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次の日、アリスが話したいことがあるとのことで急遽集まった。
「……それでアリス、聞きたいこととはなんだ?」
そう話を切り出したのはレイルだった。
パトラス侯爵家のレイルの自室。
集まっている面々は僕、レイル、アリスの3人。
乙女ゲームの内容のためこの3人だ。
ギルメッシュはこれから起こる貴族学院の夜会に向けての騎士たちとの打ち合わせ。
クルーガーは事件後、麻薬が入ってきたルートを調査をしている。
乙女ゲームに関してアリスが話しておきたいことがあるということで集まった。
よほど何か重要なことなのか。
「……すいませんっす。逆ハーレムルートに関しては記憶が薄れてきていまして、さっきちょうど思い出したんです」
アリスはそう前置きをしたあと、深刻な顔になる。
「ライバル令嬢に関してっす」
ああ、そういえばいるんだっけ。
アリスから聞かされて思い出したものの、それがなんの関係があるのか分からなかった。
「乙ファン」にはライバル令嬢が存在する。僕でいうところのアレイシアのような存在だ。
乙女ゲームには主人公を引き立たせるための当て馬が必ず用意される。
攻略対象と恋を育むませる途中でさまざまな妨害要素をいれることでユーザーを感動させる。ざまぁ要素を入れるなど。
あげたらキリがないほど要素を入れられる。
だが、乙女ゲームによくあるトゥルーエンドだが蓋を開ければ当て馬キャラは可哀想な存在といえよう。
主人公が現れたことで婚約者を奪われる。
家の利害で結んだ婚約なのに、婚約破棄をされては傷つくのはライバル令嬢。
ライバル令嬢はその後は再度婚約をするのは困難であり、いわくつきみたいな扱いをされてしまう。
ひどい時では勘当されて田舎に追放だなんてこともありえる。
うん、よく考えると乙女ゲームって現実世界でやろうとすると人の人生をぶち壊す最低のような気がしてきた。
……だが、何故アリスが気にするのかが分からない。
僕が転生したこの世界ではそんなことあり得ないのだから。
乙女ゲームの攻略対象である人物で僕以外婚約者はいない。
僕が影響を与えたせいで派閥関係に罅が入ったせいだろう。
それに、アドリアンとオーラスが婚約するはずであった令嬢はすでに別の男と婚約している。
「実はですね。オーラス様とアドリアン殿下の婚約者になるはずであった方々には少々問題がおきまして……乙ファンの一ファンとして解決しておきたいんすよ」
「今やる必要はないのではないか?夜会も近い。全てを解決してからでいいのでは?」
「いや、それだと手遅れになってしまう可能性が……」
「……詳しく話してくれ」
「……わかりました」
これ以上問題を増やしたくないレイルと申し訳なさそうにするアリス。
アリスはゆっくりと語り始めたが、内容は安易のものとは言えなかった。
アドリアンの婚約者シンファ=クラクハント公爵令嬢は原因不明の病にかかってしまうこと。
シンファが学院を卒業した矢先に母親は病に患い衰弱し、死に至る。
オーラスの婚約者。リンス=ラウト伯爵令嬢は父親がオーラス帝国の悪徳貴族に唆され悪事に加担をしてしまう。
結果は未然に悪事がバレてしまい爵位を剥奪されてしまうというもの。
リンスの件はどうにかなるかもしれないけど、シンファの件は難しい気がするが。
「アリス、原因不明の病では対策のしようがない気がするんだけど……」
「脚気なんでビタミンB1とればいいだけっす」
「……え?」
指摘するとアリスは人差し指を立てながら答えた。
「シンファ=クラクハントは豚肉を好まないので、別のもの……そうですねぇ。例えば豆類を取れば解決っすね。後は、ほうれん草とかも効果ありますね」
脚気とはビタミンBの欠乏が原因で手足のしびれやむくみから始まり、 最終的には末梢神経の麻痺や心臓の衰弱に陥る病だ。
現代日本ではほとんどかかることはない。
まぁ、日常的にビタミンB1は摂取されてるしな。
「なるほど。乙女ゲーム知識で知っていたということか」
「……はいっす。ただ、思い出すのが遅くなってしまってすいません」
申し訳そうに謝罪するアリス。そんな彼女に対しレイルは顎に手をよせ思考する。
「……問題ない。では、対策を講じていこうか」
レイルが問題ないと判断したなら平気だな。
少し話した後方針がまとまった。
計画と同時進行で行う。これも疾走解決に促すそうだ。
リンスの件はレイルが後ろから手を回して解決する。
そしてシンファに関しては。
「アレイシア嬢に頼めないだろうか?交流はあるのだろう」
アレイシアはシンファ=クラクハント公爵令嬢とは顔見知りだ。
同じ公爵家同士の付き合いでお茶会を何度もしていた。僕も顔を合わせたことも数度ある。
アレイシアに頼むのも「絵空事と受け取られる可能性がある。それとなく促してもらった方がいい」とのことだ。
クラクハント公爵家の夫人の体調が優れない事は社交界で噂されている。
そのことで心配で耳に入れて欲しい情報があると、誘えばお茶会の機会を設けられると判断されてのこと。
アレイシアに出来るのだろうか?
その懸念だけが残ったのだった。