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城中に響き渡りそうな程大きな声が聞こえる。
「どうして、こうなるの⁉︎予定外過ぎるわ!」
アドラは、ヴィルヘイムに詰め寄る。
「そうですか。でも、私の事を好いて下っているのでしょう?ならなんの問題もありませね」
アドラとヴィルヘイムは、結婚をした。あの時の宣言通りにアドラは、ヴィルヘイムを落とす事に成功したようだ。
「問題ありですよ!折角私が、王太子妃になれる筈だったのに!どうして、放棄なんてしたんですか⁉︎」
ヴィルヘイムは、アドラと婚姻を結んだ直後その場で王太子の座を放棄した。
「ずっと、考えていたんですよ。ただ、私には勇気がなかった」
口ではテオドールに申し訳ないと言いながら、王太子という肩書きを失くす事を恐れていた。自分は臆病者だった。死を間逃れたものの、病弱であるには変わりない。故に不安は拭えなかった。
だが、あの女性嫌いのテオドールがヴィオラという少女を連れ帰って来てから思ったのだ。決断の時だと。
まあ、その前にやるべき事が出来てしまったが。テオドールは素直じゃなく中々ヴィオラに気持ちを伝えられない様だった。
ならば、少し危機感を持たせてみようと思った。素直になれないなら、素直にならざるを得ない状況を作ればいい。テオドールの留守に彼女と親密になり、噂も流した。これはかなり効果的面だった。
城に戻ったテオドールは、連日彼女との婚約の真意を追求してきたので、こう返した。
『彼女には、王太子妃になって貰います』
別に嘘ではない。テオドールが王太子になるのだから。
ただ、少し予定外の事が起きた。
『ヴィルヘイム様』
ヴィオラと接している内に、本当に彼女を好きになりかけていた。
ダメだとは頭で分かっていても、気持ちが揺らいだ。
『ヴィルヘイム様!私を妻にしてください!』
だがそんな時アドラが現れた。彼女は確かテオドールの事が好きだったのでは……。
『私、負け戦はしない主義なので』
変わった娘だと興味が湧き、気付けば承諾していた。
「しかも、どうして郊外へ移り住むんですか⁉︎」
ヴィルヘイムは、城下から大分離れた郊外へ移る事にした。城に残ればまた、周囲から様々な憶測など噂されるのは目に見えている。
無用な争いは避けたい。
「のんびりと、隠居生活するのが夢だったんですよ」
アドラはぶつぶつと文句を言いながらも、ヴィルヘイムについて来てくれる様だ。
明日、王太子になったテオドールとヴィオラのお披露目がある。正式にヴィオラは、王太子妃となるのだ。
その姿を見届けたら、城を立とうと考えている。