テラーノベル
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最終話です!
よろしくお願いしますヽ(*^ω^*)ノ
ガチャ、と扉が開く音。
「ごめんごめん!お待たせ!」
聞き慣れた声。
死神の肩がびくりと震える。
振り返ると、 そこにはタオルで髪をわしゃわしゃ拭きながら笑っているレトルトがいた。
「よーし!! 今日もやるぞー!」
いつもの明るい声。
明日、死ぬというのにそんなこと微塵も気にしていないような笑顔。
その姿を見た瞬間、死神の 胸がぎゅっと痛んだ。
でも次の瞬間には 無理やり口角を上げた。
いつもの顔で、 いつもの笑い方で。
全てを隠すように一一。
『おっせーよレトさん!!』
大げさに声を上げる。
『今日はミスるんじゃねーぞ!』
死神はレトルトの横に座る。
レトルトは「うるさい!」と笑った。
その笑顔を見て、死神も笑う。
(大丈夫、ちゃんと笑えてる)
死神は胸の痛みを誤魔化す様に最後まで笑い続けた。
最期の日。
朝、レトルトはいつもの時間に目を覚ました。
顔を洗って、支度をして、家を出る。
レトルトはいつも通りで、何も変わらなかった。
今日で最期だというのに。
今夜、自分の命が終わるというのに。
驚くほど、いつも通りだった。
仕事場に着いて 白衣を着て、 慣れた手つきで仕事を始める。
いつもと同じように命と向き合い、原因を探して、静かに送り出していく。
まるで明日も同じ様に仕事をするかのように。
明後日も、その次も、 ずっと続いていくみたいに一一。
死神は隣で、それをただ見ていた。
何度も昨夜のことを 言いそうになって、その度に口を閉じた。
(俺、 一緒に行けないんだ。)
言葉は喉で止まる。
一緒にいるためには、レトさんを地獄へ連れていくしかない。
でも。
そんなこと――。
死神は何も言えないまま、レトルトは仕事を終えた。
「お疲れ様でした」
上司と後輩にいつものように挨拶をするレトルト。
誰も知らない。
これが最後の挨拶だなんて。
レトルトは軽く頭を下げて仕事場を出る。
茜色に染まる空を背に2人で 並んで歩く帰り道。
レトルトが突然笑った。
「もう今日死ぬし、スーパー寄らんでいいな!」
ケラケラ笑う。
その笑顔が、キヨの胸を抉った。
死神は何度も口を開いた。
『レトさん、あのさ……』
死神は言いかけて口を閉じる。
何度も何度も言葉を飲み込む。
レトさん、 俺さ。
本当は――。
何度も。
何度も。
何度も。
でも最後まで、言えなかった。
そして――とうとう、その時刻が来た。
部屋の中は静まり返り 外から差し込む月の光だけが、白く床を照らしている。
レトルトは窓際に立ち、目の前に立つ死神を見つめていた。
死神は黒く長いローブを纏い 深く被ったフードでいつも笑っていた顔は見えない。
手には大きな鎌を握りしめ静かにレトルトの前に立っていた。
その姿は、命の終わりを迎えに来た死神そのものだった、ら
レトルトはその姿を見て、少し目を丸くする。
それから、ふっと笑って、
「……なんか凄い本格的やなぁ。 その鎌、ほんもの?」
呑気な声で死神に喋りかける。
しかし、死神は何も言わず ただ立っている。
ローブの下で鎌を握る手が震えていた。
そして、死神はゆっくり口を開いた。
『……レトさん、 最期に……言い残すこと、ない?』
その言葉に、レトルトも少しだけ姿勢を正す。
そして、フードの奥の見えない顔の向こうをまっすぐ見た。
「….キヨくん、 本当にありがとう」
レトルトはとびっきりの笑顔で笑った。
「これからも、ずっと大好きやで!」
その笑顔は 幸せそうで、 後悔なんて一つもない顔だった。
その瞬間、死神 の視界が滲む。
(だめだ。 泣くな。)
(笑え。 最後だから。)
でも無理だった。
声が震える。
『……レトさん、 俺も……』
喉が詰まる。
苦しい。
それでも絞り出した。
『俺も!!大好きだ!!』
その言葉と同時に――
カチリ。
時計の針が、0時00分を指した。
ローブの奥。
死神の鎌を握る手が震えていた。
(いやだ。できるわけない。)
(目の前にいるのは、100人目の魂なんかじゃない。 レトさんだ。)
(毎日一緒に笑って、 歌って。
喧嘩して。
好きになった人だ。)
しかし一一
死神としての最後の役目。
死神は強く目を閉じる。
(……ごめん)
そして、 大きな鎌が――レトルトへ向かって振り下ろされた。
一瞬、 月明かりが銀色に光る。
そして一一一ドサッ。
レトルトの身体が床へ倒れた。
静かだった。
あまりにも静かで さっきまで笑っていた空間とは思えないほどだった。
『……レト、さん?』
返事がない。
けれど次の瞬間、 レトルトの身体が淡く光り始めた。
胸のあたりから、柔らかな光が溢れていく。
白く、優しい光。
それは少しずつレトルトの身体を包み込んで
やがて、ふわりと浮かび上がった。
白い塊。
小さくて、温かくて、 命そのものの様な光。
キヨは涙で滲む目のまま、その光を見つめる。
そして、光はゆっくり形を変え
次第に淡く輪郭ができ始めた。
腕が。
髪が。
顔が。
少しずつ、人の形になっていく。
そして、 そこにいたのは 見慣れた姿だった。
『……レト、さん』
光の中から現れたのは、 間違いなくレトルトだった。
「キヨくん」
いつも自分を呼んでくれる優しい声。
温かい光を纏ったレトルトが優しく微笑んでいた。
その瞬間、キヨの 手から鎌が落ちた。
『レトさん……!!』
そしてキヨはレトルトを 力いっぱい抱きしめた。
壊れてしまいそうなくらい強く抱きしめた。
今まで、何度願っただろう。
隣にいても触れられなかった。
笑う顔も。
怒った顔も。
眠る顔も。
全部目の前にあるのに、抱きしめることだけはできなかった。
何度、こうしたいと願ったか分からない。
キヨは もう涙を止められなかった。
『レトさん……っ』
声がぐしゃぐしゃになる。
『ずっと……ずっとこうしたかった……!』
抱きしめた腕に力が入る。
レトルトも目を潤ませながら、小さく笑った
。
そしてキヨの背中にそっと腕を回す。
「……俺も。 ずっと、キヨくんを抱きしめたかったよ」
二人とも泣いていた。
嬉しくて。
苦しくて。
やっと触れられたことが、幸せで。
そして、二人は額を寄せ合い肌が触れ合う幸せを感じ合っていた。
しばらくすると、白くて柔らかい光がレトルトの身体を包みこみキヨの 腕の中でその身体が少しずつ透け始めた。
キヨはその変化に気づいて、ぎゅっと唇を噛んだ。
いやだ。
離したくない。
お願い…あと少しだけ。
そんな気持ちを押し込めながら、涙を拭う。
そして、無理やり笑った。
『……レトさんの光、優しいな』
『俺が今まで見てきたどの魂よりも……綺麗な魂だ』
レトルトの全てが愛おしかった。
『レトさんの魂……本当に汚れてないんだな』
涙を拭いながらキヨは思った。
(やっぱり レトさんは、ちゃんと幸せな場所へ行く人なんだ。 俺なんかと違って綺麗な人なんだ)
キヨは涙を拭いそっと外を指差した。
『……レトさん、 そろそろ….行ったほうがいいんじゃね?』
その言葉にレトルトがゆっくり振り返ると 外には、一本の道ができていた。
夜空へ続く光の道。
白く輝いていて、星の欠片を並べた様な道が
どこまでも続いている。
まるで、天国へ続く道。
「綺麗な道やなぁ」
レトルトは目を細めた。
優しい光がレトルトを照らして、透け始めた身体をさらに白く輝かせていた。
レトルトは嬉しそうに笑っていた。
そして、くるりと振り返り まっすぐキヨを見て、
「キヨくん、行こう!」
そう言って、キヨに手を差し出した。
反射的に差し出された手を握ろうとしたが
ぴたりと止まる。
本当はその手を取りたかった。
一緒に歩きたかった。
ずっと隣にいたかった。
でも――。
あと少しのところで 指先が震えた。
そしてキヨは笑った。
今までで一番上手な笑顔を作った。
『……実は俺さ』
声が震えて顔が引き攣りそうになる。
でも…..笑う。
『死神終了の手続き?みたいなやつ?しないといけないみたいでさ〜』
めんどくさそうに手をブラブラさせながら
キヨはレトルトに話す。
『それ終わったら、レトさんのとこ行くからさ! だから…..ごめん! 先行っといて?』
おどけたように笑う。
ちゃんと笑えていたか分からなかった。
「えーー!!」
レトルトは頬を膨らませる。
「一緒に行くって約束したやん!」
怒ったような顔だったが 口元は笑っていた。
「もー! 先行っとくからな! 絶対すぐ来てな?」
キヨは笑った。
泣きそうになるのを必死に堪えて。
『……うん』
小さく頷く。
『絶対行くからな!』
嘘だった。
でも、最後だけは…..。
最期だけは、レトルトには笑っていてほしかった。
「先行って待ってるからな!」
レトルトはそう言って、いたずらっぽく笑った。
キヨは最後にもう一度だけレトルトを抱きしめた。
そして、
『あの道、渡り始めたら絶対振り返ったらだめだよ!か
レトルトが少しだけ首を傾げる。
キヨはにっと笑った。
『だからさ、いつもの歌歌いながら行けよ!
俺も一緒に歌うからさ』
レトルトはふふっと笑った。
「うん!わかった!」
そして、キヨは一歩近づいてレトルトの軽く背中に手を当てる。
『ほら』
ぽん、と押した。
『行ってこい!』
その瞬間、 レトルトの足が光の道へと踏み出した。
白い光がふわりと広がり、 足元から静かに身体を包んでいく。
レトルトは一瞬だけ振り返りかけたが、キヨの言葉を思い出した様に少しだけ立ち止まり、また歩き始めた。
そして、
『「つまずいて転んで 泥んこの両手で
草を分けたむこう いま僕らここできっと見つけている 身にならない日々も」』
「君がいてくれたら」
『君がいてくれるから』
『「ずっと前進しよう」』
レトルトの背中が少しずつ遠ざかる。
それでも歌は途切れなかった。
キヨは最後まで歌い続けた。
声が届かなくなるその瞬間まで一一。
もう届かないと分かっているのに、キヨの口が勝手に動いた。
『……レトさん』
『行かないで…』
“十三月”
存在するはずのない1カ月。
死を待つ男と、死を運ぶ死神。
これは、2人が過ごした最初で最期の物語。
――もし、自分の死期を知ったら
あなたは、何をしますか?
終わり
ご購読頂き、ありがとうございました!
今回のお話は少し悲しい終わり方にしてみましたが、いかがだったでしょうか?
是非、感想など頂けると嬉しいです☺️♡
リクエストも募集していますので
リクエスト箱に是非コメントくださいヽ(*^ω^*)ノ
最後までお付き合い頂きありがとうございました!
魑魅魍魎
コメント
8件

ウワァ"ァ"ァ"ァ"ァ"。( ゚இωஇ゚)゚。 もう1ヶ月分くらいの涙出ました… いつもならハッピーエンドが多いのに今回は悲しい最後でもうココロノジュンビガできてなかったですぅ!!⁝( `ᾥ´ )⁝ それでも久しぶりに泣くことができてなんだかスッキリしました 明日命日かも それにとても考えさせられました もしいつ死ぬのか分かったなら、大切な人と一緒に過ごして居たいですね 素敵なお話ありがとうございます

もう涙で画面が見えないよ……誤字あったらごめんね…。 枕がびちゃびちゃになったんですけども?? ほんっっとに魑魅魍魎さんは私の涙腺を崩壊させるのが得意ですね…!多分魑魅魍魎さんの小説で過去一泣いたかも。 バドエンはしぬって…最後に二人で「前進しよう」って言ったところでもう枕が犠牲になってました。 今回も素晴らしいすぎる作品、ありがとうございました!!!!!!!!!

とても悲しい展開でしたね、!お互い凄い思い合ってて素晴らしすぎました!!もし生まれ変わったら来世で結ばれてほしいですね、、 今回も素敵な作品を拝見さしていただきありがとうございました!
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