テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ROBLOX
ゆゆゆゆ
481
ゆゆゆゆ
387
10,782
最初は、本当にただの情報交換だった。
新しい脆弱性。
最近流行している侵入手法。
検知回避の研究。
ハッカー同士が知識を共有すること自体は珍しくない。
セブンにとっても、それは仕事の延長線上だった。
相手はそこそこ有名な技術者だった。
腕も立つ。
知識もある。
話していて退屈しない。
ただ、それだけ。
本当に、それだけだった。
⸻
「最近さ」
通話越しの男が笑う。
『君のコード見たけど面白かったよ』
「そうか」
『あの発想は好きだな』
セブンは画面を眺めながら適当に返事をする。
何時間も話していた。
技術の話は尽きない。
それなりに有意義な時間だった。
しかし。
その頃。
別の場所では。
Noliが黙ってその通話ログを見ていた。
一言も発さず。
ただ静かに。
画面を見つめていた。
⸻
翌日。
事件は起きた。
そのハッカーのアカウントが全滅した。
バックアップ消失。
サーバー崩壊。
保管データ消去。
所有していた開発環境まで破壊。
まるで存在そのものを削除するみたいに。
徹底的だった。
容赦がなかった。
技術的にも異常だった。
普通なら不可能なレベルで。
セブンはログを見た瞬間に分かった。
「あいつか」
嫌な予感しかしない。
⸻
その夜。
Noliはいつものように部屋にいた。
ソファに寝転がりながらゲームをしている。
機嫌も良さそうだった。
「Noli」
「んー?」
「お前やっただろ」
沈黙。
ゲームの音だけが流れる。
数秒後。
Noliはコントローラーを置いた。
「何のこと?」
「とぼけるな」
セブンはログを投げる。
証拠は十分だった。
Noliは画面を見て。
そして笑った。
否定もしない。
「綺麗だった?」
「何がだ」
「壊れる瞬間」
セブンは眉間を押さえる。
頭痛がした。
「なんでやった」
「邪魔だったから」
あまりにも自然な口調だった。
まるで机の上のゴミを捨てたと言うみたいに。
「ただそれだけ」
「ただそれだけで潰したのか?」
「うん」
Noliは頷く。
悪びれる様子はない。
「意味が分からん」
「簡単だよ」
Noliは立ち上がる。
ゆっくりと近付いてくる。
その表情から笑みが消えていた。
代わりに現れたのは冷たい顔だった。
普段の大袈裟で騒がしいNoliではない。
本気で機嫌が悪い時の顔。
「君さ」
静かな声。
「最近あいつと話しすぎじゃない?」
「情報交換だ」
「知ってる」
「じゃあ――」
「だから嫌だった」
即答だった。
セブンは言葉を失う。
Noliは続ける。
「面白くなかった」
「何が」
「君が楽しそうだった」
その声には怒りもあった。
苛立ちも。
子供じみた独占欲も。
全部混ざっていた。
「技術の話で盛り上がって」
「新しい発見を共有して」
「笑って」
Noliは目を細める。
「それ、僕の役目だろ」
「役目?」
「そう」
一歩近付く。
「君の隣に立つのは僕だけでいい」
部屋の空気が静まる。
Noliはモニターに映る壊滅したデータを見た。
そして鼻で笑う。
「僕のステージに」
冷たい声だった。
ぞっとするほど。
「あんな大根役者はいらない」
セブンは呆れる。
「お前な……」
「だってそうだろ?」
Noliは肩を竦める。
「技術はあったかもしれない」
「でも君を理解してない」
「君の発想も」
「君の狂気も」
「君の面白さも」
淡々と続ける。
「そんな奴が隣に立てるわけないじゃないか」
セブンは深くため息を吐いた。
怒るべきだった。
実際怒っていた。
勝手なことをした。
被害も出た。
理屈ならいくらでもある。
だが。
目の前のNoliは本気だった。
本気で嫉妬して。
本気で排除した。
それが分かるから余計に厄介だった。
「馬鹿だな」
セブンが言う。
Noliは少しだけ笑う。
「知ってる」
「重症だぞ」
「もっと知ってる」
そして最後に。
いつもの調子で笑った。
「でもさ」
「なんだ」
「君も結局、僕のところに戻ってきた」
セブンは黙る。
Noliは満足そうだった。
まるで勝利宣言みたいに。
「ほらね」
その笑顔を見て。
セブンは再びため息を吐くしかなかった。
昔からそうだった。
Noliは世界中の誰より面倒で。
世界中の誰より厄介で。
そしてなぜか。
完全には切り捨てられない相棒だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!