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「お前は贄になれ」
そう言われた瞬間、紫苑も馨も波久礼、幽ですらもガッツポーズをして叫ぶところだった。
日が傾いてきた夕方、贄に選ばれた四人は見送りもなく家を追い出されて山道を歩かされていた。
彼らからしたら正式に堂々と家を出ることができるので嬉々としているが。
もちろんまた彼に会えるかもという思いもあるけれども。
山道を登っていけば鳥居が続く石段が出てきた。
その奥にはひっそりと建っている廃れた境内が存在した、本当に神社があることも驚きだったがあまりの廃れ具合に本当に神がここにいるのかと不安になった。
「また…生贄の子達かい?」
鳥の鳴き声も聞こえないほどにシンとした森に四人の誰でもない声が響いた。
「もうそんな時期なのか…」
「俺に生贄なんて要らないから、帰りな。待っている人が居るならなおのこと絶対帰れ」
その声は遥か昔に聞いたはずなのに耳に残っていた声と重なった。
あの優しい声と。
「待ってる人が居ないなら…境内に僅かだけど金目の物もあるだろうから好きに持っていけ」
顔を上げて上を見れば、長い石段の最上に紺色の髪を括った彼が居た。その姿は記憶の中の姿よりも細く弱々しくかった。
寒いのか、夏だというのに羽織りに腕を通し襟元を押さえていた。
「日が落ちる前に早く逃げるか、帰えりなさい」
突き放すような言い方で酷く優しいことを言う。長年想っていた人は何一つ変わっていなかった。
「あ、会いたかったッ!」
紫苑は今までの疲労など存在していなかったかのように勢いよく石段を駆け上がり、その肢体に思い切り抱きついた。
千鳥足になりながらも紫苑をちゃんと抱き留める。
「漸く、漸く会えた!」
「ずっと探してたんだぞ…」
「ゲホッ…再開できたことを嬉しく思う…」
全方向からの包容を受けながらも未だ誰かわかっていないように呆然としている。
けれども夕日はもう半分以上山陰に隠れている、暗くなればこの周囲は魔物が出て来やすくなる。
帰りそうもない四人組をとりあえず安全な場所に向かわせるしかないから、抱きついている背中を数回叩いた。
「境内に案内する」
「話はそこで聞くから…一旦ついてこい」
烏も上空を飛ぶことがない山に影が徐々に伸びてくる、四人は嬉しそうに後ろをついてきている。
彼らが誰なのか未だ思い出せはしないけれど、そういえば何年か前に似た瞳と髪色の少年たちを見たことがあるような気がすると過去の記憶を遡りながら境内へと進んだ。
コメント
4件

ガッツポーズしそうになる皆んな可愛いすぎる! 今回もすごく面白かったです! 次回も楽しみに待ってます!
そらガッツポーズもしたくなるよっ!! また会えて良かったねぇ😭 四季くんなりの優しさが染みる🥺🥺 続き楽しみ!!!