テラーノベル
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ygdr×gt🔞無し
なんでも許せる人向け
⚠️ボツ作品
頑張りすぎちゃうファイナルの話
長め、早め、意味わからなめ。
『』→ぐちつぼ
「」→ぐちつぼ以外
ぐちつぼ視点
「頑張りすぎだから休んで!」
と最近よく言われる。
頑張りすぎってなんだろう。
俺はそんなに辛そうに見えるのだろうか。
もしそう見えているのなら誤解を解いた方がいい。
なんてったって俺は今の仕事にやりがいを感じていて、毎日楽しい。
走れなくなるくらいいろんなところを駆け回って、たっくさん汗を流して、疲れ切って気絶するように眠るのが幸せじゃないの?
俺はそんな幸せしか知らない。でもそれは悪いことじゃなくて、俺はこれが好きなんだ。
ピピピピ
小さめの音で鳴った朝5時を知らせるアラーム。
他の人を起こさないように急いで止める。
まだはっきりしない寝起きの頭だけど体に染みついたルーティンが俺の体を動かす。
リビングに行くと薄暗い中でコーヒーマシンと冷蔵庫だけが小さな光を放っていた。
見えるから問題はない。
電気をつけないままリビングを通過して洗面所に入って、完全に扉を閉めてからやっと電気をつけた。
小さな音でもみんなを起こしてしまうのではないかと心配になる。
まあこの朝の時間にみんなが起きてきたことはまだないけど。
夜型、プラス毎日疲れ果てるまで遊ぶからこの時間は熟睡しているのだろう。
でも絶対に起こしたくなくてなるべく音を立てないように気をつけながら身支度をした。
朝5時30分。
アジトの扉を開けるとヒュウと肌寒さに包まれた。
行けるか、と歩を進めるけど流石に寒すぎる、と引き返す。
一旦アジトに入ると玄関のそばに置いてある誰かの上着が目に入った。
借りちゃおうかな、、、。また自分の部屋まで戻るのが面倒だ。
少し葛藤したのち上着を借りることにした。
多分ロレさんかしすこさんのだけどその2人なら許してくれるだろう。
上着を着て外に出る。
まだ少し寒くて朝ってすげぇな〜なんて薄い感想を抱いた。
ガレージで自分の車に乗り込みエンジンを入れる。
一番に暖房をつけ、カーナビをチラリと見た。
外の気温は15℃らしい。だんだんと冬に向かっているな、、、。
車の中で少し伸びをしてからアクセルを踏んだ。
俺の1日はホットドッグを売るところから始まる。
1日の始まり、特に朝の6時~9時はご飯を求める人が多いのに開いている飲食店が少ない。
少ないどころか俺のように露店で営業する店しかやっていないだろう。
1日を空腹から始めるなんてそんな虚しいこと俺は絶対に嫌だ。
だからこの時間でホットドッグ店を営業するようになった。
レギオンの前でいつも通りホットドッグを作る。
一番最初に作ったやつは俺の胃の中に入った。
流石にまだお客さんは来ないかな〜と思いながら周りを見渡す。
静かで澄んだ空気に頭がスッキリする。
と、同時に寒さで少し震えた。
かじかんだ手にはーっと息を吹きかける。
この動作、冬って感じでちょっと好き。
来週くらいにはちゃんとコート着て、手袋もつけた方が良さそうだな。
そう考えていると遠くから重厚感のあるエンジン音が聞こえてきた。
確実にそこらの車じゃない高級車の音に視線がそちらに向いた。
そこには何度も見たパトカーが法定速度を守ってこちらに向かって走ってきていた。
「ぐちつぼ〜!」
パトカーの窓が開いて名前を呼ばれたと思ったらなにかがこちらに向かって投げられた。
『うおっ』
パシッと反射でそれを受け止める。
あぶねーと思いながら手の中のものを見ると缶コーヒーだった。
「こんな時間から頑張りすぎだぜ〜」
俺の前にキュッと止まったパトカーから出てきたのはなるせ。
この街の警察の1人だ。
「それ、やるよ。寒いっしょ」
手の中の缶コーヒーを指差しながらそう言う。
『投げる必要あった?』
「かっこよかったっしょ。」
俺はちょっと笑ってから『ありがと』と呟き缶コーヒーを開けた。
『で、こんな時間から頑張りすぎなのはそっちもじゃない?』
警察の制服をキッチリと着て背中に銃を抱えた格好は今すぐ事件対応に向かえそうだ。
「、、、ホットドッグ10個!」
俺の問いかけには苦笑しただけで返事をせず注文をいう。
まあなるせも思うところがあるのだろう。
焼きたてのホットドッグを渡す。
なるせは受け取った後帰る様子を見せずにじーっとこちらを見てくる。
俺は不審な顔をする。
「いや請求書は⁉︎早くちょうだいよ。」
『あー笑、いいよ。サービスサービス。』
なんだ請求書か、と笑った。
缶コーヒーと交換でホットドッグをあげたつもりだった。
善意の交換会ってことで。
なるせは少し迷ってからパトカーに乗り込んだ。
「じゃーな!たまには休めよ!」
それはこっちのセリフ。という前にパトカーはすごい速さで去っていった。
手の中の缶コーヒーは既にちょっと冷めてしまったけど俺の体はすっかり温まっていた。
9時になるとだんだんと人が増えてくる。
同時に飲食店がオープンし始めるから俺は撤退する。
今日はあまり売れなかったけど朝の時間に来るお客さんはみんなすごく感謝してくれるから嬉しい。
幸福度たっぷりで撤退した俺の次の仕事は個人医だ。
ここからが本番と言っても過言ではない、さっきまでの平和な雰囲気と打って変わって殺伐とした忙しさが襲ってくる。
俺は一度アジトに戻り玄関先に借りていた上着を置くとまた急いで車に戻った。
個人医にジョブを変えると既に一件ダウンが発生している。
バンダナを結び直して気合を入れるとアクセルを思いっきり踏み込んだ。
助けて、助けて、助けて、ダウンして、助けて、ダウンして、助けて、助けて、ダウンして。
昼まで街を駆け回り時に事故で、時に事件に巻き込まれてダウンしながらも沢山人を助けていく。
なんでこんなに必死になるんだろうって考えたこともあるけどなにもしないのが俺にとって一番苦痛だということに気づいた。
ダウンした人の元へ行って、救助をする。
その時俺を貶す人なんていない。みんな感謝の言葉を一番に言うしぐちつぼだ!って喜んでくれる人もいる。
求められてるって分かると自分が好きになる。
ピコンというダウン通知に無意識で体が動く。
カーナビにピンをさして目的地に急ぐ。
場所的に犯罪現場だ。
犯罪集団の仲間だと思われないように少しスピードを落として近づくけど銃声はしない。
ということは収束したけど取り残されちゃった感じだ。
そうなったら仲間も探すだろうし急ごう。
ピンの場所につくと端のほうにうずくまった人がいた。
顔と服でなんとなく誰か予想がつく。
『みっさん〜?大丈夫?』
「ん、、、あ!ぐっさ〜ん!!」
およそダウンしているとは思えない元気な声で返事をしたのはギャングのととみっくす。
うちのギャング、ゆぐどらしると仲が良く一緒に犯罪をすることも多い。
すっかり顔見知りだ。
『取り残されちゃった感じ?』
「そーなんよ。ほんま最悪や。」
そう嘆くととみの足に入った銃弾を慣れた手つきで取り出す。
少し顔を顰めたのを見て優しく頭を撫でながら足に包帯を巻く。
右手がくいっと引っ張られる感覚があって見てみると、ととみが俺の服の裾を力一杯掴んでいた。
他の人は痛そうな顔一つせず耐えることが多い。
だからととみのように必死で耐える姿を見るのは新鮮だ。
『わりぃ、結構待ったよね』
ととみは首を横に振る。
力無い姿が胸に突き刺さった。
早く助けなきゃって焦ってダラダラ汗を流しながら蘇生をする。
『ょし、』
「ッはぁー、、、!」
痛みが引いたのかととみは止めていたであろう息を吐き出す。
『もー、俺がきた時無理して喋ったりするから。』
最初元気に返事するから平気なのかと思ったじゃん。
「だって〜、ぐっさんの声聞いたらなんかアドレナリン出て痛くなくなったんやもん。」
子供のように言い訳をする。
でもなんだか嬉しくってなにそれって笑った。
ととみも俺につられて笑顔になるけどフッと真剣な表情にもどる。
「ぐっさん〜、無理せんといてな?」
『え?』
突然俺の心配?って疑問に思ってるとととみは少し照れくさそうに笑ってからじゃあ俺帰るから!とそばにあった車に乗り込んだ。
「無理してないならええんやけど!」
捨て台詞のようにそう言うとさっきまでダウンしていたとは思えないスピードで走り去っていった。
にしても、どうしてみんな俺の心配をするのだろう。
俺、そんな体調悪そう、、、?
そう思いながらふと時計を見ると12時過ぎ。
俺は急いで車に乗った。
アジトに帰らなくちゃ。
個人医の次はギャングの仕事だ。
昼くらいに起きてきたメンバーたちとお昼ご飯、みんなにとっては朝ごはんを食べて犯罪をする。
そのためにもお昼にはアジトに帰っていなくては。
バンッと勢いよく扉を開けるとまだ眠気まなこなみんながいた。
おはよ〜とのんびり言う声に朝のような平和が帰ってきた。と思った。
平和からの殺伐からの平和、、、
この温度差がかなりキツかったりする。
「ぐちつぼお前、寝てる?」
『え?』
らっだぁが俺の肩に手を置いて言った。
こいつまで俺の心配?
『寝てるよ。』
少し不機嫌になって言う。
心配ばっか、大丈夫?って聞くくらいなら褒めてよ。
「寝てねえだろ。」
ソファに座ったロレさんがそう言う。
俺に釣られて少し不機嫌な声色に空気がピタッと止まった。
ロレさんに不機嫌を向けられたことがなくて俺は何も返せない。
訂正しよう。平和って言ったけどなぜか殺伐としている。
「ぐちさんコーヒー飲む?」
緊張した雰囲気を突き破ってしすこの声が響く。
俺は固まっていた肩を落としてしすこの方へ向かう。
『もらっていい?』
「もちろん」
差し出されたコーヒーは温かくて俺の好きな豆の匂いがした。
ふわりと湯気とともに香りがやってきて鼻腔をくすぐる。
すごく、落ち着く。
俺はまだ不機嫌であろうローレンを視界に入れないようにカウンターに座り背を向けた。
「犯罪っ!なにする?」
背中から上擦ったといといの声が聞こえる。
その言葉を皮切りに犯罪の話が盛り上がり始める。
完全に雰囲気が良くなったのを感じて俺はありがとうの気持ちを込めてチラリとしすこを見た。
初めにやったのは飛行機墜落の犯罪。
ウォーミングアップにはちょうどいい、たいして難しくないし警察も来ない犯罪だ。
そして次はボブキャットという犯罪に向かう。
犯罪場所自体が大きくなく、倉庫のような場所だから簡単に見えるが実際成功率はかなり低い。
警察が来たら確実に撃ち合いになるし、大体倒さないと脱出できないのが辛いところだ。
俺は少し遠くで待機をする。
逃走の補助をしたり、ダウンした人がいたら救助したりするのメインでなるべくダウンしないように立ち回っている。
無線で情報が飛び交う声と銃声やヘリ同士がぶつかる音に少し頭が痛くなる。
「ぺいんととふわっちのほう警察いる?」
「今一台パトカー通った!あ、これ死ぬかも!」
ぺいんとの緊迫した声に俺はハンドルを握った。
少しぺいんとたちの方に寄っておこう。
と思った矢先、ピピッとダウン通知が届く。
ぺいんとだ。
「警察1人やった!ぺんちゃんはダウンした!」
『とぅーん拾いに行くわ。』
出番だ!とアクセルを思い切り踏み込む。
勢い任せな運転でダウンした場所まで突っ走るとそのまま止まることなくぺいんとを拾う。
そしてそのままのスピードで犯罪現場から離れる。
ぺいんとのナイスッ!という声に口角が上がる。
この瞬間が一番気持ちいい。
サイレンが遠くから聞こえてくる場所で車を止めるとぺいんとの治療を始める。
一度ダウンしてしまったぺいんとは再度現場に戻ることはできないけど捕まらないで逃げれるだけでデカい。
「あとは頼んだ〜」
悔しそうにそう言うぺいんとがとても楽しそうに見える。
ぺいんとは本当にこのメンバーが好きなんだろう。
『はいっ、治療完了!』
「ありがとぐちーつ!」
立ち上がったぺいんとを見て俺は急いで車に乗ろうとする。
現場に戻ってまたカバーをしないと。
と思っていたのに腕を引っ張られて歩みをとめた。
『なに?』
俺の腕を掴んだぺいんとは分かりやすく目を泳がせながら言う。
「その、ここ怖いから一緒にアジト戻んない、、、?」
珍しいことを言う。いつもだったら元気よく送り出すのに。
『じゃあ近くのガレージまで送っていくよ。』
「いやっ、一緒にアジトまで行きたい!」
異様にわがままを言うぺいんとに不審な目を向ける。
『何が言いたい?』
俺の鋭い声にビクッと肩をすくめる。
腕を掴んでいた手がどんどん緩んでついに離した。
そのまま強く拳を握ると申し訳なさそうにごめんと呟いた。
なぜ謝るのか、何がしたかったか分からないまま俺は車に乗り込む。
俯くぺいんとを横目に銃声の鳴り響く犯罪現場へと向かった。
ボブキャットは何人か捕まったものの無事報酬はゲットすることができ成功に終わった。
その後も何個か犯罪をしたが失敗してしまった。
捕まると刑期を全うすることになり拘束される。次の犯罪が素早く出来ないため時間はあっという間に過ぎる。
今日は4つ犯罪をして終わりということになった。
あとは小型犯罪でちまちま金を稼ぐ。
「俺とふわっちで西の銀行強盗行ってきま〜す!」
「じゃあ俺一応ヘリで近く見とくわー」
無線での報告を聞きながら俺は新しいダウン通知に意識がいっていた。
俺は個人医に戻ろう。
「ぐちつぼ、ちょっといい?」
無線で俺を呼ぶらっだぁの声。
対して急ぎじゃなさそうだし、一旦救助が先だ。
『ごめん、ダウン通知きたからそれだけ起こしに行く』
「りょうかーい」
無線に一声入れてからアクセルを踏み込む。
これ以上ダウンが増えないといいけど。と思いながらみんなから離れた時だった。
ガツン!と鈍器で殴られたような衝撃が頭に走った。
反射でブレーキを力一杯踏み込む。
まだ余韻で頭がズキズキ痛む。
なんだ、これは。
頭を触るけど当たり前のように殴られていない。
じゃあなんでこんなに頭が痛むんだ。
心当たりが全くない。偏頭痛でもない。
少し息を整えようとした瞬間またガツンガツンと頭が割れるような痛み。
運転席で頭を抱え込む。
周りの雑音がやけに耳に入ってくる。
サイレンの音、何かがぶつかる音、車のエンジン音が頭をかき混ぜる。
嫌に耳に残って頭がさらに痛くなる。
痛い痛い痛い
うるさいうるさいうるさい
『ぁあ゙ッー!』
思わず声が漏れる。
痛みが強すぎて全身が痛んでるように感じる。
目を瞑っているのに暗闇がぐわんぐわん揺れて今度は音がどんどん遠のいていく。
あ、これ気絶する。と思った直後に俺は何もできずに意識を失った。
目を覚ますと外は真っ暗だった。
街灯やネオン看板や警告灯がかろうじて俺の視界に光を与える。
落ち着いて周りを見渡すと俺は車の中にいて、車道から少し外れた場所に車が止まっていることがわかった。
ああ、そうだ。ここで気絶したんだった。
急な頭痛に襲われて、急ブレーキをかけてとまって気絶した場所。
いっさい動いていないから気絶してから状況は何も変わっていないということ。
とりあえず車のドアを半開きにして外の空気を吸う。
冷たい空気が重たい体にはちょうどいい。
まだ少し頭が痛む。
さっきほどではないがズキズキと痛むのはかなりストレスだ。
しかも音がやけに大きく聞こえる。
二日酔いみたいだ。
外の空気で頭を冷やしながらポケットからスマホを出す。
時間を見ると1:15と書かれている。
解散したのは20時くらい。
5時間ほど気絶していたのか。
そりゃこんな暗いのも頷ける。もう深夜だもんな。
ドアを閉めてハンドルに手をかける。
帰らなきゃと思っていてもアクセルを踏む気になれなかった。
あいつらの言う通りだった。
無理しすぎだ。休めばよかった。
そう分かっているけど認めるのは癪だ。
俺だって頑張っていた。
褒められたくて、感謝されたくて、頑張っている自分が好きだった。
どうやって休めばいいのか分からない。
何もしないって、どうやるの?
なるせもととみもらっだぁもローレンもぺいんとも俺を心配していたけど心配されたらもっと頑張ったらいいんじゃないの?
心配することないよって証明しなきゃいけないんじゃないの?
俺には分からないよ。
この痛む頭も心も俺にはどうしたらいいか分からない。
あれから30分ほどぼーっとしてたけどさすがに頭も痛いし寒いしでアジトに帰ることにした。
こういう時自分の家があればと思ったがあいにく最近売ってしまった。
ゆっくりアクセルを踏んでゆっくりとアジトに帰る。
みんな寝てるといいな。俺も早くベッドで寝たい。
アジトについて車をガレージにしまう。
久しぶりに立つと足が震えた。
かなり限界っぽい。
朝のようになるべく音を立てないようにドアを開け音を立てないように中に入ったのにリビングは電気がついていてみんなの話し声が聞こえた。
なんでこんな遅い時間まで起きているんだ。
少し憂鬱に思いながらリビングのドアを開ける。
一気に視線がこちらに向いて俺はスッと目を逸らした。
「ぐっ、ぐちーつ!!!」
ぺいんとが大きい声で叫んで飛びついてくる。
この感じ俺がみんながこの時間まで起きている要因だなと察する。
「つぼさんっ!」
ぺいんとに続いてふわっちも寄ってくる。
随分心配してくれていたようだ。
分かっているのに頭がズキズキと痛む。
2人の声が耳を突き刺す。
『っうるさ、、、』
つい口から出たのはきっとこの状況で一番最悪な言葉だった。
「「え」」
2人の声が重なる。
目を見開き一歩後ずさる。
ズキズキと頭が痛む。お願い、大きい声を出さないで。
「ねえ、こんな時間までどこいたの」
ぺいんととふわっちを退けてらっだぁが詰めてくる。
肩に手を置かれぐいっと引き寄せられる。
『っ触んなっ!』
バチっと嫌な音が響いた。
らっだぁの手を思い切りはたいていた。
止まれない。全てが嫌だ。
イライラが止まらない。
頭が痛い。
全部がうるさい。
全部が気に入らない。
早く寝たいだけなんだ。早く寝て、また明日も頑張りたいだけなんだ。
「なにがあったのか教えて。」
らっだぁは優しく手を差し出す。
でも俺はその手を取ることが出来ない。
人に弱み見せるのってどうやるの?
『来んな、たのむ、もうどいてくれっ、、、!』
ズキズキズキズキ
頭が痛んでるのか心が痛んでるのかわからない。
いやきっとどっちもだ。
『寝かせて、寝かせてくれ。明日にはきっと元通りだからっ』
俺、今変だよ。
何をされてもきっと怒る。
分かってる。変だけど、それも全部自分で治すから。構わないでくれ。
切実に言ってもみんなは退こうとしない。
困惑した顔で立ち尽くすだけ。
俺は無理やりらっだぁの横を通り過ぎる。
パシッと腕を掴まれた。
分かってた。
「話して。おねがい」
『いやだ。』
「頼むから!」
『やめろっ!!』
大きい声に反応してつい語気が強くなる。
ポロポロと涙が溢れる。
泣きたくないのに。
驚いてらっだぁが手を離す。
今だ。と部屋を出ようとした瞬間ぐいっと引っ張られ目の前が暗くなった。
ローレンに抱きしめられている。そう分かった瞬間反射で突き飛ばそうとするがびくともしない。
『離せよっ!』
弱さを隠すように大きな声を出しても自分は守れない。
『やめろっ、たのむ、明日には大丈夫になるからっ!自分でどうにかするからっ!!だから』
「がんばったね」
俺の大きく鋭い声を遮ったのは俺に勝る大きな声じゃない。
小さくて優しい一言だった。
でも俺には強すぎる一言だった。
ガクッと体の力が抜けて涙が止まらなくなった。
やめてって戯言のように言いながら大人しく腕に抱かれる。
『やだっ、ろれさん、、、っ』
「うん。頑張ったね。頑張った。」
『ぅゔ〜、ッ』
褒められたかった。ゆぐどらしるのみんなに。
俺の大切なみんなに。大好きなみんなに。
ただそれだけだったんだよ。
少しでも休んだらダメだって思ったんだ。
頑張りすぎなくらいがちょうどいいって。
有能じゃない俺に価値はないと思った。
なにしても褒めてくれないから、命かけて死にそうになるまで働くのが正義だと勘違いしたんだよ。
ローレンの腕の中は心地が良くて抱きしめられるだけで痛む頭を無視することが出来た。
部屋にはカチッカチッと時計の秒針が進む音だけが鳴り響いている。
みんなが静かにしようと気を張ってるのを肌で感じた。
何分もそうしていた。
ローレンの肩に顔を埋めてゆっくりと深呼吸をする。
感情が落ち着いてきてやっとローレンから離れることができた。
「ぐちーつ、毎日辛そうに見えた。もちろん楽しそうにしてる時もいっぱいあったよ!でもそれ以上に辛そうだった。見てられなくて、俺、、、」
ぺいんとが震える声で言う。
あの時俺を引き止めようとしたのも俺を心配していたから。
感受性が豊かで俺の辛そうな顔でぺいんと自身も辛くなっちゃうんだろうな。
涙をたっぷり溜めた目が悲しそうに揺れた。
「ぜってえ寝てないのに寝たって嘘つくのやめろ!嫌だった。距離置かれてるみたいで。」
ローレンが俺の肩に手を置いて言った。
ローレンの本音を聞くのって初めてだよね。
いつだって一歩下がって本音を隠すように冗談を言ったりする君だから。
「頑張りすぎだよ。お前。」
いつもよりも感情がこもった声でらっだぁが言う。
お前が大切だって視線が照れ臭くて目を逸らした。
やっとわかったんだ。
俺ってバカだからこうでもしないと分からないんだ。
「頑張りすぎ」って言うのは俺への愛情表現だったんだね。
分かったよ。
でも俺はバカだからさ、これまでの生活変えることはできない。
『俺、明日も朝5時に起きる。それでボロボロになって帰ってくる。』
ふわっちが顔を顰めた。
「朝5時、、、?」
ふわっちに朝5時に起きるという概念はないみたい。
ぺいんとがそこじゃないだろってちょっとふわっちを小突いた。
俺はそんなやりとりに少し笑う。
ローレンとらっだぁとしすこは顔を顰めたまんま。
『明日も明後日も来週も頑張りすぎるけどね、それを許してほしい。』
朝早くにホットドッグを買いに来るなるせ。
痛さを必死に耐えながら倒れるととみ。
それらを無視することは俺にはできない。
『辛そうな顔してたら、、、いやしてなくても!頑張ったねって褒めて抱きしめてくれたらそれでいい。』
本当にそれだけでいいんだ。
だって今抱きしめられただけで疲れなんて吹き飛んじゃったんだもん。
不思議だ。魔法みたいだよ。
『でもそれは、お前たちじゃないとダメだから。』
辛かったって。痛かったって。
休み方が分からなかったって。
有能な俺じゃないとダメだと思ってたって。
そんな本音を打ち明けられるほどまだ強くない。
弱さを見せれるほど自分の弱さを許せてない。
でも抱きしめられた時俺は本音を話しているから。
それが言葉じゃなくても分かってくれるでしょ?
「本当に辛そうな時は本気で止めてみてもいい?」
らっだぁが優しい笑顔でそう言った。
『止まるといいね』
俺も笑顔で返す。
気絶するように眠るよりも抱きしめられて眠る方が幸せってことに気づいたよ。
ピピピピ
小さめの音で鳴った朝5時を知らせるアラーム。
みんなを起こさないように急いで止めた。
小さな音にも気を遣いながらすり足で洗面所まで向かう。
昨日一生分くらいの涙を流したせいで目が腫れている。
応急処置〜と思いながら保冷剤を目にあてる。
効果があるといいけど。
にしても今日も寒そうだ。
今日は流石にコートを着ていこう。
でも手袋はまだいいかな。
缶コーヒーの温かさをまだ感じていたいから。
音を立てないように身支度を進める。
いつもと変わらないルーティン。いつもと変わらない朝なのに今日は気分がいい。
身支度が終わって外に出る頃には目の腫れも引いていた。
アジトのドアを開けるとヒュウと冷たい風が俺を包み込む。
『さっむ!』
つい声が出た。
あ、コートを着ていこうと思ったのに忘れてきた。
まあいいか。
玄関に置いてある上着を借りることにした。
昨日判明したけどこれはローレンの上着。
勝手に借りることをどうか許してください〜
ガレージに向かい車に乗り込む。
一番に暖房をつけた。
車が温まるのを待たずに俺はアクセルを踏み込んだ。
ソーセージとパティが焼けるいい匂いが俺の鼻に届くか届かないかの位置で空に溶け込んでいく。
一番最初に作ったホットドッグは俺の胃の中に入った。
今日も静かな朝に俺は重厚感のあるエンジン音を待つ。
早めにきちゃったからまだ来ないかもな。
レギオンの塀に腰掛けてのんびりと煙が昇っていく様を見つめる。
はーっと息を吐いてみるけどまだ白くない。
暇だなーってスマホを見ていたら遠くから俺が待っていたエンジン音が聞こえた。
音のする方を向くと見慣れたパトカーがこちらに向かって走ってきている。
「ぐちつぼー!」
空いた窓から名前を呼ぶ声と一緒に缶コーヒーが飛んでくる。
また投げたな!
パシッと見事に掴む。
手の中に収まった缶コーヒーは心地よく温かい。
「こんな時間から頑張りすぎだぜ!」
昨日と同じようなセリフを言いながら車から出てくるなるせ。
俺はデジャブを感じて笑いながら言う。
『ありがと』
「何がありがとうだよ」
眉を顰めてなるせは言う。
それが愛情表現だって知ってるよ。
『そんなことよりるせさん!今日はスペシャルサービスがあるぜ。』
俺は缶コーヒーを置いてなるせに近づく。
そのまま俺より小さな体をギュッと抱きしめた。
背中越しにライフルと目があう。
「はっ?」
『頑張ったね』
最初は強張っていた体の力がどんどん抜けていく。
3分くらい抱きしめていたら背中に腕が回された。
抱きしめ返してくれている。
俺の胸の中でなるせが小さく頷く。
そうだよな。俺たち頑張ってるよ。
『俺昨日気づいたんだ。ハグって魔法なんだなーって。すごく癒される。』
なるせはまた小さく頷いてから優しく俺を押し返した。
目があう。
きっとお互いに顔が赤い。
「じゃあお前は魔法使いか。」
『えっ?いや、まあそうだけど、、、』
小学生のような魔法使いという響きに照れ臭くなる。
そんなつもりで言ったんじゃないんだけどな。
「その魔法、毎日俺にかけてよ」
なるせがキザに言う。
俺はびっくりしてなるせを見る。
充血した目と濃い隈が限界を語っている。
『、、、いいぜ』
恥ずかしくて目を逸らして言った。
この魔法の効果は俺が一番知っているから。
頑張りすぎちゃう君には一番の特効薬。
冷たい空気の空にふんわり、コーヒーとホットドッグが香った。
悴んだ手にわざとらしくはーっと息を吹きかけた。
この動作、恋する乙女みたいでちょっと好きだ。
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