玉座の間を支配する。
大好きなリンの刃が、容赦なく私とお兄様の喉元へと迫る中、
私たちは初めて直面する「身内との戦い」という最悪の罠の前に、
突破口を見出せずにただ立ち尽くすことしかできないのだった。
ねむ
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#転生
コシ
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耀聖(ようせい)
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コメント
1件
うわあああ第27話読み終わったよ…!!😭💦 リンが洗脳されちゃうの辛すぎる…!!あの優しいリンが「死んでください」って冷たい声で言うシーン、胸が締め付けられたよ…。でもローゼマリーとお兄様が「リンを傷つけられない」って縛られて防戦一方になるところ、めちゃくちゃもどかしくて熱い…!!身内との戦いってほんと最悪の罠だよね😢 次の展開が気になりすぎてソワソワが止まらないよ〜!!続き楽しみにしてるね🌸✨