‥夢を見た。
いつも見る夢は‥
愛されていた頃の夢‥
祐希さんが隣りで笑っていて、優しく抱きしめて‥キスをしてくれる、そんな夢。
でも‥今日は違った‥
全く知らない景色の中‥祐希さんを探している夢‥
ずっと探して‥やっと見つけたと思い嬉しくて駆け寄り抱き着くと‥
祐希さんからの拒絶‥
なんで‥‥
涙が溢れる‥
それでも、必死になってしがみつき顔を見上げると‥‥涙の滲む瞳で睨まれながら‥言われた‥
「嘘つき‥」
‥‥そこで目が覚めた‥
‥夢?あまりのリアルさに本当にあったんじゃないかと思ってしまう程だった。
夢の中ではいつも笑っていた祐希さんが‥
今日は違った‥。
たったそれだけの事‥
たかが夢の話‥
なのに‥
何故こんなにも胸がざわつくのだろうか‥。
言いようのない不安感が広がる‥。
ガチャ。
「‥藍、起きてたの?おはよ」
こんな朝早くどこに行ってたんだろうか‥振り向くと小川さんが俺にコーヒーを差し出してくれていた‥。
ありがと。コーヒーを受け取りながら礼を言うと、不意にギュッと抱きしめられ‥
「藍‥愛してる」
「俺の‥そばにいろよ」
と、何度も囁いていた‥
小川さんの言葉は‥優しくて、全身を包みこんでくれる気がした‥。
いつか‥
祐希さんへの想いが過去になる日がきたら‥
そんな日がきたら‥
俺は小川さんの心に寄り添えるだろうか‥
それから数日後‥
合宿最終日を迎える。
あれから‥祐希さんとは一切話していなかった。
時折、皆で語る事はあったが‥
それだけだった。
それだけ‥‥‥
まるで何事もなかったかのように‥
「‥藍、ちょっといい?」
ロビーにて‥ふと、智さんに声を掛けられた‥。
智さんとは‥小川さんの事もあり、あれからまともに話していない。
「いいっすよ‥」
内心はドキドキしながらも‥智さんに着いていく‥
そして、非常階段のそばまで来ると、急にクルっと振り返った智さんに‥
「‥小川から聞いた。藍が好きだって‥だから付き合っていく事は出来ない‥別れて欲しいって」
「‥智さん‥」
淡々と話す智さんに、俺はなんて言っていいのか分からなかった‥
祐希さんの事でも、いつも俺を気にかけてくれていたのに‥
この合宿だってそうだ‥
なのに‥
「藍‥小川と付き合うの?」
「‥‥‥‥」
「答えられない?小川のことは?好き?」
「‥小川さんは尊敬してます。好き‥やと思う‥でも、‥まだ付き合うとかは‥考えられないのが正直な気持ち‥かな‥」
「そっか‥やっぱり祐希が関係ある?」
‥躊躇ったが、コクリと頷く。
実際‥どうしても祐希さんを気にかけてしまう自分がいた‥。
諦めると決めたのに‥。
そんな俺を智さんは暫く見つめていたが‥何度か頷き‥
「藍の気持ち分かったよ‥でも‥大丈夫」
ニコリと智さんが笑う‥
「小川はね、また必ず俺のところに戻ってくるから‥」
「智さん‥」
「そう‥必ずね‥」
俺の肩をポンっと叩き‥意味ありげに呟くと、立ち去っていくが、途中何故か振り返り‥
「藍?一つだけ‥忠告しとく。小川は‥怒らせない方がいいから」
「小川さん?どういう意味ですか?」
‥小川さんは理不尽に怒ることは無かった。これまでにも見たことはなかったし‥。
「‥まぁ、覚えておいて‥小川は怒ると‥ヤバいから‥」
そう言うと‥智さんはもう振り向くことなくロビーの中央に駆け出して行く‥
残された俺は暫く動くことが出来ず‥その場に立ち尽くしていた‥智さんの言葉を考えながら‥
「藍?何してんの?こんなとこで‥」
探しただろ?と、小川さんが笑顔で駆け寄ってくるまで‥放心状態だった。
「もう集合だってさ、行くぞ!」
ほらっと手を差し出される。迷いながらもその手を握ると、ギュッと強く握り返され‥
俺の顔を見て優しく微笑む小川さんがそこにはいた‥。
こんな手を握っていたら、怪しまれるのに‥
そう思うが、嬉しそうに何度もこっちを見る小川さんには言えなかった‥
そして、
合宿は終わった‥。
また元の日常に戻る‥
でも‥
その数週間後だろうか‥
あの時智さんが言っていた言葉の意味を‥
俺は知ることになる‥。
“小川は怒らせない方がいい“
その意味を‥‥‥。
コメント
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コメント失礼します☺️ 小説読みました♪内容もどんどん深くなっていき小川さんと藍くんはこれからどんな風になるのかなと思ったのと、智さんが言っていた「小川さんには気をつけろよ」と言う言葉の意味が気になりました☺️続きを楽しみに待ってます♪これからも頑張ってくださいね☺️