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狼の獣人、ぼんさんが来てから一ヶ月。その間、家の中ではちょっとした事態が起きていた。
ぼんさんは人間では無いので、人としての感性を教えなくてはならない。なのではじめに、人間としてのマナーを叩き込む。知ってる人と会ったら挨拶する、空気を読んで行動するなど、子供の時に学ぶようなことまで、全て叩き込んだ。
今日からは、漢字を読めるようにするため、小学一年生の漢字ドリルをやらせる。書き取りもやらせる。ぼんさんもそれは必要な事だと理解しているので、嫌がることなくこなしてくれた。
学校と同じくらいの時間から始め、終わる。土曜日曜は休み。その代わり外に出て、人とコミュニケーションを取れるように自分の職場に連れていく。ちなみにYouTuberをやっている。
社長のドズルさん、同僚のおらふくん、Menやサポーターのネコおじなど、なるべく口が固く信頼している人達にだけぼんさんの事情を話し、土曜日曜はみんなで出かけられるようにドズルさんが取り計らってくれた。
今日は平日だが、おらふくんが行きたいと言ったので、自分の部屋にドズおらめんがきている。
「おんりーは、どういう教育してる?」
ドズルさんが聞いてきた。おそらく、何を教えているかだ。
「んー、漢字、書き取りとか?」
ドズルさんはニヤッとする。
「ぼんさんにそれっぽい名前付けて、進〇ゼミ小学講座からやらせればいいんじゃない?」
「あー!」
よくCMでやってるやつだ。赤い耳のキャラクターが呼びかけている。
「名前決めないと」
「紫は入れたいです」
「狼も」
「じゃあ狼はロウって読むってことにして、名前でいいかな」
「紫神狼って書いて、シカミロウは?」
いいね、となった。
「ぼんさん、名前、決めましたよ」
『おれの、名前?』
ドスさんとかと交流させることで、ぼんさんの日本語も大分流暢になった。
「紫神狼、です。こう書きます。後で覚えましょう」
メモ帳に書いた字をみせると、「なんかかっこいい」と言われた。
「自分の名前聞かれたら、紫神狼って答えてくださいね」
『わかった』
ここが家の中でよかった。嬉しいのか獣耳が生えている。外で見られたら大変だ。
「おんりー、忘れないうちに進〇ゼミの申し込みしちゃいなよ」
おらふくんに急かされ、スマホで申し込みした。《チャ〇ンジタッチ》のほうだ。
「三日後、届きますって。ぼんさんもこれから勉強楽しくなりますよ」
ーーーー三日後。ちゃんと届いた、大きいダンボール。中を見ると、沢山の教材とおまけ、大きめのタブレットがある。
「ぼんさーん、届いたよー」
『ほんと!?』
三日前から楽しみにしていて、早く来ないかな、と言いまくっていたので、よほど嬉しいのだろう、獣耳と尻尾が出ている。こりゃ化けの練習もしなくてはと思った。
「まず、この充電器で充電してください、だって」
説明書きを読み上げると、アダプターとタブレットを持って部屋に移動し、充電した。
「ぼんさん、化けの練習しようか」
『えっ?耳、出てたりした?』
こっくりと頷くと、やっちゃったという顔をしていた。
よし、やろうかと言おうとした所で、電話がかかってきた。Menからだ。
「プッどしたー?」
【おんりーちゃん!やべえ!】
急な大声に、体がビクッとした。
「どしたの?」
【ぼんさんの正体がバレたかもしれねぇ!】
「えっ?!」