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「触れば壊れる」
夜の街は、まるで二人を引き寄せるように静かだった。
ビルの裏側、少し灯りの落ちた路地で、
吐夢は壁にもたれながら淡く笑っていた。
「……貴方が来るとは思っていませんでした」
その視線の先に現れたのは──久村。
「来るしかなかった。お前、あの子に近づいたろ。」
吐夢は肩をすくめる。
「近づいた? ただ興味があっただけですよ。
──“貴方みたいな男が守ってる相手”に。」
久村の眉がわずかに動く。
「俺は別に、守ってるわけじゃない。」
「嘘ですね。目が教えてくれる。」
吐夢がゆっくりと近づき、久村の視界いっぱいにその顔が入る。
久村は睨みつけようとしたが、その貼りついた笑顔が妙に胸に刺さった。
吐夢は手を上げると、
久村の頬に触れそうな、触れない距離で止めた。
「……貴方は…壊れやすそうで、綺麗だ。」
久村はその手を掴む。
「ふざけるな。」
「ふざけてないですよ。僕、ただ知りたいだけです。
“貴方が誰を見て、誰に怯えて、誰を欲しがるのか”。」
吐夢の声は低く、甘く、どこか人を狂わせる。
久村は吐夢の手を振り払おうとした。
だが、握った指先から伝わる熱に、反射的に力が抜けた。
「……俺のことなんて知ってどうする。」
吐夢は囁くように笑う。
「簡単ですよ。貴方が気に入ったんです。
──貴方のその目、僕に向けてみたい。」
久村の心臓が一瞬、痛いほど跳ねた。
触れ合った指が離れた瞬間、
押し合っていたはずの空気が、なぜか惹かれ合うものに変わっていく。
沈黙の中、久村は吐夢を強く見返した。
「……お前、俺をどうしたい?」
吐夢はその問いに、ためらいもなく答えた。
「全部、見たいです。
貴方の弱いところも、強いところも、
──誰にも見せてこなかった顔も。」
夜風が二人の間をすり抜ける。
逃げる気なんて、どちらにももうなかった。
吐夢×久村初なんですけど、こんな感じなのかなぁ…と悩みながら書きました笑
あってるかな笑