テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「――あれ?」
少し離れたところから声が聞こえた。
僕たちが振り返る。
kn「なんか聞こえない?」
kyo「……?」
全員が足を止める。
森の中から、低い唸り声が聞こえた。
??「……グルル……」
pn「……」
僕は思わず息を呑んだ。
木々の隙間から、ゆっくりと何かが姿を現す。
大きな身体。
黒に近い灰色の毛。
鋭い爪。
そして、こちらを睨みつける赤い瞳。
見た目は狼に近い。
けれど、普通の狼とは明らかに違っていた。
身体の周りには黒い靄のようなものがまとわりついている。
pn「……魔物?」
rd「うん」
らっだぁの声が低くなる。
さっきまでの穏やかな雰囲気が、一瞬で消えていた。
rd「みんな、下がって」
ru「分かった」
レウさんが僕の前に立つ。
みどりくんも少し離れた場所へ移動し、きょーさんとコンちゃんも警戒するように魔物を見つめていた。
僕も言われた通り、一歩後ろへ下がる。
pn「……」
心臓が速くなる。
魔物。
存在自体は知っていた。
けれど、実際に目の前にすると怖い。
魔物はゆっくりと僕たちへ近づいてくる。
そして――
ぴたりと動きを止めた。
pn「……?」
魔物の視線が、僕に向く。
正確には。
僕の胸元へ。
pn「……え?」
僕は反射的に胸元へ手を当てた。
そこにはいつものペンダントがある。
魔物は僕ではなく、それを見ていた。
rd「……?」
らっだぁも魔物の視線に気づいたらしい。
rd「ぺいんと、こっち来て」
pn「う、うん」
僕はらっだぁの後ろへ移動する。
けれど、魔物は僕から視線を逸らさなかった。
??「……グル……」
pn「……」
怖い。
なのに、なぜか魔物の様子が少し変だった。
襲ってくるというより――
何かを確かめているように見える。
魔物が一歩前へ出る。
その瞬間。
胸元が熱くなった。
pn「……っ!」
思わずペンダントを握る。
熱い。
さっきまでとは比べものにならない。
pn「熱……」
rd「ぺいんと?」
pn「ペンダントが……」
僕が手を離そうとした、そのとき。
魔物が大きく吠えた。
??「グルァァァッ!!」
pn「うわっ!」
身体が強張る。
次の瞬間、魔物が地面を蹴った。
rd「危ない!」
らっだぁが僕の前に飛び出す。
rd「“ハードニング”」
魔物の爪が振り下ろされる。
ガキンッ!
金属を弾いたような音が響いた。
僕は思わず目を閉じた。
恐る恐る目を開けると、らっだぁが魔物の攻撃を受け止めていた。
rd「っ……!」
pn「らっだぁ!」
rd「大丈夫!」
らっだぁが魔物を押し返す。
魔物が数歩後ろへ下がった。
その隙に、レウさんが前へ出る。
ru「今度はこっち!“ファイヤーボール”」
レウさんの手から炎が飛び出した。
それは魔物の足元へ当たり、地面を燃やす。
??「グルッ!?」
魔物が驚いて飛び退く。
pn「……すごい」
魔法。
初めて、間近で見る。
人間でも生活に使える程度の魔法なら使える。
でも、今のレウさんの魔法は、それとは明らかに違う。
強い。
魔法使いである僕にも魔力があれば、こういうことができたのだろうか。
……いや。
僕には魔力がない。
だから、できない。
そう思った。
そのとき。
魔物がもう一度、僕を見る。
??「……」
その赤い目が、まっすぐ僕の胸元を捉えている。
pn「……なんで?」
僕が呟いた瞬間。
魔物が口を開いた。
??「……その……力……」
pn「え?」
僕だけじゃない。
その場にいた全員が動きを止めた。
rd「……今、喋った?」
ru「うん……」
魔物は荒い息を吐きながら、僕を見ている。
??「……まだ……持っていたのか……」
pn「何を……?」
魔物は答えない。
ただ、僕のペンダントを見つめている。
pn「これ……?」
僕はペンダントを握った。
魔物の身体がびくっと震えた。
??「……!」
そして、突然後ろへ飛び退いた。
rd「え?」
魔物は森の奥へ向かって走り出す。
rd「待て!」
らっだぁが追おうとする。
けれど、きょーさんが腕を掴んだ。
kyo「待て」
rd「でも!」
kyo「深追いせん方がええ」
rd「……」
魔物はそのまま森の奥へ消えていった。
しばらくして、完全に気配がなくなる。
静寂が戻ってきた。
pn「……」
僕は自分の胸元を見る。
ペンダントは、もう熱くない。
さっきまでのことが嘘だったみたいに、いつもの温度に戻っている。
ru「ぺいんとくん、大丈夫?」
pn「うん……」
rd「怪我は?」
pn「ないよ」
rd「よかった……」
らっだぁがほっとしたように息を吐く。
僕は少しだけ申し訳なくなる。
pn「ごめん」
rd「なんで謝るの?」
pn「僕のせいで……」
rd「違うよ」
らっだぁは僕の頭を軽く撫でた。
rd「ぺいんとのせいじゃないから」
pn「……」
その瞬間。
また、あの声が聞こえた。
――大丈夫だから。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
pn「……っ」
思わずらっだぁを見る。
rd「?」
さっきの声。
夢の中で聞いた声と、同じだった。
いや。
そんなはずはない。
昨日初めて会ったばかりなんだから。
pn「……なんでもない」
rd「?」
らっだぁは不思議そうな顔をしていた。
でも、それ以上は聞いてこなかった。
_____________________
館へ戻る道中。
みんなはさっきの魔物について話していた。
ru「この辺りにあんな魔物、いたっけ?」
rd「俺は見たことないな」
kyo「俺もや」
kn「ちょっと変だったよね」
md「ペンサんノホウミテタ」
pn「……」
やっぱり。
僕もそれが気になっていた。
魔物は僕を見ていた。
いや。
僕のペンダントを。
pn「……なんだったんだろう」
kyo「分からんな」
きょーさんはそう言って、少し考える。
kyo「まあ、今のところ害はなさそうやったけどな」
rd「でも、念のためしばらくは一人で森に行かない方がいいよ」
pn「分かった」
僕は頷いた。
そして、もう一度ペンダントを見る。
ただのペンダント。
少なくとも、僕はそう思っている。
それ以上でも、それ以下でもない。
……そう思っていた。
_____________________
館へ戻り、僕は自分の部屋へ戻った。
ベッドに腰を下ろす。
静かになった途端、さっきのことを思い出してしまう。
魔物。
赤い目。
そして――
「その力」。
pn「……」
僕はペンダントを服の上から握る。
何も起こらない。
さっきまで熱かったのが嘘みたいだ。
pn「力って……なんのことだったんだろう」
答えは返ってこない。
当然だ。
僕自身にも分からないのだから。
ふと、窓の外を見る。
森が広がっている。
さっきの魔物は、もうどこにも見えない。
pn「……」
そのとき。
また、頭の中に一瞬だけ映像が浮かんだ。
暗い森。
今よりずっと小さな自分。
誰かの手を握っている。
その人の顔は見えない。
ただ、声だけが聞こえた。
??「大丈夫だから」
そして――
??「俺がいるから」
pn「……!」
目を開く。
部屋の中には、僕しかいない。
pn「……まただ」
胸が少し苦しい。
この声を聞くと、どうしてこんな気持ちになるんだろう。
怖いわけじゃない。
むしろ――
安心する。
pn「……誰なんだろう」
僕は呟いた。
答えは分からない。
今の僕には、何も。
ただ一つだけ。
この声を聞いたときに浮かぶ感情だけは、どうしても消えなかった。
懐かしい。
まるで。
ずっと昔から知っている人のような。
そんな気がした。
_____________________
その頃。
館から少し離れた森の中。
先ほどの魔物が、木の陰から館を見つめていた。
??「……あの子……」
赤い目が細められる。
??「まだ……何も思い出していないのか……」
魔物はしばらく館を見つめたあと、ゆっくりと森の奥へ消えていった。
コメント
1件
ぺいんとくんのペンダントに反応する魔物…あの「その力…まだ持っていたのか」って言葉、めっちゃ気になる😳💭 胸元が熱くなったり、頭の中にあの声がよぎったり、伏線がじわじわ積み上がっててゾクゾクした…! らっだぁたちの優しさも相まって、ぺいんとくんの過去がすごく気になる展開…続きが待ち遠しいです🥀
#君話長いんだよね
永遠に寝たい
115
#ぺいんと愛され
Nera🍀︎❄🐈⬛
267