パチッと目を開けると畳の床で昭和に建てられたであろう家の一室でふわふわと浮いていた。
何があった!?と焦る中ひとまず周りを見渡すと
しっかりと掃除が行き届いている綺麗な和室で年代物の棚に大人数で写っている写真と、少し古い置物が何個か置かれていた。
そして少し大きめの1人用のベットには白髪のおばあさんが仰向けで寝ていた。
きっと棚に置かれていた物はこのおばあさんの物なんだろう。
そんな事を思いながらおばあさんを見ているとおばあさんの心臓の辺りからふわふわとした白いなにかが上へと上がって来ていた。
何が出てきたのだろうと首を傾げると勢いよく後ろへと引っ張られて思わず
「うわっ…!?」
と声を出す。
数秒すると次は屋外にいた。
雲ひとつ無い晴天に床は砂利。太陽の光できらきらと輝く綺麗な川が優雅に流れていた。
そして私はまた何故かふわふわと宙に浮いていた。
すると少し遠くからあの、寝ていたおばあさんがこちらへと歩いて来た。
川の少し前で立ち止まると優しく微笑み
「舟に乗っても良いのかい?」
「ありがとうねぇ…」
と言った。おばあさんの言っていた舟と言うのは無い。
何を言っているのだろうと少し怖ささえも感じる。でももしかしたらこれがソメイの言っていた幻覚なのかも知れない。
そんな風に意外と落ち着いている私の事を気にもせずおばあさんは川へと舟に乗る様に片足づつ付けた。
するとおばあさんは突然意識が無くなったかのようにその場に倒れる。 川は水1滴も弾かず優しくおばあさんを受け入れていた。
そして優しくおばあさんを流して行く。
私はただその姿を見ていた。
なにか思う訳でも無かった。ただ目の前で人生のエンディングを見ただけだった。
きっと私の中ではもう既に受け入れていた事だった。
そんな事をぼーっと考えるとまたぐわんと後ろに引っ張られた。
またパチッと目を開くと次は暖かな日が入る個室の綺麗な病室だった。
ベッドの上にはニット帽を被った小さい女の子。推定10歳のやせ細り顔色がとても悪い女の子が1人眠っていた。
そんな病室にふわふわと浮いた私と
ピッ………ピッ…ピッ……………ピッ……
と不安定な機会音だけが響いていた。
ピッ……ピッ…………ピッ……ピッ………
聞いているだけでも不安になる消えてしまいそうな音。
私は女の子を哀れに思う事しか出来なかった。ただ可哀想だった。
ピッ……………ピッ… ピーーーーーーーー
先程とは違う音に少し肩をはね上げると同時に女の子の心臓辺りからおばあさんと同じ様に白いふわふわとしたなにかが上へと上がって行った。
そして私もまた後ろへとぐわんと引っ張られた。
またパチッと目を開くとおばあさんの時と同じ屋外に来ていた。
少し遠くから足を引きずる様に歩く音が聞こえそちらを向くと先程病室で寝ていた女の子がこちらへと向かって来ていた。
その姿はなんともオドオドしくて今にでも転んでしまいそうだった。
女の子は川を見つけると嬉しそうに、ぱぁっと顔を輝かせてこう言った。
「綺麗なふね…!」
「あれに乗りたい!」
そう言うと先程寄りも少し早く歩き出した。
思わず
「がんばれっ!」
と応援してしまい「しまった…!」と思ったがどうやら相手には私の声が聞こえていないらしい。
やっとの思いで川に到着すると慎重に女の子には見えている舟に掴まり、片足づつ川に入れて行く。
するとまた意識が無くなる様にバタリと倒れた。川もまた優しく受け入れ水滴1つ弾か無かった。
そして女の子は穏やかな表情で川に流されて行った。
私はただ
「よく頑張ったね」
と前向きに思っていた。まるで他人事かのように。
そしてまた後ろへと勢いよく引っ張られた
コメント
5件
うわぁ……もう、うわぁぁ…… 私の語彙力も持っていかれたらしい
うわぁぁぁぁぁあ……!! どんどん物語に引き込まれていく やばい 好き 語彙力は狼ちゃんに吸い取られました
最初のおばあさんのスランプと後半の調子良い女の子の差が…w