テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#TL
瀬名 紫陽花
59,585
91
睡魔
19
コメント
1件
第44話、読みました!文化祭の賑やかな雰囲気と、星羅さんが玲くんの腕を抱くやり取りがすごく可愛くて、お化け屋敷で手を繋ぐシーンは自然にときめきました。でも、あの不気味な男の登場で一気に空気が変わって……七年前の停電の話、気になります。最後の玲くんが紙を隠す場面、星羅さんの胸の痛みが切なくて、この先どうなるんだろうってドキドキしています。次話も楽しみです!
文化祭。
昼。
校内は。
相変わらず賑やかだった。
「玲くん」
「ん?」
「……あの人」
「?」
星羅が。
小さく指を差す。
人混みの向こう。
さっきから。
こちらを見ている人物。
「……」
玲も見る。
しかし。
「誰だ?」
「分からない」
「なら」
「……」
星羅は。
玲の腕を抱く。
「気にしなくていいよ」
「……」
「今日は文化祭なんだから」
笑顔。
けれど。
その目は。
全く笑っていなかった。
「玲くん」
「ん?」
「次、どこ行く?」
「……お化け屋敷」
「え?」
「クラスのやつが行けって」
「……」
「嫌か?」
「ううん!」
星羅の顔が明るくなる。
「行こう!」
二人は。
お化け屋敷へ向かった。
――暗い教室。
「……」
「玲くん」
「ん?」
「手」
「……」
星羅が。
手を差し出す。
「握って」
「怖いのか?」
「……ちょっと」
「分かった」
玲が手を握る。
「……!」
星羅の顔が赤くなる。
「どうした?」
「なんでもない」
「……」
歩く。
暗闇。
突然。
「わっ!」
「……」
玲は無反応。
「……」
星羅は。
玲の腕に抱きつく。
「……怖かった」
「棒読みだったぞ」
「気のせい」
「……」
星羅は笑う。
「でも」
「?」
「玲くんと手を繋げたから」
「……」
「入ってよかった」
玲も。
少し笑う。
「そうか」
「うん」
出口。
「楽しかったね」
「ああ」
「次は――」
その瞬間。
「……玲?」
聞き覚えのない声。
「……?」
振り返る。
そこに。
さっきの人物がいた。
「やっぱり」
「……誰だ?」
男は。
玲を見る。
「久しぶり」
「……」
「覚えてないか」
「悪い」
「そうだよな」
男は笑う。
「七年前だ」
星羅の表情が変わる。
「……七年前?」
「そう」
男は。
星羅を見る。
「君も覚えてない?」
「……」
「無理もない」
「あなたは誰?」
星羅の声が。
少し冷たい。
「俺は」
男は。
名札を見せる。
「文化祭の手伝いに来てるだけの人間だよ」
「……」
「でも」
男は。
玲に近づく。
「君たちのことは知ってる」
「何を?」
「2017年」
「……」
「停電」
玲の目が変わる。
「……」
「覚えてないだろ?」
「……ああ」
「なら」
男は。
笑う。
「思い出さない方がいい」
「……どういう意味だ?」
「その方が」
男は。
玲を見る。
「君たちは幸せでいられる」
「……」
「じゃあな」
男が離れる。
「待て!」
玲が追おうとする。
しかし。
星羅が腕を掴む。
「玲くん」
「……」
「追わないで」
「でも」
「……お願い」
星羅の顔は。
不安そうだった。
「……分かった」
玲は。
その場に立ち止まる。
――その夜。
文化祭終了後。
教室。
「疲れた……」
玲が椅子に座る。
「お疲れ様」
星羅が。
隣に座る。
「今日は楽しかった?」
「ああ」
「……よかった」
「星羅は?」
「もちろん」
星羅は。
笑う。
「玲くんと一緒だったから」
玲は。
机の上に置かれたものに気づく。
「……これ」
「?」
一枚の写真。
古い写真だった。
「どこから?」
「……」
星羅が。
写真を見る。
「それ……」
「知ってるのか?」
「うん」
そこには。
2017年のイベント。
そして。
幼い玲。
幼い星羅。
さらに。
さっきの男。
「……!」
玲が息を呑む。
「こいつ」
「うん」
「当時からいたのか?」
「……そうみたい」
写真の裏。
文字がある。
『2017年12月24日』
さらに。
『二人を見守る』
「……」
玲は。
写真を裏返す。
「誰が書いたんだ?」
「分からない」
その時。
星羅のスマホが震える。
『その男は敵じゃない』
「……!」
『でも、味方でもない』
『彼は』
『あの日、二人を引き離した理由を知っている』
星羅は。
すぐに返信する。
『じゃあ教えて』
既読。
返信。
『あなたにはまだ早い』
「……」
星羅の顔が険しくなる。
「……もう」
スマホを握る。
「私たちのことを勝手に決めないでよ」
玲が。
星羅を見る。
「星羅?」
「……ううん」
笑顔に戻る。
「なんでもない」
「……」
玲は。
星羅の手を握る。
「無理するな」
「……」
「何かあるなら言え」
「……玲くん」
星羅は。
玲の胸に寄り添う。
「私」
「ん?」
「玲くんがいれば」
「……」
「何があっても平気」
「……ああ」
「だから」
星羅は。
玲の服を握る。
「私から離れないで」
「離れない」
「……約束」
「約束」
――その頃。
学校の外。
あの男は。
一人で立っていた。
スマホを見る。
『二人はまだ何も思い出していない』
男は。
ため息をつく。
「……それでいい」
そこへ。
美咲が現れる。
「あなた」
「……美咲か」
「何してるの?」
「見てただけだ」
「二人を?」
「ああ」
美咲は。
男を見る。
「本当にこれでいいと思ってる?」
「……」
「玲くんたちは」
「……」
「真実を知る権利がある」
男は。
しばらく黙る。
「分かってる」
「じゃあ」
「でも」
男は。
空を見上げる。
「知ったら」
「……」
「今の二人の関係が壊れる」
美咲は。
何も言えない。
「だから」
男は。
小さく笑う。
「もう少しだけ」
「……」
「黙っている」
――翌日。
玲の机の中。
一枚の紙。
『七年前の事件』
『本当の原因を知りたいなら』
『文化祭の後夜祭へ来い』
『一人で』
玲は。
紙を握る。
「……」
そこへ。
「玲くん?」
星羅が来る。
「何見てるの?」
「……」
玲は。
紙を隠した。
「何でもない」
「……」
星羅は。
玲を見る。
そして。
少し笑う。
「……そっか」
「……」
でも。
その笑顔の奥で。
星羅は。
すでに気づいていた。
玲が何かを隠していることに。
「……玲くん」
心の中で。
「私に隠し事するんだ」
胸が。
少し痛む。
そして。
その痛みは。
静かな嫉妬へと変わっていく。
「……大丈夫」
星羅は笑う。
「私が全部見つけるから」
文化祭は終わった。
けれど。
二人の過去を巡る物語は。
まだ始まったばかりだった。