テラーノベル
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そんな重々しい空気を破ったのは ーー
「……どうも。失礼します」
どこぞの”ホスト”を思わせるような美貌を持ち合わせた男。
軽やかな笑みを浮かべてカウンターの端の席に腰を下ろした。
「マスター、梅酒ください」
「…少しお待ちください。」
マスターが裏へ入る。
その隙を狙ってか、詩織が近づく。
「…あのー、自分記者なんスけど、あの病院の名医っスよねぇ…?!」
目をキラキラさせながらそう語り始める。
返事を待たずに続ける。
「いやそうっスよねぇ…!あの”名医”と言われた人とお会いできるなんて…!!」
「…ありがとうございます。」
微笑を浮かべる。
「…!」
「…いやぁ、やっぱり綺麗っスねぇ…。」
「…こんな人が病院にいるなんてびっくりっスよ…」
「絶対ホストとか誘われるのになぁ…」なんて小言を漏らす。
膝の上に置かれた指がぴくりと動いた ーー気がした。
「…あ、名乗らずにすみません…」
「自分は桐崎詩織って言います!」
「…どうも。よろしくお願いしますね。」
笑みは崩さない。対人慣れしているのだろう。
「…自分は ーー」
「”御厨 衣織” と申します。…まぁご存じだとは思いますけど。」
(……御厨…?)
(……何で…いや、でも妥当か。誰にでも親なんているんだから)
(…だとしたらコイツが…?)
いつの間にか止めていた手を 上着のポケットに持っていく。
そして、そっと触れた。
(…あの時、置いてあった ーー)
(……いや、あの言葉が本当で…だとしたら……)
いつの間にかノートパソコンを取り出しトイレに向かう。
(……あそこの人、一人だなぁ。)
席から立ち上がって、その人の方へ歩く。
「…どうも、お嬢さん?」
びくりと肩を振るわせ振り返る。
「…っ、ど、どうも…」
「…お一人でこの席に?」
「…えぇ…っ、まぁ…」
さりげなく向かいの席に腰掛ける。
「…まぁ妥当か。急に変な人に絡まれたら嫌ですもんね」
あはは…と衣織が人懐っこい笑みを浮かべる。
「……」
緊張からか、不安からか、黙りこくってしまう。
そこへ静かにマスターが梅酒を運ぶ。
グラスを受け取って、特に急かす様子もなく一口含む。
トイレでカタカタと調べる。
この近くのホストクラブ、彼が建てたと言う有名な病院。
ーー 彼のことさえも。
(…お安い御用っ、と)
エンターキーを押す。
情報が滝のように溢れる。
素早く一つ一つに目を通し、参照する。
『ホストクラブ』
名前:ホストクラブ ◯◯
場所: ◯県◯市◯地区◯◯タワー近く
_____詳細 _____
検索中……
……
……
……
ヒット
人数30人程度。
三位 ◯◯ ◯
二位 ◯◯ ◯◯
一位 御厨 衣織
____履歴____
シャンパンタワー ◯◯◯回
在籍 ◯◯◯日
やりたいことの実現のために辞職。
アフター : 一回
_____
(…は?こんな有名なホストがアフター一回?)
(しかも、この時相当長時間の予約…)
(…これ、やっぱり……)
そこで考えるのをやめる。
考えなくても、容易に想像はできた。
ーー いや、できてしまった。
「……はぁ。」
「…まぁ、別に今更どうも思わないし、生活できてるし、…いっか。」
驚いたのは事実だけど。と心の中で付け加える。
そうしてトイレから出る。
#🚫😎💣️
榎本 夏樹
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コメント
4件
ここでついに来た我が衣織……有栖と対面したらどうなるのか、