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#ヒューマンドラマ
澪
134
#相談女
澪
218
翌朝
サユリは平常心を装い形だけでもいつも通りに出勤する
しかし当然噂は広まっており一気に冷ややかな好奇の視線がサユリ一点に集中した
サユリは無意識に指が白くなるほど握りしめた鞄を肩にかけ、自分の席へと重い腰を下ろす
だが今のサユリの耳には周りの人間の笑い声が全て自分の全身を突き刺す毒針のように感じる
当然仕事など集中できるはずもなく最後の逃げ場であるトイレへと向かった
――しかしトイレにもサユリの居場所などなかった。
「よく来れるわよね…」
何とも言えない引き攣った笑みを浮かべた美香が哀れな生き物を見るような目線をサユリに向ける
一方のメアリは憤慨し
「アンタ最低よ!広子がどんな思いで…!」
とサユリの襟首に掴みがかるも、サユリは離せその腕を力技で振り払う
メアリはサユリの力には敵わず壁に背中をぶつける
昭子は個室から出てくるやいなや。
「あっ 山取さん慰謝料払えました?」
と何気ない笑顔で尋ねる
この純粋だが凶器となる刃物でサユリのプライドは抉り殺されトイレの扉を蹴るように開けて飛び出していった
「あははっ!逃げた〜!」
サユリの鼓膜を突き破る勢いで追い討ちをかけてきたしおりの笑い声がトイレに響き渡っていた
そしてその後の裁判でサユリは敗訴し慰謝料を払うことが確定してしまった
その日の夜
サユリは自室のベットに横たわっていた
「はぁ〜なんで私が悪人扱いされないといけないわけ〜?」
と僅かなプライドの残骸を掴むように拳を握り天井に手を伸ばす
「まぁ三百万くらい誰かに相談したら払って貰えるでしょ …そうだ!久しぶりに鳥羽先輩に連絡してみよっ!」
そう高を括っていた…が。
『あー…そういうのはもういいよ ごめん 他を当たってくれる?』
サユリは一方的に通話を切られて真っ暗になった画面を呆然と見つめていた
サユリの相手をすると厄介事に巻き込まれるともう話が広まっているのか サユリの話を聞いてくれる人は誰もいなくなった
――ファミレス
サユリは今アルバイトを掛け持ちしながら慰謝料を支払っている
「あー疲れた…ちょっと休憩…っと」
慣れない立ち仕事で疲労がどっと溜まり床に座り込んだ瞬間鼓膜を劈くような怒号が飛んできた
「勤務中に座るなァ!!お客様を案内しろ!!」
「ちっ…」
――カラオケ店
「お客様〜 お飲み物お持ちしまし…きゃあ!」
サユリはアイスコーヒーの入ったコップを乗せたお盆を片手に躓き派手に転んでしまった
コップは割れ中のコーヒーは客が持参していたぬいぐるみにかかる
「あーっ!!!俺のぬいぐるみにコーヒーがぁー!」
紫苑色のミディアムウルフの男は頭を抱え絶叫する
サユリはあまりの発狂ぶりに気圧され謝罪をするも相手はサユリを責め立てる
「どうするんだよ!これ限定販売だったのに!!」
「す、すみません…!」
――帰宅後
パリーンッ!!!
鏡の破片が床に散乱しスマホの画面は白いヒビが入り端のフィルムはポロポロと剥がれかける
「何なのよ どいつもこいつも…!」
今となってはパートナーどころか相談相手すらいない
「ねぇ…誰か相談に乗ってよ…!」
しかしその言葉に答えてくれる者は誰もおらずサユリの悲鳴は虚しく空気に溶けていったのだった
【完】
コメント
1件
お疲れー!読んだ読んだ「終焉」最終話。 うわ、これは…心にズシッとくるね。自分では「なんで私が悪人扱い?」って本気で思ってるサユリの感覚のズレが、逆にリアルで怖い。トイレのシーンとか、しおりの「逃げた〜!」の笑い声、追い詰める側の容赦なさが生々しかった。結局誰にも頼れずに鏡割っちゃうラスト、救いがないけどリアルだなあ。ラストまで一気に読ませてくれる話だった! 完結お疲れさま、澪さん!🔥