──気づいたときには、天井が知らない色をしていた。
「……ここは……?」
ショッピは静かに身を起こす。手足に拘束はない。けれど、ドアには内側から開けられないロックがかかっていた。
外の音はしない。携帯もない。窓も高い位置にひとつだけ。
「……随分と、分かりやすいですね。」
その声にも、やはり敬語が滲む。
冷静を装う。動揺しているのは、見せない。見せたら、負けだ。
──ガチャ。
鍵の回る音に、体が反応する。
入ってきたのは、ゾムだった。
「お はよ。よく寝てたな。」
「……ゾムさん、これは一体?」
「俺の気持ちがわからんって言ってたやろ。
だから、わかるまで一緒にいてもらおうと思ってな?」
悪びれた様子もない笑顔が、なにより怖い。
それでもショッピは、ゆっくりと口を開いた。
「……監禁、という認識で間違いありませんか?」
「“保護”って言う方が優しい響きやろ?」
「ふざけないでください。」
初めて、声が少しだけ揺れた。
ゾムの顔が少しだけ歪む。その顔に、怖いほどの“愛”があった。
「ほんまに嫌なん? 俺がここまでしてんのに。」
「嫌です。……あなたの気持ちはありがたく思いますが、これは“歪んだ執着”です。」
「でもなぁ、ショッピ。お前、誰にも自分の本音、見せへんやん。」
ぐ、と距離を詰められる。
壁際まで後ずさり、ショッピは肩を押さえられた。
「俺だけには、見せてくれてもええやろ?」
「……なぜ、そうまでして……」
「だってお前が……お前が冷たすぎるからや。」
「敬語も、距離感も、全部……その仮面みたいなん、外したお前が見たいんや。
じゃないと、俺……壊れそうやねん。」
一瞬、ショッピの瞳にわずかな迷いが浮かんだ。
けれど──
「……申し訳ありませんが、それはあなたの問題です。」
やはり、敬語は変わらない。
だからこそ、ゾムの執着は、さらに深くなる。
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