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「そうやって、夫の名前を口にすることが出来るんでしょ?直美、って愛されるんでしょ?そんなの……私から見れば幸せな女ってだけよっ!秋山はいいパパかもしれないけど、いい夫ではないわ」
「束縛するのが…いい夫…?」
「束縛、っていう言葉でなく、溺愛でいいじゃない。放置されるより、幸せよ」
「溺愛…って…そんなの限度を超えたら自由を奪われるだけ!わかります?直美直美直美直美って言う半分を亜優に向けて欲しいっ!風子さんにはわからへん…絶対にっ!」
「わからない、絶対にわからないわっ!直美さんに私の気持ちはわからない、絶対にっ!」
「もう…限界なんです……」
やっと緊張感から逃れられたと思ったこの場で、さらに本音が漏れた。
「束縛と感じるから?でも、何度も言うけど、私から見れば羨ましいわ」
「…私も……風子さんが羨ましいです…」
環境の違い過ぎる私たちが、お互いに相手を理解することはできなかった。
ただただ、お互いにお互いが羨ましかった。
その夜、初めて行ったお友達の家の話を興奮して話す亜優は、可愛い。
「きんぎょ、いてん」
お昼にも私は聞いたけど、パパもいる夕食時に亜優は同じ興奮を見せているのだ。
「ぱぱ、きんぎょはなにいろ?」
「あか」
「あんな、あかとくろ!」
黒い金魚に大興奮の亜優だけど、夫は“あか”となんとか答えただけで、もう聞いていないみたいだ。
「いろがまざってるのもいてん。ひらひらしたんとか…」
「直美、今日3人で風呂入ろか」
「…ぇ……」
亜優のおしゃべりの途中で、唐突に言われて驚いた。
「亜優、パパとママと一緒にお風呂な」
「……は、あ……ぃ……」
そして、亜優に返事をさせる夫を見て
もう……本当にダメだ……
と感じた私は、翌日からこっそりと、地元関西の求人を調べ始めた。
コメント
1件
直美さんそれがいい! 見つかりませんように…(人>д<*)