テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#独占欲
「……有楽町から銀座駅まで徒歩移動。今は銀座二丁目あたりにいるのね」
私は朝からスマホを握りしめ、彼の位置情報をチェックし続けていた。
(信じなきゃいけないのに……最低だよね、私。本当のことを知るのが怖いよ……)
数日前、私は陽一さんにお揃いのスマートタグをプレゼントした。「落とし物をしてもスマホで探せるから安心だよ!」なんて建前を言ったけれど、真の目的はこれ。浮気の追跡調査だ。
そしてついに、彼に追いついた。位置情報はもう長いこと、有名なジュエリーショップやパティスリーが並ぶ通りから動いていない。
(お土産にスイーツでも買ってるのかな……)
淡い期待を抱いて、反対側の通りが見渡せる位置で待っていた私は……その瞬間、心臓が凍りついた。
陽一さんが、出てきた。……あろうことか、ジュエリーショップから。
隣には、派手な金髪にギャルメイクをした女性。何より私の絶望を決定づけたのは、彼女のバッグについていたマタニティマークだった。
(……嘘、でしょ?)
陽一さんは山のようなレディースブランドの紙袋をすべて持ち、彼女の歩調に合わせ、車道側を歩いて献身的にエスコートしている。その姿は、誰がどう見ても「愛する妻を守る夫」そのものだった。
……陽一さんは、私が現れる前に付き合っていた元カノが妊娠したことを知り、誠実な彼は『責任』を取って結婚することに決めたのね。
最近、筋トレに励んでいたのも、子供を守る『パパ』としての強さが欲しかったから。私を避けていたのは、罪悪感から。あのシトラスの匂いは、きっとおそらく同棲中の彼女の家のもの。
陽一さんは今、あの店で彼女にプロポーズ用の指輪を買ったのね。私との恋愛を終わらせて、彼女と家族になるために。
彼の中に私の居場所なんて、もう1ミリも残されていない。頬を伝う涙が、舗道にポタポタと落ちる。
「……う、っ……ぁ……」
私は銀座の真ん中で、一人静かに、そして完全に壊れていった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!