テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#ワンナイトラブ
おまる
結婚式の準備は、想像以上に過酷なものだった。
……主に、徹さんの「重すぎる愛」のせいで。
「……ダメだ。これも、却下」
高級ブライダルサロンのふかふかのソファに座り、徹さんは眉間に深い皺を寄せていた。
私が三着目に試着した
デコルテが美しく開いたマーメイドラインのドレスを見て、彼は本日何度目か分からない溜息をつく。
「えっ……。これ、ラインが綺麗で素敵だと思うんですけど」
「綺麗すぎるんだよ、結衣。……さっきのレースのものもそうだけど…綺麗すぎて、他の男に見せたくなくなる」
「徹さん、本気で言ってます……?」
冗談かと思いきや、彼の瞳は至って真剣だ。
担当のスタッフさんが困ったように微笑んでいる。
仕事ではあんなに合理的な判断ができる人が、私のことになるとどうしてこうも極端になってしまうのか。
呆れ半分、愛おしさ半分で、私は一度カーテンの奥へと戻った。
試着室の狭い空間。
ふわふわとしたチュールに囲まれていると、不意にカーテンの隙間から徹さんが滑り込んできた。
「わっ、徹さん……!? ここ、入っちゃダメですよ」
「スタッフには少し席を外してもらった。……結衣、こっち向いて」
狭い個室、真っ白なドレスに包まれた私を、徹さんは逃がさないように壁際へ追い詰めた。
鏡越しに視線が絡み合う。
彼の瞳には、熱を帯びた独占欲が渦巻いていた。
「本当に、綺麗すぎて誰にも見せたくなくなるんだよ…もちろんみんなに自慢したいけどさ」
大人の余裕なんてどこへやら、彼は私の肩に額を預けて、子供のように縋りついてくる。
その弱気な言葉に、私は胸が締め付けられるような思いがした。
私は、彼の首にそっと腕を回し、耳元で優しく囁いた。
「徹さん。…ドレスを見せるのはゲストの皆さんですけど、私のドレスを脱がしてもいいのは、徹さんだけですよ?……私の全部、もうあなたのものなんですから」
その言葉が、彼の理性の最後の一線を切らせたらしい。
徹さんは私の顎を強引に持ち上げると
白いベールを巻き込むようにして、深く、激しいキスを落とした。
「ん……っ、ふ……あ……徹、さ……っ」
ドレスが汚れないように、けれど確実に私の身体に自分の熱を刻み込むような、切実な口づけ。
狭い試着室の中で、衣擦れの音と、重なる吐息だけが響く。
「……分かってる。でも、式が終わるまで…いや、終わった後も一生、俺は君に溺れ続けるんだろうな」
彼は私の唇を親指でなぞり、獲物を愛でるような瞳で微笑んだ。
本番の式ではどんな顔をして私の隣に立つのだろう。
呆れるほどの独占欲を全身に浴びながら、私はこの重すぎる愛に応え続ける幸せを、噛み締めていた。