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重愛で束縛強めな♥️くんに、意外と隙だらけの💛さんに、不穏な💙、、、 めちゃ好きです、この展開🤭💕 内心のお口が悪いのに隙がある💛さん、やっぱり💛ちゃんで、可愛いすぎます❣️
続きが楽しみすぎる!
涼ちゃん モテモテ!?わ、若井までー!?
『涼ちゃん今日終わったら来れる?』
通知を見てつい、またかという面倒臭いものが混じった感情になる。
彼と付き合い始めて、しばらく経ったが夜に家に呼ばれるのが増えた。というと一見やましいことのように聞こえるが、実際はそんな大したことではない。元貴が制作に入る時に、俺が一緒に部屋に居たり、リビングで待機してご飯を作っておいて一緒に食べたり。古臭いドラマでよく見る作家の嫁みたいなことをしている気がする。別にそのこと自体は初めてで恋人らしくて、特別な感じがしてそこまで苦ではないのだが、何よりも眠れない事が辛かった。
元貴は普段から短時間睡眠で隈も多く、少々心配になっていた。俺が添い寝をしながら頭を撫でてやると眠れるらしく、それでも眠りが浅くて動くとすぐに起こしてしまうから中々抜け出せない。俺も寝る準備があるからと睡魔と戦っているうちに時間が経って半ば強引にお泊まりコースになる。ミセスの主軸である以上彼を倒れさせる訳にはいかないため、こんな十分に寝られない生活が不定期に続いた。
ストレスはじわじわと、でも確実に溜まっていった。
更に元貴の周りへのアピールが日に日にエスカレートしていくのだ。若井と一部の人にしか付き合っていることを公表しないと後から二人で決めたのに、バレてしまいそうなくらい距離が近い。俺は『涼ちゃん』を演じるのが得意なだけで、嘘は下手だから正直人前は辞めて欲しい。他には嫉妬深いのか、スマホをちょっと長く見ていたら後ろから覗くように「誰?」と聞かれたり、番組で他のよく関わるアーティスト達に挨拶に行くと不機嫌そうに口を聞いてくれなくなったりする。正直俺にははっきりとした重さがよく分からなかったし、気にしていなかった。なんなら少し優越感に浸れるぐらいで、可愛いとこもあんな、なんて思っていたら。
ある日遂にどうしても許せない事が起こってしまった。
元貴に言われてから渋々首元の開いた服は控え、極力人と2人っきりにならないようにしていた時だった。バラエティの出演でテレビ局をウロウロと迷っていると、人通りのない通路からあの高らかに笑う声が聞こえたのでほっとして覗こうとしたら。
「元貴ってスキンシップ激しいのに、俺にはあんましてくんないじゃん〜」
ピタリと足を止める。誰かと親しげに話していたのだ。てっきりマネージャーかと思ったので、胸の辺りが少しざわつく。
「お前力強いやん、容赦ないし。ちょっ、首痛いっての」
お前は苦しげだが楽しそうにそう言う。ちらりと覗けば、絶句してしまった。
肩を組んでいたのだ。しかも相手に顔とか腰なんか触らせちゃって。なんで、俺は若井とある程度近付くのすら許されないのに。それどころか2人っきりで話すのも怒ってくるくせに。付き合ってからなりを潜めていたあいつへの苛々が戻ってきて腹が立つ。どういう関係なんだよ、そいつと。もしかして気付いてないとでも言うのか?自分ばっかりで我儘にも限度ってものがあるだろ。
いてもたってもいられず、その場を駆け出してしまった。
◻︎◻︎◻︎
「へ〜、そんな事がねえ」
若井がグラスを揺らしながら物憂げに言う。お酒の弱い彼の中身は勿論ジュースだ。対して俺はビールを過去最高ペースで胃に入れている。そりゃそうだ。やってらんないだろ、この位呑まないと。
「酷くない?やっぱり限度ってものがあるよね!?」
「うわ、涼ちゃん顔めっちゃ赤いよ。ちょっと呑み過ぎじゃね?…まあでも俺もそう思うなー。涼ちゃんがこんなに怒るの初めて見たもん」
「怒るよ!あぁ怒るさ!理不尽だよこんなの!」
ストレスとアルコールで上手く取り繕えなくなっている気がする。喚いている時点でかなり危ういかもしれない。でも意識がふわふわとしてなんだか気持ちよくて。若井ならいいか、なんて思って愚痴を続けてしまった。あの一件から誰かにこの現状を知ってもらわないと気が済まなくて、今晩元貴が海外出張のうちに手っ取り早い若井を呼び出したのだ。多分浮気じゃないだろ、この位。
「まあまあ。俺の奢りだからほら、ゆっくり食べて」
先程注文したツマミを差し出される。俺が選んだこの店は居酒屋でも芸能人御用達のプライベートな空間だ。本音をぶちまけたくなるのはそのせいだろう、きっと。ありがとうと試しに目の前の枝豆にかぶりついてみせた。
「でもさー、涼ちゃん大丈夫なの?元貴そんなに束縛激しいのに絶賛2人きりじゃん、俺ら」
苦笑いしながら尋ねられる。多少の罪悪感が掠めたが、首を振って勢い良く唐揚げを頬張る。これを足しても元貴の方が悪いだろ。だから大丈夫だと若井か自分かどちらに言い聞かせているか分からなくなりながら、夜は更けていった。
◻︎◻︎◻︎
「…ちょっとぉ、涼ちゃん。寝られたら困るよお今日彼氏さん居ないんでしょ?」
「んぅ〜…もう、しらなぃ…もときなんて…」
「あちゃ、これはかなり不味いな。ねえほら、送っていくから取り敢えず立とう?肩貸すよ」
もうほとんど無い意識の中で、若井の肩から揺れを感じながら歩く。足の感覚が無い。見た目が典型的な酔いつぶれた介抱されている人で通行人に見られるのが恥ずかしいはずだが、それすら気にならなかった。隣からあんだけ呑んでたもんなとか、元貴どうにかしないとなとか彼が独り言を呟いていて、辛うじて起きていられる。タクシーに乗ってからも肩を枕にさせてもらい、しばらく揺られていた時にふと気づく。
手の当たりに人肌の感触がある。それに暖かくて、まるで恋人繋ぎのように包まれていて___。
あれ、今俺若井と恋人繋ぎしてないか…?
視線を下にずらすと、暗がりだがガッツリ繋いでいるのが見えた。え、何で?いつから?疑問が溢れてくるけど、若井と運転手の会話が心地よく耳に響いて、口を開く気力が無くそのまま思考を手放してしまった。
「涼ちゃんてば、ほんと危機感無いよね。俺一応男なのにさ。元貴はやり過ぎだけどああなっちゃうのも無理ないよ」
ここどこだろ、若井の声が聞こえる。いつもの匂い、ここ俺の家かな?何で若井がいるの…?
「はい、靴脱いで、上着も脱ぐよ。バッグここ置いとくからね」
されるがまま、なんだか子供みたい。じゃあ抱きついちゃってもいいよね。
「ちょ、涼ちゃん…!こっちは耐えるのに必死で…。まあでもちょっとくらいいいか。涼ちゃんをこんな風にさせた元貴への報復だよな」
目ぇ閉じて。うん、分かった。ねえ若井何するのー?じっとしててね。うひゃっくすぐったいよ。はいもう終わり、じゃあちゃんとベッドで寝なよ。また明日ね、おやすみ。行っちゃうの?あ、おやすみ…。
…キィ、ガチャン
首の当たりが一瞬冷たくて、でも感触があった後からなんだか満たされていて。
ふかふかの布団に包まれ、もう一度俺は意識を手放した。
◻︎◻︎◻︎
読んでくださりありがとうございます!
ひろぱから不穏な空気が漂っております。どうなるんでしょうか…。この涼ちゃんがお酒を呑んだら素と演技の部分が混ざって演技が素になったら面白いなと思ったんですが、ただのいつもの涼ちゃんでしたね笑
次も是非読んで頂けると嬉しいです。