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「三輪ちゃん!遅くなってごめん!もうパーティー始まってるよね?」
「あ~望月さん!こちらこそ仕事お任せしちゃってすいません!大丈夫でした!?」
「あ~。それは全然大丈夫。あの仕事は私が最後確認しないといけない内容だし、急遽予定がズレちゃって仕方ないことだから」
「すいません。先方がどうしても望月さんでって譲らなくて」
「大丈夫。もうバッチリ解決してきたから」
「さすが、望月さん!ありがとうございます」
「それで主役は・・?」
今日はあるパーティーに招待されていたのだけれど、急遽仕事が入って三輪ちゃんだけ先に参加してもらって、私は仕事を終えて駆けつけた。
「あ~、あそこです」
「あっ、ホントだ。じゃあ、ちょっと挨拶してくるね」
「はい」
三輪ちゃんにそう伝えて、今日の主役がいる場所へ。
主役に近付くと向こうも気づいて、パッと華やかな表情になる。
「透子さん!忙しいのに来て下さったんですね!ありがとうございます!」
その人物がそう言いながら嬉しそうに、こちらに近付いてきた。
「こちらこそ遅れちゃってごめんね~!」
「いえ!来て頂けるだけで嬉しいです」
「結婚おめでとう。 麻弥ちゃん」
「ありがとうございます」
華やかなドレスを身に纏った麻弥ちゃんが幸せそうに微笑む。
「まさか・・こんなに早く結婚するとは思ってなかったからビックリした」
「そう、ですよね。私もビックリです。あれからまだ一年ほどしか経ってないのに。でもなんかいざちゃんと結婚決まってからは、もう父が喜んでどんどん話進めちゃって」
「でもそう言いながらも麻弥ちゃんも幸せそう」
好きな人と幸せになる瞬間って、こんなにも綺麗で幸せが溢れてるんだな。
「はい。幸せです。でも・・透子さんにはホント申し訳ないことをしてしまって・・。あの時は私の我儘で二人にツラい想いさせてごめんなさい」
「いやいや!そんなの麻弥ちゃんが気にすることじゃないから大丈夫だよ。麻弥ちゃんは気にせず本当に好きな人と幸せになって」
「でも・・・結果、私のせいで透子さんといっくんがうまくいかなくなったのに、私だけ幸せになるなんて・・・」
「麻弥ちゃんのせいじゃないよ。私と樹はあの時はどうしたって続けられなかったんだから仕方なかったんだよ」
多分ホントに縁があれば、きっとどうにかなっていたはずだから。
「いっくん・・結局あの時私との結婚も選ばなかったのに、透子さんとも離れ離れになったままで・・・何考えてんだろ」
そう。
結局私と樹はあの時別れたけれど、樹は麻弥ちゃんと結婚することはなかった。
あれから一年経った今。
麻弥ちゃんは樹ではなく別の男性と結婚することになった。
当時は樹をあれほど好きだった麻弥ちゃんだったけれど、私と樹のこともあったり、私と別れてからも樹は頑なに麻弥ちゃんへは気持ちが傾かなかったらしく、麻弥ちゃんなりにツラい想いをしていた時に、そばで支えてくれていた男性と縁があって結婚することになったらしい。
同じ女性としては、ずっと好きだった人に振り向いてもらえないツラい気持ちは理解出来るだけに、ホント麻弥ちゃんが別の人と幸せになってくれて嬉しい。
「いっくんとは結局会えないままですか?」
「うん。あれから一度も会ってない。避けられてたりしてね?」
会社でもプライベートでも偶然に一度だって会うこともなくて。
それどころかいつの間にか樹は、唯一そんな偶然を期待出来たはずの隣の部屋からも引っ越しをしていて姿を消した。
「そんなワケないじゃないですか! 私があれだけアプローチしても透子さん一筋で一切振り向かなかったいっくんが絶対それはあり得ないです」
「でも、もう一年経つのに、何の問題もなく気持ち変わってなければ姿現してくれてもいいんだけどね」
そうだよ。
結局、麻弥ちゃんとの結婚もしなくてもいい状況に会社も持ち直して、きっと問題なくなったはずなのに。
樹と別れる原因となった問題は一つずつ解決して、今はもうクリアしているはず。
この一年の間に、樹と最初手掛けていた合同プロジェクトも大成功の結果で終われた。
その中でも一番の目玉プロジェクトだったREIジュエリーとコラボしたプロデュースジュエリーは、予想以上の売れ行きで。
他のプロデュース商品よりも少し単価も高めだったけれど、REIジュエリーの商品にしては普通に手に入れることは出来ず、このプロジェクト商品として手頃で手に入れられるとなって気付けば人気商品になっていた。
その人気商品に繋がった一つのきっかけとしては、麻弥ちゃんがこのジュエリーのイメージモデルになってくれたからだ。
麻弥ちゃんのおかげで、更に若い年齢層にも興味を持って手にしてもらいやすくなった。
そして、それも今回は男性女性どちらに向けてもの商品で、イメージモデルをしてくれた時のパートナーとの宣伝効果も評判が良くて、更に話題に。
この時、やっぱりまた麻弥ちゃんの人気と影響力のすごさを改めて実感。
今では、そのおかげでうちの会社の株も上がり、その商品の人気は現状維持どころか、どんどん新しい商品がREIジュエリーとの共作でヒット続き。
他の商品もその影響でまた注目されて全体的にも嬉しい効果に。
樹が企画してくれたこの商品は大ヒットした上に、更に会社に貢献をもたらせた。
そして実際あれから数か月して、社長の容態も良くなり、会社に戻って来た。
そのことで役員たちも安心したのか会社から離れることもなくなったようで、会社の利益もプロジェクト商品がヒットしたことにより、前以上に上がり会社の危機はなくなった。
樹はこうやって自分のいない場所であっても、そこで結果を出し続けて形としてしっかり残していた。
だけど、その喜びも樹と分かち合うこともなく、ここまでかと思うくらい、あの日以来同じ会社の人間としてもすれ違うこともなく関わることも一切なかった。
黙って引っ越したのだって、きっとそういうことだろうし、やっばりあのお別れは前向きだったように見えて、私を傷つけないように樹は優しい嘘をついてくれたのかもしれない。
「今日いっくんもパーティーに招待してるんです。でもまだいっくん顔見てないな」
そっか。
そうだよね。
樹もそりゃ招待してるか。
特に今回は結婚式ではなく仕事仲間やプライベート仲間を招待してるお披露目パーティーだし。
でもここまで会わなかったのに、今更・・・何を話せば?
どう接すればいい?
もしかしたら樹は会いたくないかもしれない。
もうきっと問題はクリアしているのに何も言ってこないってことは、きっとそういうことだ。
「あっ、じゃあ、透子さん。ゆっくりしていってくださいね」
「うん。ありがと~」
主役の麻弥ちゃんがまた別の場所でお呼びがかかって、そちらへ移動していった。
会場の中は、すでに早々と招待客が集まっている。
でもあまりの会場の広さと人の多さで、これは樹がいても見つけられなさそうな気がする。
だけどやっぱりまだ自分の中でも、会いたいのか会いたくないのかもわからない。
麻弥ちゃんがまだ樹の姿を見てないと言って、正直ホッとしている自分もいる。
結局一度別れとしまうと、ただ再会することも難しくて気まずい。
そして尚更こんな状況でまた元の関係になんて、とても戻れると思えない。