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リクエスト

1 - 誓う

♥

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2024年06月03日

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久しぶりさのじんです!


そして今回は初リクエストです。

画像

本当にありがとうございます。


リクエストいただいたものは思いついたものから消化していくので、気長にお待ちください。。


今回なぜかかなり苦戦してぐちゃぐちゃになってしまって、リクエストにもちゃんと応えられていない気がするので、いつかどこかでリベンジするかもしれません。



吉田さん、いつも笑っていてほしいという気持ちと同じくらいいつも泣いていてほしいという気持ちがある。泣き顔が美麗。














「ただいまぁ」



玄関で響いた仁人の声に、すぐに駆け寄る 。

同棲をはじめてから、俺の方が帰りが早い日はいつもやるので、仁人からは大型犬といつもからかわれる。



「じんちゃんおかえり!」


「ん、ただいま」



あれ、今日はなんか塩らしい。


…と思ったら。


上目遣いに例のあの小鳥口。



「…ぅぇ、」



どこか間抜けでかわいい顔に数秒間たっぷりと見つめられて呆気に取られていると、するっと俺の横を通り抜けて洗面所へ行ってしまった。


うわ今の、ちゅーしときゃよかったな……。


なかなか突発的な行動を躊躇ってしまうのは自分の悪いところだと自覚している。


やらない後悔よりやった後悔、のスタンスが合っていると自分でも思うのに。


意識的か無意識的かわからないけれど、経験上あのあざとい口をやるのは、ツンデレが激しい仁人の甘えたいというアピールだ。


ちなみに、前にされたときは俺の部屋着の裾を掴んでどこへ行くにも引っ付いてきて、危うくトイレまでも同行されるところだった。


だからこそ今回、俺からのなにかしらのアクションを望んでいた可能性も少なからずあり、ちょっとだけ後悔する。


ワンテンポ遅れてソファに戻り横目で仁人を追いながらスマホを見て待っていたところ、案の定、隣に座って肩に頭を凭れてきた。


そんな、高校生のデートじゃないんだから。


かまってかまってのときもあれば変にかまうと機嫌を損ねるときもあるので下手に動けない。


とりあえず肩を動かさないようにスマホを触っていると、スマホをとりあげられた。


それをテーブルの上に伏せて置いたかと思えば脚が重くなってびっくりする。


視線を移せばそこでは、睨んでも全く怖くない潤んだ瞳が「スマホなんかより俺を見ろ」と訴えていた。


自ら膝枕なんて…付き合ってからのこの数年を含め出逢ってから一度もされたことない。


俺が駄々を捏ねて渋々やらせたことはまあ、なくはないけど……。


歓喜に暴れる胸をひた隠し、機嫌を窺うように頬に手を添えると擦り寄ってきて、「ん…」と小さく漏れた声をこの耳はちゃんと拾い上げた。



「じんと、どうした…?」



そう尋ねても返事はなく、その代わり、と言わんばかりに手首を引かれて、必然的に近づいた唇と唇が音を伴わずに触れた。


でも次の瞬間、不意打ちに狼狽える俺と同様に首から耳の先まで真っ赤に染めた仁人は、恥ずかしがるようにそっぽを向く。


照れるならやらなきゃいいのに笑。


かわいくていじらしくて仕方ない。


今日はイチャイチャしたいというのは、こんなにされたら明らかだった。


そんなお姫様の御要望に応えてあげるとするか。


寝転がった仁人の両脇の下に手を入れて上体を引き上げ、お姫様抱っこのまま座ったみたいな姿勢になると、すぐに寄りかかってきた。


肩に顎を乗せられ流れるように頭を支えれば、心做しかリラックスしたような気がする。



「なんかあったの、?じんちゃん」



さっきと同じ問いかけ。


やっぱりまだ言葉にできないところで燻っているのか、返事はない。


それでも、いつもとこんなにも違うということは、何かしらの変化はあったと考えるのが妥当だろう。


自分に少しでもできることがあるのなら、仁人を癒してあげたい。


そんな気持ちで愛しい耳朶に優しく口付ければ肩が小刻みに揺れはじめ、もしや、と思っていると、呻くような声とともにしゃくり上げながら泣き出した。



「ぅ……ひっ、ぁ、うぅ、ッ、………っはぁ、」


「ちょ、じんちゃんどぉしたの〜、もう、大丈夫、大丈夫、」


「うぁ、あ、ッひ、ぁ、」



泣きたくて泣いてるんじゃないのも、泣き止もうとがんばってるのも、俺に迷惑かけてるとか考えてるのも、全部全部、痛いほどわかる。伝わる。



「大丈夫、ゆっくりでいいよ、」



呼吸のテンポを教えるように背中を軽く叩いてやると、やっと落ち着いてきたらしい仁人が話しはじめた。



「……っ、今日、ドラマ…の、ッ、撮影だった、じゃん、?」


「うん、」


「おれ、いっぱいミス、して…ごめんなさいして、のに…ッ、それでも、おこられて、っなんか、関係ないこと、も、言われて……、も、お芝居、つらい、」



これはまた運が悪い。


演技仕事、とくにドラマの現場というのは上に急かされながらの撮影も少なくなく、タイミングや面子によってはピリピリしていることもある。


俺はグループより先にドラマに出たくらいの歴はあり、幸か不幸か慣れてしまったけれど、真面目でメンタルの弱い仁人には酷な現場だったろう。


仲良くなった監督の現場はむしろ珍しいくらいアットホームな暖かい現場だったことも考えると、尚更だ。



「そっか、おつかれさまだ…………でもじんとはごめんなさいしたんでしょ、?ね。スタッフさんも疲れてたのかもしれないし、じんとはちゃんとがんばったよ。えらいわ、じんちゃん」


「、っでも、はやとはいっつも、俺なんかよりずっとお芝居がんばってて、なのに弱音吐かないし、」


「あー!俺なんかって言わない!!俺のだいすきで自慢で、毎日めちゃくちゃがんばって一生懸命生きてる恋人のこと悪く言わないで。それに俺は、最年長の俺がやるはずの仕事をじんとくんが代わりにこなしてくれて…たくさん迷惑かけてるけど…ッ、その分グループに還元しなきゃって、がんばれる。じんとくんがっ、リーダーでいてくれるからだよ」



合宿でも伝えた、心の底からの本心。



「……ぅ、っひ、うぁ、」


「っあー、じんとのせいで俺も泣いちゃったじゃん!!」



俺が男らしく仁人のこと慰めてやろうとか思ってたのに、もう。



「ほら、じんちゃん、お顔見せて?」


「ん、」



目を真っ赤に腫らして、垂れそうな鼻水を鼻をすすってなんとか耐えている姿はぐちゃぐちゃで、お世辞にもアイドルとは言い難い。



「え、ちょ、じんちゃん笑、ちーんしよっか笑」



ティッシュを当てて頭を支えてあげれば、容赦なく鼻をかみやがった。しかも悪戯が成功した子どもみたいに笑って。


こいつはもう。


出会った頃はまだ俺にも人見知りして猫被ってたのに、いつの間にか甘やかされ慣れた飼い猫ちゃんになっちゃったんだから。


そのまま目元も軽くだけど拭いてあげて、泣いたのは短い時間なのにもう既に二重が薄くなりかけている瞼に、明日がオフでよかったと思う。


愛しさに親指の腹で目尻を撫でていると、その手を取って恋人繋ぎにされ、手の甲に頬擦り。


またその口。


瞬間、すきが溢れる。


懲りないその口にも、俺に縋るようなその表情をつくる仁人自身にも。


今度は逃さずに、キスをした。


満足そうに微笑んで、それから俺の手をふにふにといじっている姿に、母性を引き出される。



「はやと…」


「ん、?」


「ありがと、おれ、がんばってみる」


「……!、うん。じんとならできる、とか無責任なこと言えないけどさ、でもじんちゃんがどんなに悩んでがんばってるか、俺はわかってるつもりだから。だから、辛かったらちゃんと俺のとこおいで。俺のとこ来て、いっぱいイチャイチャして、いっぱい……笑、いっぱい、えろいことしよ、?笑」


「………ふはっ、お前、最悪、笑」



笑ったあとの上目遣いは満更でもなくて、いつか来るその日がたのしみになった。


気付かぬうちに手首を掴まれて、拍手させられたりほっぺたを挟まれたり、弄ばれる。


こんなこと小学生の甥っ子姪っ子しかやらんて。


顔の左右に俺の手を持ってきて…



「はい、いくよ?せーのっ、にゃんにゃんぷぅっ」


「っふは、にゃんにゃんぷぅっ!……や、ええて笑」


「んへっ、はやと、かわいい」



そんな、心から幸せですみたいなへにゃへにゃの顔されたら…。


目に見えるほど幸せオーラがだだ漏れの仁人に仕返ししてやりたくて片手で両頬を潰す。


ぶちゃいくになったところで、くりくりの目や血色のいい唇のおかげでそこらの女の子よりずっとかわいい。


いやいやと振りほどこうと駄々っ子のように頭を振る仕草がかわいくて、何分も何時間も見ていられるけど、機嫌を損ねる前にちゅっとキスをして手を離した。



「ごめんごめん、笑」



ふわふわの髪の毛に触れてあやしてやると気持ちよさそうに目を細める姿は、本当に猫にでもなってしまったかのようで、喉と顎の境界を撫でればゴロゴロと喉を鳴らす代わりに感じたような声を漏らした。


そのまま顎を捉えてこちらへ向ける。


重なった視線が運ぶのは、言葉にできない、ふたりにしか通じない愛情。



「ねえ、はやと、…………だいすきっ」



両手両足を絡められ、いわゆるだいしゅきホールドの不意打ちを見事にくらう。



「?!、お、れも、すきだよ…?」


「ずっと…?」



こちらを覗き込む色素の薄い茶目は悪戯に歪むのと裏腹に、確かな不安も孕んでいた。


グループを代表して、はたまた俳優として、俺が仁人よりも多くの人と共演するので捨てられるのが怖い、と仁人は前に零したことがある。


その日も仁人は今日のように弱っていて、だからこそいつもは伝えてくれない本心を知ることができた。


いつも俺を信頼して送り出してくれるけど、その裏では今も、拭いきれぬ不安があるのかもしれない。


ひと回り小さな左手を取る。


これが、少しでも安心してもらうために絞り出した策だ。



「いい…?」


「っぅえ、なにが…」



戯れの延長だと思ってただ次を待つ、その薬指を咥えて、思い切り根元を噛む。



「…い゛っ?!」



目をぎゅっと瞑って痛みに耐えるその表情に少し胸が痛むが、感覚に深く刻み込みたいと思ってのことなので仕方がない。


歯型に滲む血を舐め取ってそこにもキスを落とす。



「ずっと、すきだよ」



その指を選んだ意味に気がついたのか、目を見開いて信じられないとでも言うような表情は一転し、口をきゅっと噤むと俺の手を取り出した。



「はやとは、撮影とか大丈夫?てか俺いいって言ってないんだけど」


「っはは、いいよ、がっつりやって」



実際不都合はなにもないけれど、あったところで俺は仁人を甘やかしてしまうのだと思う。


俺の真似をして歯型をつけようとする姿が唆らないと言えば嘘だ。


大きく開かれた口に指が含まれるとそこには熱い息がかかるし、俺の長い指を根元まで入れるのは苦しいらしく、嘔吐きそうになっている姿は嫌でも口淫を思わせる。


指先は舌と上顎に触れていて、たぶん俺がもう少し押し込めば本当に嘔吐いてしまうだろう。


上下の歯列が位置を確かめるように関節に触れて、意を決したように目を閉じたと思えば痛みが走る。



「…っ゛!」



血が滲むほどではないが確実に跡は残り、引き抜かれた先には銀糸が引いている。


交わされた契りの真似事の次に2人が考えることは同じだった。


惹かれ合うように手が近づいて、指を組んでしっかりと握り込む。


紅く並んだリングは、指輪なんかよりずっときつく2人を縛りつけた。








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