⚠︎ 空白有 . 死 ・ 血流表現 、 ぱろ 有 .
ぼやけた視界が 段々と 鮮明に周りを映し出す 。
むくりと 上半身を起こせば 、 身体がきしむ感覚がした 。 寝坊でもするくらいに 眠ってしまったのだろうか ? 久しく身体を動かしていなかったかのような その感覚に 僅かに違和感を覚えた 。
俺は 昨日 、 何をしていたんだったか 。 思い出そうにも 記憶にぼんやりと膜がかかるようで 、 あまりよくない夢を見ていたこと以外に 頭に浮かぶことは特になかった 。
そんな中に ふとある記憶が浮上してくる 。 らっだぁだ 。 彼は俺に向かって 楽しげに何かを喋っている 。 … 嗚呼 、 そうだった 。 らっだぁは 街にアイスを買いに行ったんだった 。 ここ最近の やけに気温が高かった日々に 疲弊していた俺たちに サプライズをするんだと 意気込んでいた 。 サプライズならなんで俺には ばらしたんだよ 、 俺もわくわく してぇよ 。 まあそれも 、 らっだぁのサプライズが終わってから 言えば良い文句だし 、 きっと彼が皆の為に買ってくれたアイス 、 というだけで 俺は怒る気も失せてしまうだろう 。
らっだぁは 確か 、 いつも通りの 笑顔を浮かべて 、 いつも通りの 服装で出かけていた 。 こんな暑い日に 長袖 、 青いニット帽に 赤いマフラー … 。 ただでさえ わかりやすいのに 、 そんな格好をしていたら 街の中でも よく目立つだろうに ──────
視界に 赤の華が咲く 。
脳裏に 過ぎる映像は 、 誰かに 必死に 手を伸ばす様 。
俺は今 、 何を考えて いたんだっけ ?
少しの間 思考が停止する 。 数秒待って ようやく もう一度仕事を始めたらしい頭に 浮かんだのは らっだぁの顔 。
嗚呼 そうだった 、 らっだぁは アイスを 買いに 街へ行ったんだ 。 ということは 、、、 あれ ? らっだぁが アイスを買いに行ったあと 、 俺は 寝こけてしまったんだっけ …… ??
かちゃりと 扉の開く音 、 其方に目を向ければ 入ってきたのは 原人だ 。 やけに暗い目つきをして 俺の方を見て 、
「 え 、…… ぐっ 、 ち ? ぐっち 、 おきてる 、 ? 」
「 は ? 俺はこの通り 起きてるだろうが 。 」
珍しく 目をまん丸に 見開いたかと思えば 呆然とした顔つきで そんなことを口走るものだから 、 全く訳がわからなく なってしまった 。 取り敢えず ほら 、 と 両手を 広げてみせれば 、 また身体がきしむ感覚がして 呻いた 。
そんな俺を 矢張り呆然としながら 見ていた 原人は 、 僅かに震えた声で 、 呟くように 俺に言う 。
「 … 何 言ってんだ 。 ぐっち お前 、 ぐっちが 意識無くしてから 今日で丸々 二週間 。 二週間 、 ぐっちは ずっと 寝てたの 。 」
「 ……… えっ 、 」
事情は わからないが 、 俺は 二週間もの間 寝てしまっていたらしい 。 二週間 マジ ??? そんなこと 有り得んのか 。
……… 待て 。 らっだぁが アイスを 買いに行ったのが 二週間前なら 、 俺はアイスを 食いっぱぐれていることになる 。
「 とにかく 、 まずは はか ─── 」
「 原人 ! 」
「 、 何だよ 」
「 アイスってまだ 残ってるか ?! 」
「 アイスぅ ?? こんそめと焼きパンが 買いに行ったやつなら まだあるはずだけど 」
「 違う 、 それじゃなくて 。 らっだぁが 街にいった時 あるだろ 、 あん時に アイツ アイス買ってる筈なの 、 」
「 ぐっち …… ? 」
「 らっだぁが 買ってくるって 絶対超絶 美味いだろ ? まさか 誰か俺の分まで 食べやがったか ?? 」
「 、 ちょ ぐっち 、 ちょっと いい 、 ? 」
アイスへの熱い思いを 語っていれば 、 原人に 無理矢理話を止められる 。 如何したのか 、 まさか原人が 食ったか ? そんなことを 考えながら 原人を見れば 、
原人は 眉を寄せ 、 今にも 泣き出しそうな 、 そんな様子で 。
思わず 口を閉じた俺に 、 ゆっくり 言葉が紡がれた 。
「 ぐっち 。 らっだぁは もう ──────
───────── 死んでるでしょ ? 」
「 ……… は 、 ?? 」
とある光景が フラッシュバックする 。
俺は必死に 手を伸ばした 、 俺の目の前に立つ らっだぁの身体を 此方に 引き寄せようとしていた 。 だが 、 それは叶わず 、 俺の目の前で 鮮血が舞う 。 誰の血か なんて 言うまでもなかった 。
違う 、 そんな訳ない 。 らっだぁが 、 死んでるだなんて 、 そんな訳 … 。
視界の端に 、 赤いマフラーが揺れる 。
ああ 、 やっぱり そんな訳 なかったじゃないか 。 今はもう 八月だってのに 、 エイプリルフールも 程々に してくれ 。
原人の後ろにいる その人影に向かって 、 俺は笑みを浮かべて 軽く手を振った 。
「 らっだぁ 、 俺 めっちゃ 寝てたらしいな 。 」
「 ……… 」
「 … らっだぁ ? 」
「 、 " ぐちさん " 、 俺は 、 たらこ だよ … ? 」
「 …… ぁ 、 」
確かに 、 よく見てみれば 、 それは らっだぁなんかじゃなかった 。 共通点は 赤いマフラー 、 それだけで 、 原人の後ろにいたのは たらこだった 。
じゃあ 、 じゃあ らっだぁは何処に 行ったんだ 。
死んだ 、 そんな 、 そんな訳 ないのに 。 あの らっだぁが 、 居ないだなんて 。
「 …… ぐっち 、 現実 見ろ 。 」
原人の 冷たくて 、 それでいて寂しげな声が 響いた 。
────── 曰く 、 街に逃げ延びた観光客が 居たんだと 。 緑君からもたらされた その情報が示す 隠れ家と思わしき場所は 、 らっだぁが行くと言っていた 店の直ぐ近くで 。
アイツだって 護身術ぐらい心得ているし 、 自らも戦場に立ち 仲間を先導することが あるくらいだ 、 戦えない訳ではない 。
然し 、 らっだぁは その日 、 丸腰で 出かけていた 。 すぐ帰ってくるから 大丈夫と 、 何度 武器の一つや二つは持っていけと言っても 聞かなかった 。
らっだぁの サプライズ計画を知っていたのは 俺だけで 、 緑君から その話を聞いて 慌てて 軍部の建物を 飛び出した 。
だが 、 結果的に 俺の行動は全て 悪い方向へと 傾いた 。
武器を持たない彼に 無理矢理でも持たせるべきであった 。 少々 … いや 、 大分 嫌がっていたとしても 、 持たせなければいけなかった 。
俺が到着した時 、 らっだぁは 拳銃持ちに 狙われていた 。 そして 状況把握に 意識を向けていた 武器持ちの俺は その残る一人に 気が付けず 、 反対に らっだぁは 気が付いていた 。
武器持ちから 処理しようと 思ったのだろう 、 何も気が付いていない俺の 脳天に向けて放たれた弾丸を 受け止めたのは 、 俺が 守ろうとした らっだぁだ 。
初めの一発は 左肩に 、 俺がようやく気がついて 彼を引かせようと伸ばした手は 届くに叶わず 、 二発目は 心臓を撃ち抜いた 。
その後 俺が放った 弾丸によって らっだぁを撃った観光客は あっさりと絶命した 。
ただでさえ 血が苦手で あまりに衝撃的なものを 見せられた俺は そのまま意識が 遠のいた 。 既に倒れていたらっだぁの手が 俺の頭に 伸びて 、 震える手のまま 帽子を 外し 、 弱く頭を撫でる 。 アイツは自分が 死ぬ間際だってのに 、 大丈夫 、 だとか よくやった 、 だとか そんなことばかり 呟いていた 。
何がよくやっただ 、 俺がしたことは らっだぁの邪魔以外 何もなかったと言うのに 。
俺はそのまま 意識を失い 、 二週間もの間 寝込んでいた 。
視界が 歪む 、 ぼろぼろと 涙が 零れ落ちていく 。
背中に 当てられたのは 、 頭を撫でてくれるのは どちらの手だろうか 。
否 、 どちらだって 変わりはないのだ 。 この手は らっだぁの手じゃない 。
「 … ぐっち 、 落ち着いたら 朝ご飯 たべよっか 。 」
「 …… うん 、 」
" おはよう ぐちつぼ 。 ちゃんと 起きれて 偉いな 。 "
────── 背中にもうひとつ 、 暖かくて 大きな手が 当たった気がした 。
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