コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ふわふわした、あたたかく美しい世界を漂っていた気がする。そこで何をしたのか、なぜ居たのか、まずこれは本当なのかも分からない。
記憶はぼんやりしているけど、とにかくまだ、そこに居たかったのは分かる。
意識の外側から、けたたましいアラーム音が響くのを感じる。ああ、朝が来たんだな…と思うと同時に、ゆっくりと意識がこじ開けられる。
ぼやけた視界が少しずつ明るくなるにつれて、私は逆にどんどん苦しくなってくる。
朝起きて髪のセットやメイクをして、バタバタと朝ごはんをかきこんで、ダッシュで職場へ向かう。こんな今までの生活が、本当に嘘だったかのようにできない。
身だしなみも整えてはいたけど、特段おしゃれではなく、それなりではあった。朝ごはんもトーストに卵を乗せただけ。更にいつもギリギリで、走って職場へ行くという、余裕も上品さも無い朝だった。
それでも毎日何かと心地よかったのは、その世話しない日常の中に、あの人があたたかさを分けていてくれたからだ。
「あぁ…、戻ってきてくんないかなぁ」
酒やけした、自分から出たとは思えないようなか細い声が、部屋に響きもせずに消えていく。
情けなくて軽く笑って、私はアラームを止めることもせずに天井を見つめていた。