テラーノベル
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注意!!!!
・モブ太♀
・性行為匂わせ表現あり!
・結構ひどい
・太宰が気持ち悪そうにしている姿が大好きな変態が書いたクソみたいな小説です。
・モブが出てくるよ
どんよりとした重い頭痛と、鼻腔を突き刺す強烈な悪臭で、太宰は意識を浮上させた。
――生臭い。
いや、もっと卑俗で、じっとりとした、人間の体液が腐ったような特有の臭いだ。
異様な不快感に眉をひそめながら、重い瞼を押し上げる。視界に飛び込んできたのは、場違いなほど派手で、悪趣味な色彩の壁紙だった。天井には安っぽい照明器具。湿気を含んだ空気が肌にまとわりつく。どうやらここは、路地裏の片隅にでも佇む、安物のラブホテルのようだった。
太宰は身を起こそうとして、自分の体に一切の遮蔽物がないことに気づいた。
寝返りを打つたびに、いつも肌を包んでいるはずの包帯の感触がない。衣服どころか、文字通り一物も身にまとっていない完全な全裸だった。
その瞬間、心臓が冷たい手で掴まれたかのように、ドクンと大きく跳ねた。
胸の奥からせり上がってくる、得体の知れない不信感と嫌悪感。太宰は痛む頭を片手で押さえながら、必死に昨日の記憶を手繰り寄せようとした。
昨日は、何をしていただろうか。
確か、珍しく国木田の奴が、仕事の愚痴をこぼすために飲みに行こうと誘ってきたのだ。いつもなら適当にはぐらかすところだが、その時は気分が向いて、駅前の騒がしい居酒屋へ足を運んだ。
国木田はいつもの手帳を机に置き、理想について熱弁を振るいながら、ビールをあおっていた。太宰はそれをからかいながら、ちびちびとグラスを傾けていたはずだ。
夜も更けた頃、国木田が「時計の針が予定を回っている。そろそろ帰る」と言って、きっちり自分の分の割り勘を置いて居酒屋を後にした。太宰は「冷たいなぁ、国木田君は」などと手を振って、それを見送った。
そこまでは、はっきりと覚えている。
そのあとは___。
そのあとは、どうした?
もう一杯だけ、と店に残って酒を注文したような気もする。それとも、店を出て夜の街を徘徊したのだろうか。記憶の糸が、そこでぷっつりと断ち切れている。どんなに脳細胞を絞り込んでも、濃い霧がかかったように何も思い出せない。
思考を巡らせていると、徐々に聴覚がはっきりとしてきた。
静まり返った室内で、ずびー、ずびー、と、地響きのような、ひどく不快ないびきが鼓膜を震わせている。
心臓の鼓動がさらに早くなるのを感じながら、太宰は恐る恐る、自分と同じ寝台の隣へと視線を巡らせた。
そこに、男が寝ていた。
年齢は四十、いや、優に五十は超えているだろう。頭髪は薄く、汗と脂で額に数本の髪がみっともなく張り付いている。浅黒くたるんだ皮膚、突き出た太鼓腹。その男もまた、太宰と同じように一糸まとわぬ全裸の姿で、大の字になって眠りこけていた。
男の体からは、何日風呂に入っていないのだろうと思わせるほどの、饐えた体臭が漂ってくる。部屋を充満させているイカ臭い悪臭の源は、間違いなくこの男と、自分との間にあった。
「ひゅッ、……」
喉の奥から、小さく引きつった音が漏れた。肺が急激に縮み、胸が小刻みに上下する。
何が起きたのか、理解したくなかった。しかし、状況のすべてが最悪の事実を物語っている。ポートマフィアの元幹部であり、武装探偵社の一員であるこの自分が、名前も知らない薄汚れた中年の男に、不覚を取ったのだ。薬を盛られたのか、泥酔したところを連れ込まれたのか、それすらも分からない。
太宰はパニックになりかける心を必死で抑え込み、慌ててベッドから立ち上がろうとした。
その瞬間。
どろ、っと、太腿の内側を何かが伝い落ちる、生暖かい感触があった。
恐る恐る視線を落とすと、自身の結合部から、粘度のある白濁した液体が、容赦なく溢れ出ていた。シーツの上にも、すでにいくつかの白い染みが点々と残されている。
さーーーっと、全身の血の気が引いていくのが分かった。指先が氷のように冷たくなっていく。
太宰の脳裏に、最悪の懸念がよぎる。
当たり前のことだが、太宰はピルなんて高尚なものを、普段から常用しているわけがない。自殺志願者であり、自分の命などどうなってもいいと常日頃から嘯いている彼女だったが、見知らぬ男の種を身に宿すという悍ましさは、想像を絶する恐怖となって全身を襲った。
気持ちが悪い。吐き気がする。今すぐこの体から、あの男の痕跡をすべて消し去りたかった。
太宰はもつれる足取りのまま、這うようにして備え付けのユニットバスへと駆け込んだ。
乱暴にシャワーの栓をひねると、冷たい水が頭上から降り注ぐ。すぐに温水に変わったが、温度などどうでもよかった。太宰は床に膝をつき、自身の体内に指を差し入れた。
「つ、……あ、極寒、だ……」
声にもならない悲鳴を上げながら、必死に指を動かす。奥深くに刻み込まれた、粘り気のある嫌悪の塊を、掻き出すようにして洗い流していく。指を動かすたびに、男の脂ぎった顔や、自分にのしかかっていたであろう重みが幻覚のように脳裏をよぎり、胃の底から酸っぱいものがせり上がってきた。
何度、中を濯いだだろうか。皮膚が赤く腫れ上がり、ヒリヒリとした痛みが走るようになっても、太宰は狂ったように指を動かし続けた。どれだけ洗っても、自分の内側が永久に汚されてしまったかのような錯覚が消えない。
ようやく指を引き抜き、シャワーの湯で全身をこれでもかと洗い流した後、太宰は壁に寄りかかって深く息を吐き出した。鏡に映る自分の顔は、幽霊のように真っ白だった。
バスルームを出ると、ベッドの上の男は相変わらず醜いいびきをかき続けている。太宰はその姿を一瞥することすら忌々しく、床に散らばっていた自分の衣服を拾い集めた。
幸いなことに、衣服が破られているような形跡はなかった。しかし、いつもの砂色のコートやシャツを身につける手が、わずかに震えている。包帯を巻き直す余裕すらなく、ただ衣服で肌を覆い隠すのが精一杯だった。
最後に、壁に掛けられた安物のデジタル時計に目をやる。
現在の時刻は、昼の前の午前十時。
国木田と別れたのが昨晩の午後九時過ぎだとすれば、少なくとも半日は経過していることになる。
半日間。その短くも長い時間の間、自分はこの部屋で、あの男に何をされていたのか。
考えようとするだけで頭痛がひどくなる。太宰は財布からいくらかの紙幣を掴み出すと、それをテーブルの上に叩きつけるように置いた。男へのせめてもの手切れ金のつもりか、あるいは、この最悪な現実を「ただの取引」として脳内で処理したかっただけなのか、自分でも分からなかった。
重い足取りでホテルの部屋を後にする。廊下は薄暗く、消毒液と芳香剤が混ざったような妙な臭いがしていた。エレベーターを降り、フロントの自動精算機を通り抜けて、外の光の中へと踏み出した。
まぶしい太陽の光が、容赦なく太宰を照らし出す。
五月の風は心地よいはずなのに、今の彼女にとっては、肌を切り刻む刃のように不快だった。太宰はコートの襟を深く立て、俯きながら横浜の雑踏へと紛れ込んでいった。
頭の中にあるのは、一刻も早くこの事態を処理しなければならないという焦燥感だけだった。
緊急避妊薬。いわゆるアフターピルを入手しなければならない。
しかし、通常の病院に行けば、身元を調べられたり、事情を深く聴かれたりする可能性がある。武装探偵社の「太宰治」が、どこの馬の骨とも知れぬ男に手籠めにされて避妊薬を求めているなど、絶対に知られるわけにはいかなかった。特に国木田や、あの聡明な乱歩の耳にでも入れば、すべてが破綻する。
――闇医者か。
真っ先に浮かんだのは、かつての古巣であるポートマフィアのボス、森鴎外の顔だった。だが、あの男にこの弱みを握られることだけは、死んでも避けたかった。あいつは間違いなく、この状況を利用して自分を再びマフィアに引き戻そうとするだろう。
ならば、ヨコハマの裏社会に通じている、口の堅い個人経営の闇医者を頼るしかない。
太宰は記憶の引き出しをひっくり返し、裏通りの雑居ビルに店を構える、ある老医師の存在を思い出した。かつてマフィア時代に、表沙汰にできない傷を負った構成員の治療を非公式に依頼していた場所だ。
足早に目的地へと向かう。歩くたびに、下腹部に鈍い違和感が走り、衣服の擦れる感覚すらも昨夜の「行為」を連想させて吐き気を催させた。
目的の雑居ビルは、中華街の裏手のひっそりとした路地にあった。錆びついた階段を上り、看板も出ていない鉄の扉を叩く。
しばらくして、怪訝そうな顔をした白髪交じりの老医師が顔を出した。彼は太宰の姿を見るなり、驚きに目を見開いた。
「……お前は、太宰か。生きていたのだな。それに、その様子は……」
「頼みがあるんだ、先生」
太宰は感情の消えた、冷徹な声で言った。いつもの軽薄な笑みはどこにもない。
「事後避妊薬が欲しい。それと、私の体から採取できる限りの『モノ』を検査して、性病の有無を調べてくれないか。もちろん、この件は誰にも漏らさないでほしい。相応の報酬は支払う」
老医師は太宰の青ざめた顔と、微かに震える指先を見て、すべてを察したようだった。裏社会の人間として、余計な詮索はしないのが彼の流儀だ。
「……中へ入れ」
静かに促され、太宰は薄暗い診察室へと足を踏み入れた。
簡易的な診察台に横たわるよう指示される。普段、男たちを翻弄する側の女性として生きてきた太宰にとって、このように無防備な姿で診察を受けること自体が屈辱の極みだった。しかし、背に腹は変えられない。
老医師は手際よく作業を進めた。綿棒で内側の分泌物を採取する際、太宰は奥歯が痛くなるほど唇を噛み締めた。シャワーで激しく洗い流したせいで、粘膜が傷ついており、鋭い痛みが走る。だが、その痛みがむしろ、現実に引き戻されるようで、少しだけ彼女の心を落ち着かせた。
「……洗い流したと言っていたが、念のためだ。これが薬だ。今すぐここで飲め」
渡された小さな錠剤と、水の入った紙コップ。
太宰はそれをひったくるようにして口に放り込み、一気に飲み干した。
喉を通り抜ける固形物の感触に、ようやく少しだけ、胸の内のパニックが収まっていくのを感じた。これで、最悪の事態(妊娠)だけは免れるはずだ。
「検査結果は三日後に出る。個人端末に暗号化して送る。それでいいな?」
「ああ、助かるよ。ありがとう、先生」
太宰は財布から厚みのある札束を取り出し、机の上に置いた。老医師はそれを黙って受け取り、引き出しに仕舞った。
「太宰。お前ほどの者が、一体どうしてこんなドジを踏んだ」
去り際、老医師がぽつりと言った。そこには微かな同情が含まれていた。
太宰は扉に手をかけたまま、振り返らずに答えた。
「さあね。私も焼きが回ったということだろう。……あるいは、ただの悪い夢だよ」
鉄の扉を閉め、再びヨコハマの街頭へと戻る。
薬を飲んだとはいえ、気分の悪さは一向に改善しない。それどころか、アフターピルの副作用によるものか、軽い吐き気と目眩が彼女を襲い始めていた。
気がつけば、正午を過ぎている。
今日は探偵社の出勤日だった。すでに国木田から、何十件もの着信と怒りのメッセージが届いていることだろう。
太宰はコートのポケットから携帯電話を取り出した。画面を見ると、予想通り「国木田独歩」の名前で埋め尽くされている。
『おい太宰! 今どこにいる! 予定の時間を二時間も過ぎているぞ!』
『また川に流されているのか! いい加減にしろ!』
いつも通りの、容赦のない、しかしどこか安心させる怒声のテキスト。
太宰はふっと、自嘲気味な笑みを浮かべた。
もし、昨夜の別れ際、国木田に「引き止められて」いたら。
もし、自分がもっと警戒していれば。
いや、意味のない仮定だ。起きてしまったことは変えられない。この汚濁に塗れた事実を抱えたまま、自分はこれからも「探偵社の太宰治」を演じ続けなければならないのだ。
太宰は震える指で、いつもの軽薄なトーンの返信を打ち込んだ。
『ごめんよ国木田君〜。ちょっと素敵な川を見つけてね、流されていたら時間を忘れちゃったんだ。今から向かうよ』
送信ボタンを押し、携帯をポケットに仕舞う。
太宰は深く息を吸い込み、自分の顔に「いつもの仮面」を貼り付けた。笑顔を作り、背筋を伸ばし、何事もなかったかのように歩き出す。
下腹部の鈍痛と、体内に残るあの男の「臭い」の幻影を、心の奥底の、決して誰も触れられない暗闇へと、深く、深く、閉じ込めながら。
コメント
6件
どんなに後悔しても、現状は変わらないと考えるのが、太宰さんらしいと同時に残酷だなと思いました!! (でも、そこが良いです!) 最終的には、普段の「探偵社の太宰治」である仮面を外すことが出来ない所が切なく感じました。 いつか、仮面を外して心の底から楽しく過ごせる日が来ることを願ってます!!
いや……これは、重い。重すぎる。 太宰の、声にならないパニックと、それでも冷静にアフターピルを求めて動く判断力の同居が、読んでいて胸を締め付けられました。「極寒だ」と呟くシーン、あの自分の内側を指で掻き出す描写、そして最後は「笑顔の仮面」を貼って日常に戻ろうとする——そのギャップが、想像以上に痛いです。 何より、太宰のこういう「無防備な隙」を描くことに躊躇いがない作者さんの覚悟というか、そういう方向性を感じました。 続き、気になりますね。どうなるんだろう。
#太宰治(文豪ストレイドッグス)
#フョードル・ドストエフスキー(文豪ストレイドッグス)