テラーノベル
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日差しが突き刺さるような夏休み前の放課後、少年は一人で町を歩いていた。
彼女に何か「時間」を形にして送りたい。
そんな思いが少年を突き動かしていた。
繁華街(はんかがい)を外れ、 古いア―ケ―ドの商店街を折れた路地の奥。セミの喧騒がふと遠くの静けさの中に、その店はひっそりとたたずんでいた。
『時計工房 水沢』。
店内には壁一面の柱時計や懐中時計が並び、カチコチ、コチコチという不揃いな音が心地よく響いていた。
「いらっしゃい。珍しいね、こんな
若いお客さんは」
奥の作業台から顔を出したのは、眼鏡をかけた白い髪の老店主・水沢さんだった。
少年がショ―トケ―スの中で見つけたのは、銀色のアラベスク模様が施された小さな手巻き式の懐中時計だった。
「素敵な時計ですね」
「それはね、ずっと前に海外で作られた手巻き式の時計だよ。電池じゃなく、ゼンマイを巻くことで生き返る。人間と同じで、手をかけてあげないと止まってしまうんだ。君は、誰か大切な人に『時間』を送りたいのかい?」
水沢さんの問いかけに、少年は素直に頷き、彼女のこと、二人で過ごす時間を形にしたいことを話した。水沢さんは静かに耳を傾け、その銀の時計を少年の手にそっと乗せた。「時間はね、誰にとっても平等に過ぎていくけれど、…心の中に刻まれる時間は、その人とどう過ごしたいかでいくらでも深く、豊かになるんだよ。この時計は、ゼンマイをいっぱいに巻くと二十四時間働く。君がゼンマイを巻くんだ。明日もまた、一緒に時を刻もうと願いを込めながらね」
コメント
1件
あおいです🤍 第4話、ひんやりした時計工房の空気と、ゼンマイを巻くたびに刻まれる「想い」の重みがとても美しかったです。「手をかけてあげないと止まってしまう」という水沢さんの言葉、人間関係にもそのまま通じるなあと沁みました。あの銀の懐中時計が、少年と彼女の時間をどう彩るのか、続きが気になります🌷