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#💛💜
愛日
1
神奈川県某所。
依頼を受けて神奈川県警の所轄署で話を聞き、女子高生が行方不明となった現場へと連れて来てもらった。
河川敷で、土手に草むらが広がっている場所。
川岸には木が何本も植えられているので、目黒はすぐに木の方に向かうと、木の記憶を辿り始めた。
💚「あの。ちょっと車、貸してもらえませんか? 調べたいことがあるので」
言いながら持っていたノートパソコンを見せると、警察官は頷いた。
「いいですよ。こちらの車を使ってください」
💚「ありがとうございます」
お礼を言って、阿部と渡辺が二人で車に乗り込み、阿部は運転席の座席後ろについているテーブルを出して小型のノートパソコンを乗せる。実際には使わないのだけれど、阿部の異能を暴かれにくくする為のカモフラージュだ。
そして、隣に渡辺がいるのは、阿部が電脳空間に入っている間の護衛をする為と、こちらもカモフラージュの為。阿部がそこにいないと悟られないようにしている。
目黒の近くには向井と深澤がいて、二人はその周辺で変わったことがないかを見て回る。
阿部と目黒、先に戻って来たのは阿部で、すぐに車から降りてきた。
💚「ふっかぁ! ちょっと戻って来てー!」
💜「ん?」
呼ばれた深澤が阿部の方に近づいて来る。
💜「阿部ちゃん、どうした?」
💚「その子の携帯電話の位置情報が分かったよ」
💜「え、早っ」
💚「位置情報くらいならすぐに調べられるから。この住所、警察の人に教えてもらえる?」
言いながらメモ紙を深澤に渡す。
💜「オッケー。じゃあ、これで終わり?」
💚「んーん。多分ここにはいないと思うよ。ここ、パーキングエリアだよ。隙を見て携帯電話を投げ捨てたのか、攪乱するのに捨てられたか……」
💜「なるほどね。一応伝えて、警察には携帯電話の回収に行ってもらうね」
💚「よろしくー」
先ほどの警察官の方に向かった深澤を見送り、阿部と渡辺も目黒の方に向かうと、目黒も木から手を離すところだった。
💙「めめ、どう?」
🖤「事件現場であることは間違いないですね。自転車がパンクして、ここで止まってるところを男の人に声かけられてました。直すのに道具が必要だからって男の車に近づいて、そのまま乗せられて行ったって感じ」
💚「じゃあ、複数犯だね」
🧡「えっ、なんでわかるん?」
💚「誘導役と運転手が最低でも必要になるから。車の中にもっといた可能性もあるね」
🧡「なるほどな」
💚「その車、どっちに向かったかわかる?」
🖤「あっちの方」
指さす方は川の上流。
💚「パーキングエリアとは別の方向になるから、携帯電話の方に行っても何も出なさそうだね。めめ、車のナンバーってわかる?」
🖤「……もっかい見る」
憶えていなかったらしい目黒はもう一度、木の記憶を見に行って確認してきてくれた。
そのナンバーを書き留めて、阿部も再び車に乗り込むと、電脳空間に入り込む。その車だけに絞り込んで行方を追う。今回は、少々負担は大きいけれど防犯カメラ映像ではなく直接、対象の車を探し出すことにする。車の現在地がわかれば、大きく近づくことになるのだから。
阿部の目が緑から濃い碧へとグラデーションになる。
💙「阿部ちゃん……?」
渡辺が初めて見る目の色に、嫌な予感を覚える。
これ、マズいのでは?と。
💙「阿部ちゃん、いいよ、もういいから!」
止めないといけないと思って体を揺さぶる。反応がないのは分かっているけれど、それでもどうにか止めたくて。
💙(一日一回の通話を使うのはここか? いやでも、もっとヤバい時に使わないと……)
そんな考えがグルグルと巡って頭を抱えていると。
💚「っ、はあっ、はあっ……」
💙「阿部ちゃん! 大丈夫?」
💚「……っごめん……大丈夫……ちょっと、疲れた……」
💙「なんか、目の色いつもと違ったけど……」
💚「マジ? 色、変わるんだ……翔太、今から言う住所に行こう。そこに、犯人の車がある。港の方だから、急がないと」
💙「わかった。みんな呼ぶわ」
すぐに車を降りていった渡辺を見送って、阿部は背もたれに体重を預けて息をついた。
正直、物凄く疲れた。自分のネットワークを使って電波を発している機器を見つけ出すのは簡単なのだけれど、車はそういうわけにはいかない。特に、ドライブレコーダーなしの車はGPSもついていないから、遠く離れたところに電波を飛ばして探すとなると相応の労力がかかり、その分、反動が阿部に返ってくる。
💚「あー……舘様のお菓子が食べたい……」
ドアが開いて、深澤が入ってくる。
💜「阿部ちゃん。大丈夫?」
💚「ふっか。うん、大丈夫だよ。どうかした?」
💜「いや、なべが阿部ちゃん疲れてるみたいって言うからさ。さっきの住所、俺のふーちゃんで行こう」
💚「え。犯人のところに行くのに目立ちすぎない?」
💜「大丈夫でしょ。ちゃんと、離れたところに降りるから」
💚「急いでるから、その方が速く着くし……ま、いっか」
疲れているせいで判断力が鈍っている自覚はあるけれど、時間をかけたくないのは事実。
持っていたラウール特性のノートパソコンの表面にあるボタンを押すと小さくなったのでポケットにしまいこんで、車から降りると大きくなったふーちゃんが、地面に身を低くして待ってくれていた。
💜「みんな、ふーちゃんに乗って。飛ばすからちゃんと掴まってね」
五人が乗り込んだのを確認し、深澤の合図でふーちゃんが大空へ飛び立った。
阿部のことは目黒がしっかりと腰を抱えて、落ちないようにサポートしている。
🧡「ええ眺めやね!」
💙「超こえー!」
💜「このくらい、慣れてもらわなきゃ困るね! もっとスピード上げるよ!」
グンとスピードが上がり「ぎゃあああああ」と渡辺の悲鳴が響いていた。
30キロほどの距離を僅か5分で辿り着いた頃には、渡辺はげっそりとしていて、あれだけ楽しそうにしていた向井も顔が真っ青になっている。
💚「この先の倉庫に車があるよ。港近くの倉庫に行方不明の女子高生。嫌な予感しかしない。みんな、気を付けて」
💜「組織ぐるみだろうから、俺と康二が前衛、めめが中間で全体の援護、後方に阿部ちゃんとなべ。阿部ちゃんはなるべく安全な所から全体を見て指示を出してほしい」
それぞれ頷く。
向かった先の倉庫には、目黒の蔓で二階の開いている窓から中に入る。二階の通路から見下ろすと、そこには縛られた女子高生が10人ほどいて、その周りをガラの悪い男達が取り囲んでいる。
💜「やっぱり居たね」
💚「康二、あの男達のいるところの重力を強くできる? 動けなくしてからじゃないと、あの子たちが危ない」
🧡「おっしゃ。任せとき」
💚「犯人の情報は調べられなかったから、異能持ちがいたらその都度、臨機応変に対応していこう」
異能関係の依頼が多いけれど、一般の事件を取り扱うこともある。今回のように、タイムリミットが迫っている時や、捜査に行き詰った時に依頼を受けている。
指示通りに向井が男たちのいる場所だけ重力を操作し、体が重くなって動けなくなったことで男達は、なんだなんだとざわついている。
そこに、目黒と深澤と向井が降り立ち。
💜「はーい。そこまで。そのまま大人しくしててねー」
「くっそ! 簡単にやられてたまるか! ぐぬあああぁああ!」
力を込めて重力から脱出するゴリラのような大男。
💜「おーおー。力技できたねー」
🖤「やっぱ異能持ち、いましたね」
💜「なべ! 女の子たちのこと、よろしく!」
💙「わかってる、よ!」
翔太が出した花びらが女子高生たちを取り巻いてドーム状となった。これで、彼女たちに手は出せない。
ゴリラみたいな異能者を相手にする深澤。その間に、重力に圧し潰されそうな男達を向井の岩で足を固めて動けなくする。
💜「いいよー、ゴリラちゃん。こっちこっちー!」
「おらぁ!」
振り下ろされた拳の一撃で床が陥没する。
💜「うへ、当たったらいたそー。でも、そんな変な筋肉の付け方したら、うちの岩本さんに怒られちゃうよー?」
両腕と両足に鋼を纏って応戦していく。
その時だった。男の一人が口を大きく開けた瞬間、耳を衝くように空気が振動する。聞き取れないそれは、超音波だ。思わず、耳を塞いで蹲る。
情報の伝達を司る電気信号がブレるのがわかる。電子の異能を持つ阿部にとって、相性が悪すぎる。
💚(……っ……頭が、割れそう……!)
痛みに耐えていると、背後から右手首をぐっと引かれて立ち上がらされる。
💚「うっ」
💙「阿部ちゃん! うぁっ!」
捕まった阿部に気を取られていた渡辺も後ろから羽交い絞めにされ、集中が切れたせいで女子高生たちを覆っていた花びらが消えた。
下の方で耳を抑えていた深澤達も、今の声にハッとして二階を見上げる。
肘を上げた状態で右手首を掴まれ、反対の手で体を押さえつけられている阿部と、背後にいる人物に脇の下から両腕を通されて羽交い絞めにされている渡辺の姿。
🧡「しょっぴー!」
💜「阿部ちゃん!」
「ハハッ! 形勢逆転だな!」
🖤「……それで勝ったつもり?」
ダンッと強く床を踏みつけると、阿部と渡辺を拘束している男達の足元から勢いよく生えた植物が、男達の体に巻き付いて動きを止める。
💜「おおー。すごっ」
🧡「さっすが、めめやわ!」
🖤「さっさと阿部ちゃん達から離れろ」
ぐっと目黒の拳に力が入ると、男達に巻き付いている蔓が絞める力が増した。
その隙に男の腕からするりと抜け出した渡辺が、阿部から男の腕を外して助け出す。渡辺に寄り掛かって何とか立っているという様子の阿部。
阿部と渡辺が離れたのを見ると、目黒は男達を絞め落とした。
💙「悪い、助かった!」
💜「これで気にしないでやれるね。康二、暴れるぞ!」
🧡「おっしゃー! 派手に行くで!」
重力、岩、鋼、蔓の力を使って男達を制圧していく。
仲間に手を出されて、もう遠慮はいらないと思ったのだろう。そこからは早かった。再び渡辺が女子高生たちと自分たちを守っているおかげで、もう何も気にするものはない。
ゴリラみたいな異能者を深澤が鋼を纏った拳で吹っ飛ばし、超音波の異能者は向井の重力を最大限まで上げて気絶させる。その他の男たちは目黒の蔓で拘束し、少し回復した阿部が警察に連絡をした。
そのおかげもあって警察が到着した頃には全てが終わっており、事情聴取を終えると夕方になっていた。
🧡「今から帰りたいとこではあるんやけどなぁ……」
💜「まさかのもう一件、依頼が入るとは……」
💙「帰りてー!」
💚「依頼は、しょうがないよね」
🖤「阿部ちゃん、大丈夫? まだ具合悪い?」
💚「ううん、もう平気。超音波と相性悪くて、ちょっと頭痛くなっちゃって」
💜「えっ!? 大丈夫じゃないじゃん!」
💙「車探す時も阿部ちゃん、辛そうだったし」
💚「そうなんだけど……でも考えてた通り、海外に売られそうになってたわけだから、急いで良かったよね」
💜「だからって阿部ちゃんが無理していいわけじゃないよ」
💚「……はい……なんか俺、毎回、怒られてる気がする」
💜「怒ってるんじゃなくて心配してんの!」
🖤「どのみち明日もあるから泊まりですよね? ホテル行って休みましょう。阿部ちゃんも負担かかって疲れてるでしょうし」
🧡「せやな。その前にご飯も食べんと」
💜「じゃー、飯食ってホテル行くか!」
💙「鍋食いてー」
🧡「なべ、だけにな」
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