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第一話


















赤side
















なんだか、頭が痛い


冷たい風が皮膚を刺激し、髪を揺らした


フェンスに寄りかかり、そのまま腰を下ろす


ふぅ、と息を吐いて空を見上げる


「……そろそろ、かな」


ゆっくりと瞳を閉じ、あの日の光景を思い出す


「………」


『_____…!』


2人の泣きそうな、苦しそうな表情


「………クソ」


目を開き、下を向く


ふと映った掌には薄らと刃物を握った痕が残っている


1度ゆっくりと深呼吸をして立ち上がると、重い扉が開く音が聞こえた


「____…さむ!」


「…ころちゃん」


姿を見せたのはころちゃんで、自分の腕を摩りながら、こちらに近づいてきた


「まだ9月なのに何でこんな寒いの!」


「あはは、確かにそうだね」


隣に来るところちゃんはドサっと座り込んで俺も再び腰を下ろす


「はい、莉犬くん」


ゴソゴソと袋から取り出して俺に渡してくれたのは缶のココアだった


「あ、ありがとう」


それを両手で受け取り、指を温めて軽く振ってからカシュ、とタブを開けた


「なんかもう肉まんとか売り始めてたよ」


「うわ食べたいなぁ」


「帰りるぅとくんと一緒に行こ」


そう約束して、2人でココアを口に入れた


「熱!!これはこれで熱いな!」


「そんな一気に飲むからだよ」


そこから軽く会話を続け、ふと思い出したかのように口を開いた


「___…そういえば今日からだっけ。転校生」


ピタッと、ころちゃんの動きが止まった














「………ねぇ莉犬くんは、さ」

「もし過去に憎んだ奴が目の前に現れたら、どうする?」

















「え……っと、それって…」











「やっぱいいや!気にしないで」





水色と琥珀色の瞳を細め、へらりと眉を下げて笑うころちゃんはコク、とココアを飲み込んだ


(………………)


「…あ、そろそろ時間だ。行こ、莉犬くん」


立ち上がり、ズボンをはたいて手を差し伸べたころちゃんにその手を握り、「うん」と頷いて俺も立ち上がった
















「ねぇ、今日からでしょ?転校生!」


「聞いた話だとめちゃくちゃイケメンらしいよ」


「去年に引き続きまた転校生!しかも3人!」


教室内はいつもよりも賑わっており、想像していた通りの内容で溢れかえっていた


「騒々しいですね」


「騒々しいって…(笑)」


苦笑する俺たちにるぅとくんは何食わぬ顔をして席についた


それから先生が来るまで雑談をしながら待っていると、チャイムと共に先生が教室に入ってきた


「えー、皆さん静かに」


先生は教卓につくと、みんなの方を向いて話を始めた


先生が説明をする中、みんなは「どんな子が来んのー?!」や「説明はいいから早くしろよー」などと騒ぎ立て、先生の声は徐々に小さくなっていき、最終的には涙目で「それでは、入ってきてください」と呟いた


その途端静まり返る教室


カラカラとゆっくりと開かれた先に立っていたのは一昨日見た3人のうち、2人が並んで入ってきた


先生の隣に立ち、1番最初に声を出したのは紫髪の人


「____初めまして。條檻ななもりと言います」


「よろしくお願いします」と細められた紫色の瞳


優しさや貫禄さなどを感じさせる完璧と言っても可笑しくない笑顔は何処か、あの人を感じさせられた

















「………、?」















ふと、目が合った
















藍色の瞳が俺を映し出した
















「________」
















微かに、口が動いた気がした














「…………?」












とても、吸い込まれそうな、瞳





不意に泣きそうになった























「____…くん、莉犬くん」


「…ん、…ぇ?」


ふと顔を上げるとそこには2人が立っていた


「おはよ、莉犬」


「あ、俺寝てた?」


「気づいてなかったの?」


よーしよしとるぅとくんに撫でられる中、寝ていた事に気づき、時間を確認する


「もうお昼じゃん」


「莉犬くんガッツリ寝てたね」


「疲れてたんじゃない?昨日シゴトだったし」

「それよりも早く生徒会室行きましょ」


ニコニコと花を咲かせて笑うるぅとくんに「そうだね」と微笑み、立ち上がって歩き出す









「…………………」











クス、と誰か笑う声が聞こえて視線だけを動かす











気の、せいか











「……………………」









チッ、と微かに舌打ちが聞こえた



















「____…あっ、ちょっと僕のウィンナー取らないでくださいっ」


「ひーひゃん、うーとくんだって…僕の卵焼き取ったくせにっ」


「それはそれ、これはこれです。僕が取ったのは卵焼きじゃないですか」


「卵焼きがおかずの中で1番高級なんだよ」


わーわーと目の前で騒ぐ2匹


一級品やぞ、と頬を膨らまし怒るころちゃんと僕の中ではウィンナーが1番です、と眉を顰めて怒るるぅとくん


「知ってるわ。だから取ったんだよ…莉犬くんまたそんだけ?」


クスクスと笑っていれば、ふところちゃんがこちらを見た


ころちゃんを視線の先には、俺が手に持っているヨーグルト


「あー…あんま食に興味がないから」


「そんなこと言ってー、もう…」

「こうなったら莉犬の分も作ってくるしかない」


「いーよー(笑)俺は2人のお揃い弁当をイチャイチャしながら食べてる姿でお腹いっぱいだよ」


お揃いとイチャイチャという単語を強調して言えば二人は黙り、静かに弁当を食べ始めた


若干るぅとくんの頬がほんのり染まっているのは見て見ぬ振りをして、俺もヨーグルトを口に入れた













「………………………」














(……そろそろか)














ピクリと犬耳を動かす








徐々に近づいてくる足音


2人に目だけで合図をする


その足音は次第に大きくなり、ピタッと止まった





















____コンコンコン













部屋中に響き渡るノックの音


「____…どうぞ」


るぅとくんは仕事モードに切り替わり、目つきをキツくさせてギラリと琥珀色の瞳が光を放つ


ゆっくりと開かれた両開きの重い扉


その真ん中には想像していた通りの人物


「____…ここが、生徒会室かな」



















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