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「ごきげんよう」

「ア、アンタ、マリア!?」


目の前に現れたのは、1年以上行方不明だったマリア。白いブラウスやネイビーのハイウエストスカートは新品そうだ。髪の毛や体も綺麗。唯一バイオレットサファイアのブローチだけは少し汚れているが、それはマリアが昔から愛用しているモノだからだろう。どうやら無事ではあったようだが、ずっと探していた彼女だ。安堵よりも心配と困惑が勝る。


「い、1年間もどこに行ってたの!? みんな心配してたんだよ!?」

「あらあら、それはご心労でしたわね」

「待って、今みんなに連絡を……」


ハルカがカバンに手を伸ばした。伸ばそうとした。しかし、それは銃声により叶わなかった。


「……マリア? なに、その銃は……?」

「知らないんですか? 拳銃と言うんですわよ」

「そ、それは魔法少女の銃じゃないでしょ。どこでそんなものを「そんなこと、どうでもいいでしょう?。それより、」……なに、よ」


警戒する。マリアが上着から取り出した銃は、魔法少女に変身した時に生成される武器ではなかった。……本物の銃だ。どこで手に入れたのかは分からない。なんでそんなものを使っているのかも分からない。ただ、辺りに自分達以外の人はいなかったけれど、周囲に何かされては困る。それに、ハルカの後ろにはショウ達もいるのだ。仮にケガなんてさせてしまったら。“守れなかった”と後悔することになるだろう。


「ハルカさん。貴方、魔法少女をやめてくださいまし」

「え、何言って」

「ハルカさんだけじゃありませんわ。皆さんにも言っておいてくださいまし。魔法少女になってはいけません、って」


少し前は仲間だったはずだ。一緒に任務に出たこともあった。

なのに、魔法少女をやめろだなんて。

魔法少女じゃないと、あの大きさのサリアルキーに対処出来なくなる。

魔法少女の武器と超人的な身体能力があって、ようやく倒せるような怪物。

ただでさえ、段々とサリアルキーは強くなっているのだ。

いくら常人が訓練をしていようと化学兵器があろうと、倒せるようなものではない。

もしも魔法少女をやめなんてしたら、世界は滅びてしまうだろう。


「……まさか、まさかだけど、マリア。アンタ、サリアルキーを操ってる奴らに何か言われたの?」

「半分正解ですわね。……まあ、“魔法少女をやめなさい”っていうのは、わたくしの意思で言ってるだけなんですけれど。これでも皆さんへの優しさなんですわよ?」

「ふざけないで! もう意味分かんないんだけど!? …………でも、アンタがそう言うなら仕方ないよね。その目、覚まさせてあげる!」


そう言ってキーホルダーに手を掛けた。ステッキとなったキーホルダーを天にかかげる。碧い光につつまれた。

「碧い光は眩しく燃える! ハルカ!」

レイピアを手に、マリアに斬りかかろうとする。跳んで、跳ねて、駆けて。しかし、マリアはそれをかわす。汗もかかず、変身もしないまま華麗に避けている。

普通、魔法少女は常人よりも身体能力が高い。例えば、ハルカは数十メートル程度ならジャンプすることが出来る。魔法少女によっては空を自由に飛び回る事が出来る者もいる。だが、それは魔法少女に変身したら、の話。変身せずにハルカの攻撃を余裕でかわせているマリアは異常だった。

「あ! た! れッ!」

「ハルカさん、貴方の太刀筋は荒い。前にも注意しましたわよね?」

「うるさいよ! サリアルキーを産み出す目的は何なの!」

「私に聞くんですか? ……私はただのコマですわ。貴方たちもね」

「どういう意味よ! 」

「この世は駄作っていう意味ですわ!」

また拳銃を手に取る。ハルカは被弾しないように距離を取った。

「……悪いですわね。恨みたければ恨んでくださいまし」

ハルカは距離を取った、はずだった。しかし、マリアは一切躊躇ためらわずに引き金を引く。

パンッ

発砲音。遅れて、パリンと何かが壊れた音がした。

「…………え? ウ、ウソッッ、」

ハルカの変身はとけた。へなへなとへたりこむ。ハルカの手には、粉々に砕けたキーホルダーだったものが。

「これで貴方はもう魔法少女にはなれませんわね」

「そ、そんな、~~~~~~ッッ!!」

「貴方はこの作品から退場。良かったですわね?」

遅れてやってきた痛みに顔をしかめ、荒い息をするハルカには目もくれず、マリアは歩く。……ショウ達がいる方へ。

「あの」

「な、なんだ、、、」

「貴方達は、魔法少女じゃないですわよね?」


沈黙。

苛立ったらしいマリアは地面に向かって1発撃つ。

地面が大きくヒビ割れる。

ショウ達は慌てて首を横に振った。


「ならいいですわ。……貴方達。絶対に魔法少女にはならないでくださいまし」

「どうして……」

「あら……理由なんてどうでもいいでしょう?」

「どうして、こんなこと…… オレの憧れだったのに…………」


マリアは首をかしげる。こんな奴、知り合いにいただろうか。考え込むも思い付かないようだった。


「……お前がショールをくれたあの日から、オレのヒーローだったのに!」

「ショール? …………

あー、そういえば去年にショールを差し上げた男の子がいたような?

そういえば魔法少女のアイテムを持ってる人に

記憶操作は効きづらいんでしたっけ。

まあ、どうでもいいですわね。

勝手に私をヒーローにしないでくださいまし。

私は悪役ですわよ、この愚鈍が」


そう吐き捨て、マリアは姿を消した。


『そっか、そんなことが…… 皆にケガはない?』

「うん、ないよ。だけど、だけどあたしはもう……」

『……まだ、なんとかなるかもしれない。諦めないで』

『…………ごめん、先生』

プツリと電話を切る。マリアはあの後姿を消した。足取りも目的も掴めない。ただ1つ確かなのは、マリアはサリアルキーを操っている人間と繋がりを持っているという事。銃もその人から貰ったのかもしれない。

「マリア、どうして……」

ハルカは自室のベッドに顔を埋めた。ぬれてしまうのも気にせずに。

運良くショウ達は怪我をしていなかった。それだけが救いだった。

なんとか彼らを無事に家に送り届けたが、その後はどうしているのだろう。

泣いていないか、傷ついていないか。

転校してきて早々出来た友人への心配は尽きない。

マリアのショールは学校の部室に飾られていたから、彼ら5人の記憶は消えないだろう。

ショウ達が忘れたいと言うなら、あのショールは本部で預かる、という話に先生との通話でなったけれど、記憶操作も万全ではない。

1度感じた強烈な感情は記憶の根っこに残ったまま。

原因も分からない恐怖に襲われる場合もある。

どうするのが正解なのか判断できない。

のそりと起き上がったハルカは、粉々に砕けたキーホルダーを掴んだ。

そして強く握りしめる。このキーホルダーは、魔法少女のエネルギーその物。これが壊れてしまったら、魔法少女には変身出来ない。

もう、何も出来ないのだ。だからか、何もする気になれない。

自堕落な気分で携帯をいじる。写真フォルダを開く。

そこには幼い頃から家族ぐるみで付き合いがある大親友、ナノカと撮った数々の写真があった。

一緒にお祭りに行った時の写真も、2家族で旅行に行った時の写真も。

とにかく沢山、山ほどにある写真。

ハルカはどんな嫌なことがあっても、これを見ているだけで元気になれた。

だけど、今日はそうもいかなかった。

写真を見るたびに目に涙が浮かぶ。

怖かった、これからの事が。

何が起こってしまうのだろう。

もう誰も守ることが出来ない事が怖い 。

ハルカがいなくなったら、この市のサリアルキーと戦う人員も減ってしまう。


「ナノカ、ごめんね…… あたし、もう、守れない…………」


涙がこぼれる。雫と同時に出た咳が止まらない。息が苦しくなる。


「約束…… 破っちゃって、ゲホッッ、ごめん、ね……」


そう呟いて、ハルカは眠りについた。


いつもと変わらない日々だった。何も変わらない平和な日だった。ただ1つ、違うもの。

「……」

「…………」

「………………」

いつも登校してすぐ騒ぐショウ、カナデ、リコ。

3人は一切喋らずに席に座るとぽけーっとしていた。

クラスメイト達は異常に思うも、どこか恐ろしくて。

それで何も言うことが出来なかった。教室は静寂に包まれる。

その静寂は、担任が来ても破られる事はなかった。

ショウはチラリと隣の席を見た。席は空いていた。

ハルカは今日は休みなのかもしれない。

担任が何も言わなかったため、無断欠席だろう。

昨日が昨日だったのだから仕方がない。

ハルカはとても辛そうにしていたから 。

学校に行くどころか、連絡さえする気になれないのも当然だ。

そして、今日も授業が始まる。


その日は部活動がない日だったため、ショウ達は授業が終わった後すぐに帰ることとなった。

「…………」

「…………」

誰も何も言えないまま通学路を歩く。昨日の事が未だに頭から離れなかった。だが、それも仕方がない事だろう。

突然魔法少女やらサリアルキーやらに会ったかと思えば、

ショウがずっと憧れていたヒーローは悪役だったらしいし、

銃で脅されたりもしたのだ。恐ろしかった。怖かった。

少し頭がボーッとする。

「……ねえ」

「どうした、グリーン」

アヤカは、ケントの乗る車椅子を押す手を止めて言った。

黒いポニーテールが、風でゆれる。

「ハルカちゃんのお見舞いに行こうよ!」

「お見舞いなの?」

「うん、お見舞い。……怖い思いをしたのは、私達だけじゃないからさ」

「なるほど。アヤカくんの言う通りです!

ハルカくんだって、怖かったかもしれません」

「つまり、一緒にいたりだとか、話をしたりするって事ですね?」

さっきまであんなに静かで重い雰囲気が漂っていたのに、すぐに調子を取り戻したかのように笑顔になった。

「それはいい案だ!」

「案なの!」

「ではいくぞ、 お前達!」

ショウは拳を振り上げ、道を1歩進んだ。……すぐに不安そうに後ろを振り返る。

「…………ところで、ハルカの家ってどこだ?」

全員、一斉に固まった。誰も知らなかったのだ。

昨日は色々あって気が付けば帰っていた。だから分からない。

頭脳担当のケントも、情報担当のリコも知らないとなるとお手上げだった。

「申し訳ありません…… 昨日の事が記憶に残っておらず…… 頭脳派失格です…………」

「そういえば、今日はハルカの噂も聞きませんでした。

それはもう不自然なくらい…… 集中してなかったせいですかねぇ」

「ごめんね、考えなしで言っちゃって……」

「アヤカの案は良い感じだったなの」

「フッフッフ、お前達、オレを誰と思っている!」

完全に意気消沈していたメンバーはハッと顔をあげた。

そこには自信満々なショウがいた。ショウはニカッと笑っている。

「オレはヒーロー部部長、ショウだぞ!」

「あ、あの、」

仲間の声を気にせず、声を張って叫ぶ。

「ハルカの家が分からないならば探すのみだ! それがオレ達、ヒーロー部だろう!!」

熱心に叫んでいたショウは、自分の後ろに影が忍び寄っていた事にも、

仲間達が後ろにいるモノに怯えていたことにも気付かなかった。

じゅるっっ、ずる、じゅるるっっ

ずろろ、じゅらぁ、じょるるぅ

異音。液体のようなそれ。それは溶けていた。どろどろだった。黒い黒いカゲだった。人形ひとがたに見えなくもない。

「え」

そのカゲは、ショウを掴む。ショウは恐々と後ろを向いた。

背後には、夕日に照らされた黒いカゲ。

大きな口からはピンク色の口が覗いていた。

「「「「ショウ/ショウくん!」」」」

仲間達は叫んだ。しかしお構いなしに カゲはショウの体を持ち上げた。じっくりと見る。

『……チガウ』

カゲはショウをゆっくり地面におろした。

じんわり、じんわりと地面に溶けていく。そのカゲは消えた。

「ショウ!」

すぐさまカナデがショウに飛び付いた。

ペタペタと体を触る。……どうやら、ショウにケガはなかったようだ 。

安心したようにポケットに手を入れ、キャンディを取り出す。

大きめのそれを口の中に入れる。

ショウにも同じ種類のキャンディを1つわけてやった。

甘い味が口内に広がる。

「ケガはなさそうだね。良かったぁ」

「心配かけて悪かったな」

ショウは少しシュンとした。

また急に怪物、サリアルキーに襲われたのだ。無理もない。

そんな安心しきったショウの後ろに、また影。

「ね~」

ショウの肩がビクリとする。今度は即座に後ろに下がった。自分の後ろにいたのは誰か判別し、最悪逃げられるように。

ショウの後ろにいたのは、ピンクの髪を青いリボンで2つ結びにした少女だった。

少女の浮かべている笑みをどこかで見たことがあるような気がする。

胸元には大きなリボン。

2段のスカートについている小さなリボンはふんわりと揺れていた。

少女は両手で銀のリボンがついたワンドを持っている。

どうやら魔法少女のようだ。

「あ、やっぱり昨日の子だぁ。こんなところでなにしてるの~?」

昨日? 昨日と言えば、色々あったが。

「えぇっと、ナノカはナノカだよ」

そうニコリと笑いかける。……そういえば、そんな人がいたような気もした。

「ねぇ、さっきここにサリアルキー来なかったぁ?」

「えっと、」

「あ! さっきのカゲみたいなのは消えましたよ!!」

「……そっかぁ。ところで、みんなはこんなとこ、なんで来てたの? つーがくろ?」

「それもあるけど、ハルカちゃんが、その…… 昨日色々あったから心配で。

お見舞いに行こうかなぁって」

その言葉にナノカは変身をとき、制服であるらしいセーラー服になった。

そしてニコニコ笑顔のまま口を開く。

「…………みんな、ナノカと一緒にはーちゃんのとこ、来る?」


ハルカの家はマンションだった。白いそこの角の1室に住んでいるらしい。

ナノカは慣れたように鍵を開ける。

どうやら彼女は合鍵を貰っていたようだった。

「おじゃましま~す」

そう言うナノカに続いて部屋に入った。7足の靴が玄関に並ぶ。

「……はーちゃん」

部屋の奥にはハルカがいた。彼女は眠っている。一切動いていない。

相当寝相が良いのだろうか。まるでもう目を覚ます事がない眠り姫のように。綺麗で美しい寝顔だった。

「ハルカは寝てるのか?」

「ならジャマしちゃダメなの」

「なんだか申し訳ないな……」

5人は後退した。眠っているのであれば何もできまい。

そ う考えたからである。しかし、ナノカは逆にハルカの方へ近づいた。

ハルカの頬を愛おしそうに触る。

「え、ナノカくん。なにしてるんですか」

「……だいじょーぶ。はーちゃんは起きないから」

寂しげに言った。どうしてそんなに悲しそうなのだろう。

ナノカは泣きこそしていなかったが、それでも泣きそうだった。悲壮な笑顔。

「はーちゃんね、おばかさんなの。だから起きないんだよ」

説明になっていそうでなっていない。

「…………ねぇ。みんなって、魔法少女になろうって思ってる?」

「え、それ、は……」

「えぇっとぉ」

なってみたいという気持ちはあった。理由は5人それぞれだが、興味はある。しかし、マリアにはなるなと言われた。先生にもよく考えてと言われた。

なりたいか、なりたくないか。どちらも正しく、どちらも間違っている。

「……あのね、ナノカは、魔法少女にならない方がいーって思うよ」

「それは……なんで?」

「魔法少女ってね、強いよ? でも、それ以上に脆いの」

ナノカは、ハルカの頬を撫でる手をとめた。

「魔法少女は、変身を繰り返せば繰り返すほど周りに忘れられる。

みんな、記憶操作で魔法少女について消されちゃうから、

段々と魔法少女に変身する前の子についての記憶もなくなるの。

だから、ココロが壊れちゃうかもしれない。」

「それに、魔法少女はキーホルダー ──魔法少女のエネルギーそのもので、魔法少女に変身するためのアイテム──それが壊されちゃったら無力なの。

もう何も出来なくなっちゃう。

普通、キーホルダーは自分の目の届く所に置いて、

変身してる時は敵に見つからないような場所につけておくんだよ?

でもね、もしもそれが壊されちゃったら………… もう、そこで終わり。

終わりなの。はーちゃんはもう2度と目を覚まさない。

ずっと意識のないまま眠り続ける」

ナノカは、ナノカの物であるらしいハートの形をしたキーホルダーを手に取った。

魔法少女は、こんな手のひらサイズのキーホルダーに命を握られているらしい。

なんだか現実味がなくて信じられなかった。

ハルカはただ寝ているだけのように見える。

どうしてキーホルダーが壊されたらそうなるのかも分からない。

けれど、それが嘘だと思うことも出来なかった。

そのくらい、ナノカの顔は真剣だった。

「……魔法少女にはね、ナノカの方が先になったんだよ。

はーちゃんがサリアルキーに襲われてたから、助けたかったんだぁ。

でもね、はーちゃんもナノカを守る為に魔法少女になっちゃったの。」

「ナノカはすっごく嫌だった。

ナノカの為に全て捨てちゃうくらいなら、ナノカを捨ててほしかった。

でも、はーちゃんはナノカを選んだの。

……はーちゃんはナノカのこと、大好きだから。

ナノカね、少し嬉しかったんだ。

カタチが歪でも、はーちゃんはナノカのこと好きでいてくれたから。」

「でもはーちゃんに生きていてほしかったから、

隣で笑っててほしかったから、だから約束したんだよ?

ナノカとはーちゃんはずっとずっと一緒だよって、約束した。」

「だけどはーちゃんは、ゴスロリちゃんにキーホルダーを壊されて。

約束破ったの。もう、はーちゃんは……」

ナノカは泣いていた。もう一緒にいれない親友の為に。

誰よりも愛していた、彼女の為に。

「魔法少女は、キーホルダーを壊されたら、もう目を覚まさないんだよ? 意識がないまま」

ポロポロと涙がこぼれる。自嘲するかのように笑っていた。笑みと悲しみが混ざった笑顔だ。

「心臓は動いてる。息もしてる。それに、体はこんなにもあったかい。

けどね、だけどね、目だけが覚めないの。意識だけはないの」

「ナノカさん……」

「はーちゃんが今こうなってるのは、ナノカのせい」

ハルカが最期まで握りしめていたらしい、

もはや原型を留めていないキーホルダーを見つめている。

「だからね、魔法少女になんてならないで。みんな悲しいだけだから。

……サリアルキーからは、ナノカ達が守るから」

ナノカは、ハルカを抱き締める。そのまま姫抱きした。

「これは、ナノカのエゴかもしれない。でも、ナノカは守りたいの。

みんなを、はーちゃんを。だから誰になんて言われても、

もしも歪んでたとしても、これを愛って呼びたいんだぁ」

気付けば涙は既に止まっていた。とびきりの笑顔を親友に向けて。

「……それだけだよ。じゃあ、帰ろっか」

ナノカ達は部屋を出た。

その瞬間、ナノカが持っていた鍵は溶けて消えてなくなった。

ハルカが住んでいた部屋のドアに、空室と書かれた紙が張られている。

「はーちゃんが生きてるって痕跡がなくなっちゃった。

魔法少女の死ってこういうことなんだよね」

「じゃあ、もうハルカちゃんは……」

「うん。魔法少女しか存在を知らないの。姿だって見えなくなる。

はーちゃんは、世間的にはもういないってこと。

……だからね、みんなは魔法少女になんてならないで」

キッパリと言ったナノカの背中を見送りながら、ショウ達は家へ帰った。

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