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「草凪雪乃に情報渡したん?」
薄暗い何処かの部屋で、チーノは聞いた。
「あかんかった?」
静かに話すショッピの顔を、ヒトモシが妖しく照らす。
「あかんって言っても渡すんやろ」
「それ相応の対価を頂ければ」
口角を上げそう答えるショッピ。
ホンマに変わらへんな、とため息をつく。
「じゃあそれ相応の情報を頂けたってことか」
「まぁ、せやな」
「へぇ、気になるなぁ。草凪雪乃の秘密」
悪い笑顔でショッピを見れば、
「知りたいんやったら情報渡せ」
と言いながら手を差しだされる。
それを見て再びため息をつく。
「けど、多分この情報が誰かに買われることは一生無いと思うわ」
「…何で?」
そう聞けば、ショッピの表情は少し陰りを見せた。
「誰もこれと同等以上の情報を持ってへんやろから」
そんなショッピの横顔を見つめる。
「ふーん」
そんなん言われたら、益々気になるやんか。
「…『気になる』って顔しとる」
ショッピに指摘される。顔に出てたか。
「そんなに気になるんや、草凪雪乃のこと」
ニヤリと笑いながらチーノを見るショッピ。
「せやな、今回の件で早々に落ちるかと思ったったけど、意外と食いついてきよる」
チーノは話しながら、ショッピの後ろを回り机の上にいたヒトモシに近寄る。
「…さっさと退場してもらわんとなぁ」
ぼそりと呟きながら、ヒトモシの小さな手に触れた。
「モシ?」
ヒトモシがフッと息を吐けば小さな火の粉が舞い、「あっっっつ!!!」と悲鳴をあげるチーノ。
それを見て、ショッピはケタケタと笑うのだった。
ーーー時は遡り、雪乃が窓から逃げ出した後。
一瞬の隙をついて手元から逃げ出した獲物に、ゾムは自分の手を見つめた。
さっきまで確かに、黒いマフラーを掴んでいたのに。
『ーーー離して!!』
涙をいっぱい溜めてこちらを睨む、あの表情が頭から離れない。
「おいゾム!!」
誰かが美術室に入ってくる。
振り返らずとも声で分かった。
「何やロボロ」
「お前またあの子追いかけまわしとったやろ!見てたぞ!」
怒りながらこちらに近寄るロボロ。
しかしそんな声も今は頭に入ってこない。
「あの子は…どこ行ったんや?」
また追いかけられて困っているのではと迷わずここへ向かったのだが、彼女の姿は無く。
ゾムは静かに立ち上がり、開いた窓のそばに寄る。
空には何故か大きな泡のバルーンがいくつも浮かび上がり、視界を遮る。
ふと、泡の隙間から見えた赤い髪に、ゾムは無意識に笑った。
「…しばらく楽しめそうやな」
そんなゾムの後ろ姿を見て、ロボロは嫌な予感を巡らせていた。