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#プロセカ
パピコォォォ
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※注意は第1話をご参考までに※
何でも大丈夫な方のみ読み進めてください。
第3話『相棒のままで。取扱注意なクッキー』
彰人Side
「ありがとうございました。またお越しくださいね。」
俺は完璧な猫を被り、客を見送った。
「ねぇねぇ、店員さん、今日もめちゃくちゃかっこよかったね……!」
「ほんと、目の保養すぎる…!」
店を出ていく女の子たちの声が、ガラスの扉越しに微かに聞こえた。
ここ、パティスリー『シュクル・エ・シュール』の営業が終わり、俺はようやく一息がつける時間になった。
「あー、疲れた…。今日も一日、完璧にやりきった……」
とある事情で居候させてもらっている俺にとって、この店は唯一の居場所だ。
だが、一日中猫を被って愛想を振りまくのは、かなりの重労働なんだよな。
「お疲れ様、彰人くん。はい、これ今日の分の試作ね。」
手渡されたお皿には、モンブランがのっていた。
俺は迷わず口に放り込んだ。
「……っ! んま…っ。濃厚だしタルト生地が最高…」
その俺の様子を見て、メイコさんは「ほんとに美味しそうに食べてくれるわね。」と嬉しそうに目を細めている。
もうすぐ時計の針が、夜の12時を指そうとしている。
ここからは、悩みや願いを持つ者だけが迷い込む『裏の営業』の時間だ。
◇ ◇ ◇
こはねSide
夜、午前零時。
こはねの自室で。
「…はぁ。」
最近ずっとため息ついてるな…。
諦めが早くつけばこんなに悩みもしないのに…。
この気持ちは早く諦めないといけないって分かってるのに――。
数時間前のこと。
「〜〜♪〜〜♪」
「こはね〜!!今の歌い方めっちゃよかったよ〜!」
「ほんとに?ありがとう!」
やった、杏ちゃんに褒められちゃった!
最近、杏ちゃんのアドバイスとか周りの人のお陰でうまくなってきた気がするな。
これからも杏ちゃんの隣で歌えるように、頑張らなくちゃ。
「ふふっ、一緒に頑張ろ〜!やっぱりこはねは最高の相棒だよ!!」
あ…。
そうだよ、期待しちゃだめ。なんでこんなに嬉しくなっちゃったの…?
杏ちゃんにとっては私は…、相棒なんだから。
杏ちゃんにそれ以上の気持ちはないって、分かってるのに。
いつも’’杏ちゃん’’ならって期待してしまう。
「…こはね?大丈夫?休憩する?」
「ううん!大丈夫だよ。」
「…そっか。」
私は杏ちゃんが好き。
でも、この気持ちは隠さないといけない。
だって、いつか、いつか関係が壊れてしまうから。
ずっとどうしようもできない感情が頭の中をぐるぐると回っている。
時計の針がぴったりと深夜12時を指した、その瞬間。
『――チリン』
鳴らないはずのドアベルの音がスマホからなった。
「誰かから連絡が来たのかな…??」
いつも通知音はこんな音ではなかったはず。
スマホを開いてみると『シュクル・エ・シュール』のアカウントが開かれていた。
あれ、私このアカウント見てたっけ…?
「え…!?」
突然、眩しい光が輝き出し、視界がぐにゃりと歪んだ。
私は気づいたら、月明かりに照らされたお店の前に立っていた。
「あれ…?さっきまで部屋にいたのに」
なんでここにいるのかわからない。
だけど不思議とドアの前にいると、ここなら私のこの想いを諦めさせてくれるんじゃないか。なぜかそう思えた。
◇ ◇ ◇
彰人Side
「あら、噂をすればお客様が来たみたいね。」
「え?ルカさん、何言って…」
まだ誰もいない扉を見つめて、ルカさんは言った。
俺が不思議そうに振り返った、その瞬間。
カランカラン、と涼やかなドアベルの音が響いて扉が開いた。
それと同時に、ふわりと甘い【イチゴの香り】が店内に漂う。
ドアの前に立っていたのは、小動物のような雰囲気を纏った女の子だった。
彼女はスマートフォンを両手でぎゅっと握りしめ、瞳をパチパチとまばたきをした。
夜中に悩んでいたら、スマホから鳴ったドアベルの音と香りに導かれ、そのままワープしてきたのだろう。
「あの…、私…気づいたら、ここに…。」
「いらっしゃい、可愛い迷子ちゃん。」
ルカさんがにこにことしながら手招きすると、彼女は緊張しながらも、カウンターの椅子にちょこんと座った。
俺は、彼女の前に温かいミルクティーを差し出した。
「…で?何にそんなに悩んでんだ?」
こはねはカップの温かさに少しホッとしたように、けれど、少し迷ってから本音を話し始めた。
「私…杏ちゃんのことが、好きなんです。
でも、この気持ちを伝えたら『相棒』でいられなくなるかもしれない…。
もうこれ以上、傷つくのが怖いの。だから、もうこの気持ちを忘れたいんです…。」
小さな身体を縮こまらせて、こはねはポロポロと涙を流しながら、秘めていた胸の内を打ち明けた。
「…そっか。分かるよ、その気持ち」
「…えっ?」
俺は、こはねの切なさに、共感してしまった。
傷つくことに怯え、これ以上進めないと震えているこはねの姿。
それが、俺の胸の奥にある、決して触れてはいけない傷を思い出させた。
『相棒』俺もあいつの相棒だった。
なのに俺は、周りにバレて傷つくのが怖くて、あいつの手を離して逃げた…。
逃げたらもう、戻れない。そう分かっていったのに。
「…いや、なんでもねぇ。」
静かになった雰囲気を変えるように、メイコさんはこはねに問いかけた。
「ねえ、こはねちゃん。あなたの本当の想いは何かしら?」
「『嫌われたくない』っていう恐怖の裏にある、あなたの本当の本音を教えて。
それを隠したままじゃ、私たちもどうすればいいかわからないわ。」
「私の…、本当の本音…」
こはねは涙で濡れた瞳を見開いた。
自分の胸に問いかけるように…、想いを探し出すように、店内には静かな時間が流れた。
杏を失うのが怖い。傷つくのが怖い。
だから諦める…。
そうやってこはねが自分に言い聞かせていた言葉が、メイコさんの言葉で考えさせられる。
こはねはぎゅっと、服を握りしめ、溢れ出る想いを伝えるように喋りだした。
「私は…!杏ちゃんにとって、特別な、一番近い存在になりたいんです…!杏ちゃんの隣で、ずっと、ずっと笑っていたい……!」
それは、諦めようと必死に自分を誤魔化していた、こはねの「本当は諦めたくない」という一途な恋心のように思えた。
「じゃあ最後に1ついい?こはねちゃんの想いはただ恋を殺すような味ではないわ。
杏ちゃんを好きな気持ちも、一番近くにいたいっていう願いも、あなたが忘れるまで絶対に消えないわ。それでも、その想いを抱えたまま『最高の相棒』として隣でずっと笑い続ける覚悟はあるの?」
「…これが正しいのかはわからないけど、覚悟はできてます。」
「そう。彰人くん、オーダーは『親愛』ふたりの境界線を優しく、だけど確かに繋ぐような、最高のクッキーを焼きましょう。」
「おう、任せろ。」
その後、こはねはルカさんに優しく見送られて店を出ていった。
俺はすぐに厨房へ入り、調理台の前に立った。
クッキーはサクサクとみんなで分け合える形から、『あなたは友達』という意味を持つ。
だが、今回はそこにこはねが本当に望んだ「一番近い存在になりたい」という『親愛の味』を、溶かし込んでいく。
「よし……。バターの量も、砂糖の量も完璧だ。今度は絶対に暴走なんてさせねぇ。」
ボウルの中で材料を混ぜ合わせていく。
(こはねは、諦めたいんじゃねぇ。杏の隣にいたいから、必死にもがいていた。
傷つくのが怖くて逃げた俺みたいに、取り返しのつかない後悔をしてほしくない。
大好きなやつの隣にいることを、諦めてほしくない――。)
こはねの想いを生地に描くように、想いを込める。
型で切り取った生地を予熱をしたオーブンに入れ、オーブンの扉を閉める。
数十分後。
焼き上がったクッキーは、ふんわりとバターとイチゴの甘酸っぱい香りが漂う、完璧な仕上がりだった。
「どうだ?メイコさん。」
メイコさんが焼き目をじっと見つめる。
「完璧ね。暴走の心配なんて1ミリもない『大成功の味』よ。さぁ、こはねちゃんのもとに届けましょうか。」
メイコさんが指をパチンと鳴らすと、焼き立てのクッキーが可愛らしくラッピングされ、厨房の空気に溶け込むように消えていった。
夜が明ければ、こはねの机の上に届いているだろう。
お菓子作りが終わり、静かな店内で、俺は自分の手を見つめていた。
こはねは相棒でいるために、恋を胸の奥にしまって前を向いた。
そんなこはねと違って、…恋も相棒も、全部捨てて逃げた俺は…。
どうすればよかったんだろうな…。
夜の厨房に、俺の消えない後悔だけが寂しく満ちていた――。
◇ ◇ ◇
こはねSide
翌朝。
ピピッというアラーム音で目が覚めた。
「…あ、れ?」
こはねは昨日いたパティスリーから気づけば自分の部屋へと戻ってきていた。
「夢、だったのかな…。」
そうつぶやきながら周りを見渡せば、机にピンク色のリボンでラッピングされた箱が置いてあった。
これ昨日の?昨日ことは夢じゃなくて本当だったんだ…。
そう思いながらリボンを解き、箱を開ける。
開けてみると、甘酸っぱい香りが部屋の空気を満たした。
中にはキラキラと輝く、いちごのジャムが乗ったクッキー。
「いただきます。」
クッキーを小動物のように一口かじった。
サクサクと、心地よい音がする。
だけど口の中で切なく、優しく溶けていくクッキー。
恋心に溺れて関係を壊すこともなく、想いも殺さない。
『最高の相棒』として前を向くための、甘くて切ない境界線の味。
「すごく美味しいのに、なんで、っ涙が溢れるんだろう…。」
杏ちゃんが好き。
それは私の心からはなくならないんだと思う。
でも、その想いを自分から伝えることはきっとこの先ない。
この決断を私は後悔しないように…。
「これからも杏ちゃんの隣で歌い続ける!」
その瞳には涙が消えていた。
第3話Fin*
コメント
1件
はぁ…第3話読んだよ〜〜〜!!😭💕💕 こはねちゃんの「杏ちゃんにとって特別な一番近い存在になりたい」って本音、涙なしでは読めなかった…!! あのメイコさんの「それでも隣で笑い続ける覚悟はある?」って問いかけ、めっちゃ刺さった。彰人くんの過去と重なるのも切なすぎるよ… 「相棒のままでいる」って決断、すごく尊いし、クッキーに込められた想いがちゃんと届いてるのが伝わってきて…! 次も絶対読みます!!🌸