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買い物を終え、帰る途中。その時、変な鳴き声がした気がした。
<クゥーン…>
不思議に思って振り返ると、いつの間にか、犬のようなもっさりした動物が居た。
<拾ってくれ>と目で訴えられ、動物に近づく。
「うち、来る?」
わかっているのか居ないのか、ブオンブオンと首を勢いよく縦に振る動物。「行くよ?」と声をかけると、動物は立ち上がり、着いてきた。
犬のご飯を買って帰る。とりあえず、犬っぽい動物をシャワールームでもしゃもしゃと洗う。黒っぽい紫の毛色で、とても綺麗だ。自分もシャワーを浴び、ご飯を食べて寝た。
次の日、改めてトリミングサロンに行き、犬っぽい動物の毛を切って貰った。随分すっきりとして、動物もご機嫌だ。
ある日、そろそろ名前を決めなくてはと思い、動物に話しかける。
「そろそろ君の名前を決めなきゃね、何がいいかな?」
すると、動物は体を震わせた。ぎょっとしていると、動物はカタチを変えていく。怖くて下を向き、ぎゅっと目を閉じた。
『こわ、い?』
聞き慣れない声がしてそっと顔を上げた。
そこには、高身長イケメンが居た。髪は濃い紫で、それより少し明るい色のやや吊り気味の目、紫の革ジャンに、大きく[ぼ]と書かれたTシャツ。
「ひぅ…………」
思わず怖がると、高身長イケメンはしゅんと俯いた。アタマに犬のような耳が生えた。興味本位で触ってみる。
『ひゃ…………っ…』
「ふわふわだぁ……」
そのまま手をずらして頭を撫でる。気持ちよさそうな顔をしたので、こちらも笑顔になった。ーーーー可愛い。でも、この高身長イケメンは何者なんだろう?
「君は、ナニモノ?」
答えてくれるとも思わなかったが、たどたどしくも言葉を発し、きちんと答えてくれた。
『え、と、おおかみの、じゅうじん』
なるほど、狼の獣人か、などと冷静な思考ができるはずもなく、「えぇぇぇえぇぇ!!??」とみっともなく絶叫してしまった。
『ひっ、ご、ごめな、さい』
慌てて謝ってくる高身長イケメンに、こちらが申し訳なくなる。
「いや、ちょっとびっくりしただけだから」
本当は大分びっくりしていたのだが、隠した。「君の名前は?」そもそも聞きたかったことを聞く。
『ぼんじゅうるって、よばれてた』
どこかで聞いたことあるような気もするが、スルーする。
「なるほどね、ぼんさんって呼んでいい?」
『いいよ』
まるで幼い子供のような受け答えに、笑顔になる。
「君は、どこから来たの?」
そう聞くと、うーん、と唸りながら考える。
『うーんと、おっきいやま』
「おっきい山……?」
ここの周りにおっきい山は無いから、きっと遠いところから来たんだろうなと思う。
「ぼんさんは、その山に帰りたい?」
もし帰りたいのならば、山を探して登山しなくてはならない。そう思って聞くと、首をゆるゆると振った。
『かえりたくない。やまは、こわいから』
「ふうん……?」
山が怖いのか。何が怖いんだろうなと思いながらもう一つ質問する。
「ここにいる?」
『ごはんとねるとこがあるから、ここにいる』
「わかった…。」
こういう感じで、謎の共同生活が始まった。