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#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
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#探偵
橘靖竜
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あれから数日、私はこの家で単なる同居人のように寝泊まりしている。
特に拒否されることも強要されることもなく、かと言って私を存在する人として接してくれる。
家は一階建てでそこそこ大きく物置になっていた部屋を1つ貸してくれた。
持参物も管理できているし着替えだって大体は自分の分だけでも洗濯している(たまに言売さんが風呂に入った後の脱ぎっぱを洗濯してしまうがあまり気にしていない)。
ここに来てから良くも悪くもストレスを感じることは明らかに減った。
しかし定期的に訪れる女の子の特大ストレスイベントが始まってしまっている。
「…はぁ」月二夜
しかも本日の天気は雨、特に痛みが酷い。
それにここには私の他には女性が1人もおらず打ち明けるにも少し抵抗を感じてしまうのも少しストレスかもしれない。
今日はあまり動かずに部屋で掛け布団を丸めてお腹を暖めることにする。
コンコンコン
「月二夜ー?今日全然出てこないけど平気か?」芦兆
ノックだけして戸越しに呼びかけてきた。
「えっと…気分が悪くて…今日はゆっくりやすみt…」月二夜
この時お母さんだとなんの前触れもなく部屋に入ってくるし、こんなこと話したって「そのぐらい誰だって気分が悪くなる、我慢して学校行きなさい」って言う。
お母さんも一応女性だからそう言われると言い返せず自分を押さえ込むしかなかった。
言いきる直前に嫌なことを思い出してつい口が止まってしまった。
「そうか、あまり無理はするなよ」芦兆
そう言って彼はその場から立ち去ってくれた。
芦兆さんを含め、それは普通のことなのかもしれない。
でもそれを受けられなかった私にはとても優しくて暖かくて…なんか胸が締め付けられるようなものに感じている。
でも…
(俺はそれ以上の責任をとれる覚悟までは持ってない)
その言葉が余計に私の心を突き刺してくる。
彼はきっと世間一般の正しいことや間違ってることに対し、どちらにも同じ価値観から評価できる変わり者なんだ。
それは誰にでもできる訳じゃないし、下手したら変質者と思われても不思議じゃない。
でもそれは何に対しても極力特別扱いはしないということ。
それ自体は私のお母さんのしてることと同じ。
じゃあ芦兆さんの普通ってなんなんだろう。
結局私はそれを愛と勘違いしているただの嫌われ者なのだろうか。
結局私は誰にも………。
そう思ってしまう。
雨粒が屋根を叩く音、地面を叩く音、水溜りに滴る音…そして下腹部の鋭く重みのある痛み、さらに自身の鼓動までもが私の意識を揺らしている。
全てがこの現実から私を引き剥がそうとしているような感覚、しかし痛みだけが私をたしかに現実にとどめようとしている。
喉が乾いたしお手洗いにも行きたい。
………ナプキンは水に流せないからゴミ箱行きになるけど…
くっさ、え?血?きもちわる…
とか言われたら今の私じゃもう立ち直れない。
考えていても仕方ないので済ませるものだけ済ませるために上体をおこs
ジワッ…
「うっ…」月二夜
この感覚だけはどうしても慣れない、思わずしかめてしまう。
どうして女にはこんなものがあるんですかねぇ。
進化が足りてないんじゃないの。
替えのものをもってお手洗いへ。
今回も中々、そして今回も中々臭い。
苦手を通り越してもはや癖になりつつあるかもしれない。
でもストレスには変わりなし。
水分補給ついでに一応ニオイ防止でビニール袋に包んだ使用済みのそれを台所のゴミ箱に……いや、結局ちょっと臭うし赤いのも少し見えてる…。
一応ちゃんと芦兆さんに相談するしかないか…。
「あっ、出てきた、ん?なんだそれ」芦兆
その台所にちょうどいた。
「あ、ぅいや、これは…えーと…」月二夜
排泄物以上に見せたくないものだから後ろに隠しちゃうし、男性相手にあまり言いたくないことだしやっぱり言い出しにくい。
でもまだ帰る予定が決まらないならちゃんと話すべき…。
「生…理…来て…その代え物…」月二夜
うーん、絶対伝わらない★
「お、おう…あんま無理すんなよ」芦兆
「………あと、これ臭うから早めにゴミ出ししといた方がいいかも」月二夜
「分かった、ゴミ袋に入れといて、後で捨てに行くから」芦兆
………あれ?思ってた反応と違う。
私は芦兆さんの言う通りそれをゴミ袋に入れ、水分補給もして部屋に戻った。
なんかなぁ…。
なんでこんな…。
こんなに…。
下腹部の鋭い痛みも、無意識に考えちゃう嫌なことも全部芦兆さんになっちゃって…
こんな状態なのに弱い電流が流れてるみたいに甘く疼いてくる。
…同時に
また芦兆さんのこの前の言葉が自分に針を向く。
責任と覚悟。
甘えてばかりではいられない。
ここに居続けるのも、芦兆さんのそばにいるのも互いに責任と覚悟が必要。
私は…芦兆さんの余裕のない部分を補って余りある存在にならないといけない…。
私にそれが出来る…?
もしできなかったら…やっぱりここから…
「好きな人?あなたはそれと含めて文武も両立させないといけないのよ?」月二夜のお母さん
「まぁ…相手はよく見てよく考えて選んだ方がいいよな」月二夜のお父さん
「お前が好きになる相手はお前のこと好きになるわけないだろw」生徒A
うるさい…私は…あの人のことを…。
あの人のことを馬鹿にするやつは…なんだろうと…
いつ眠りについたのだろう。
豆電球も付けていなかったので部屋は真っ暗闇。
この部屋含めて、廊下からも他の部屋からも何も聞こえない。
唯一聞こえるのは未だ続く雨の音。
急に不安が押し寄せる。
暗闇の中、何も家から物音がしない。
誰もいない?
芦兆さんは?
どこ?
もしかしてこの家から…。
そんなこと滅多な事がなければ起こらないはずなのにその滅多な最悪を妄想し軽くパニックを起こし始めていた。
下腹部が無数の針で刺されているような激痛、脳内で罵って嘲笑う取り巻きの人間達、今自分に与えられている何もかもが最悪を煽ってくる。
どうしようもなく起き上がる。
途端、目の前が白くなり全身の感覚が一瞬──
バタンッ
今回は特別量も酷いのか…こんなことはじめてだ…でも動かないと…。
どんなに無様でもいいからこの部屋から一旦出ないと…
一度倒れた体が中々動かない。
何とか壁に身を預けながら立ち上がる。
戸までもう少し…。
取っ手に指をかけて横に引こうとするも指先が痺れてるせいかいつもの何倍も重く感じる。
早く…開けないと…芦兆さんが…
通れる程度に開けてなんとか部屋から出ようとした時、躓いてしまう。
「うおっと…おい大丈夫か、なんかすごい音がしたから来てみたんだけど…」芦兆
「──ア…」月二夜
芦兆さんは倒れそうな私を受け止めている、さらには倒れないように背中に手を回して抱き寄せていた。
「歩けるか…?」芦兆
私は芦兆さんの胸の中で静かに首を横に振った。
実際一人で歩けそうにないのもあるけど…やっぱり安心するから離れたくない、そして今は人の体温がやけに心地よい。
「不安ナノ…」月二夜
思いがけない彼の登場もあり自然と口から零れ落ちていく。
「コノ場所ガ好キ…芦兆サンノ事ガ……好キナノ…ココニイタクテ…アナタノ傍ニイタクテ…ダカラ…イナクナラナイデ…」月二夜
「何言ってんだよ、俺はずっとここにいるし呼べばすぐ行くよ、起きてたらだけど…だから、まぁ…俺で十分なら…つらくなったら俺を呼べよ…」芦兆
芦兆さんは照れくさにも静かな声でそう言ってくれた。
やっぱり…私はあなたが好き。
「うんっ…」月二夜
どうしようもないもの以外はなんでも彼の言葉で吹き飛んでいく。
誰がなんと言おうと…私はあなたについていく。
例えそれが曖昧でバカバカしいと蔑まされようと。
グゥゥゥゥ…
そういえば朝から何も食べてない…不安が吹き飛んで食欲が湧いてきた。
「なんか食べる?」芦兆
「………食べる」月二夜
痛みと照れを残して、しばらく彼の胸の中で曇っていた景色が晴れる余韻に浸っている。
コメント
1件
うわあ、このエピソードすごく良かったです……。♡♡♡のしんどさと、それにまつわる過去の傷が丁寧に描かれていて、月二夜の「不安ナノ…」って零れた言葉が刺さりました。芦兆さんの「俺で十分なら」っていう返しも、過剰じゃなくて、でも確かに寄り添ってて、ああこの人だからこその優しさだなって。最後の「食べる」で少し笑えて、ほっとしました。続きが気になります。