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薙刀 瑜菜🍃💌⚓️
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……俺も、ずっと――」
おらふくんの声が、そこで止まった。
おんりーは息をすることさえ忘れていた。
聞きたい。
でも、聞くのが怖い。
もし、この先に続く言葉が、自分の望むものじゃなかったら。
もし、優しさから言ってくれているだけだったら。
今度こそ、本当に諦めなくてはいけなくなる。
「……ずっと?」
おんりーが小さく尋ねると、おらふくんはぎゅっと拳を握った。
「……好きやった」
その言葉は、思いがけないほど静かに響いた。
「え……?」
「おんりーのこと。ずっと、好きやったんよ」
おんりーの目が、大きく見開かれた。
聞き間違いだと思った。
だって。
そんなこと、あるはずがないと思っていたから。
何度も何度も、自分の気持ちだけが大きくなっていくのだと思っていたから。
「……うそ」
やっと出てきた言葉は、それだった。
おらふくんは困ったように笑った。
「うそちゃうよ」
「……だって」
「うん」
「だって、俺……ずっと、おらふくんは俺のこと、仲間としてしか見てないんだと思ってた」
「……そう思わせてたんやな」
おらふくんは、少しだけ目を伏せた。
「ごめんな」
「ち、違う! 謝らなくていい……!」
おんりーは慌てて首を振った。
「俺が勝手に……勝手に、そう思ってただけだから」
「でも、俺も怖かったんよ」
おらふくんは続けた。
「おんりーと一緒におる時間が、楽しすぎて。隣で笑ってくれるのが嬉しくて。もっと一緒にいたいって思うたびに……これ以上近づいて、今の関係が壊れたらどうしようって」
おんりーは、じっと彼を見つめた。
「……おらふくんも?」
「うん」
「……俺と同じ?」
「……うん」
その瞬間。
おんりーの頬を、涙が伝った。
止めようと思っても止まらなかった。
ずっと欲しかった答えだった。
何度も夢に見た言葉だった。
それなのに、実際に聞いてみると、信じられないくらい胸がいっぱいになった。
「……なんで」
「ん?」
「……もっと早く言ってくれればよかったのに……」
泣きながら言うと、おらふくんは眉を下げた。
「ほんまやな」
「俺、ずっと……」
声が震える。
「ずっと、諦めようとしてたんだよ……」
おらふくんの表情が変わった。
「花が出てくるたびに、もうやめようって思った。こんなの、叶わないから……好きでいるのをやめたら、いつか治るんじゃないかって……」
おんりーは手の中の青い勿忘草を見つめた。
「でも、無理だった」
小さく笑う。
「……全然、無理だった」
「……おんりー」
「おらふくんのこと、好きじゃなくなりたかったわけじゃないんだよ」
涙が、またひとつ落ちた。
「ただ……好きでいるのが、苦しかっただけ」
おらふくんは、ゆっくりと手を伸ばした。
そして、おんりーが握りしめていた手に、そっと自分の手を重ねた。
「……もう、ひとりで苦しまんでええよ」
おんりーは顔を上げた。
「……え?」
「俺も一緒におるから」
おらふくんの目は、まっすぐだった。
「嬉しいことも、しんどいことも。これからは、ちゃんと一緒に考えたい」
そして、少し照れたように笑う。
「……恋人として」
「…………っ!」
おんりーの顔が、一気に赤くなった。
「こ、恋人……!?」
「うん」
「……え、えっ、ちょ、待って……!」
「待つよ?」
「そうじゃなくて……!」
おんりーは両手で顔を覆った。
さっきまで、あんなに苦しかったのに。
今は胸がいっぱいで、何を言えばいいのかまったくわからない。
おらふくんが、自分を好き。
自分と同じように、ずっと気持ちを隠していた。
そして今。
恋人として、一緒にいたいと言ってくれた。
「……ほんまに、ええの?」
おらふくんの声が、少しだけ不安そうになった。
「俺と……付き合ってくれる?」
おんりーは、顔を覆っていた手をゆっくり下ろした。
涙で濡れた目で、おらふくんを見つめる。
そんなの。
答えなんて、ひとつしかない。
「……うん」
小さく頷く。
それから、今度はちゃんと。
「……俺も、おらふくんと一緒にいたい」
おらふくんの目が、ぱっと明るくなった。
「……ほんま?」
「……ほんと」
「ほんまに?」
「二回聞かないでよ……!」
思わずいつもの調子で返してしまい、おんりーは口元を押さえた。
おらふくんが笑う。
その笑顔を見た瞬間、おんりーもつられて笑ってしまった。
ずっと、見たかった笑顔。
自分の隣で、自分に向けて笑ってくれる顔。
「……よかったぁ」
おらふくんは、心の底から安心したように息を吐いた。
「俺、めっちゃ緊張してたんよ……」
「……俺だって」
「いや、俺のほうが緊張してたと思うで?」
「なんで張り合うの……」
ふたりの間に、いつもの空気が戻ってくる。
でも、ひとつだけ違う。
もう、お互いの気持ちを隠さなくていい。
好きだという言葉を、飲み込まなくていい。
隣にいたいと思うことを、諦めなくていい。
おんりーは、ふと手の中の花を見た。
青い勿忘草。
ずっと、自分を苦しめてきた花。
好きだと伝えられない気持ちが、溢れてしまった証。
「……あ」
おんりーが小さく声を上げた。
「ん? どしたん?」
「……花」
「花?」
おんりーは、自分の手の中を見つめた。
さっきまで、胸が苦しくなるほど意識していた喉の違和感がない。
あの、何かが込み上げてくるような感覚も。
ずっと自分を追い詰めていた痛みも。
今は、驚くほど静かだった。
「……なんか、苦しくない」
おらふくんが、心配そうに顔を覗き込む。
「ほんまに? 大丈夫?」
「うん……。さっきまで、あんなに苦しかったのに」
おんりーは不思議そうに首を傾げた。
「……なんでだろ」
おらふくんは、机の上に置かれた花を見た。
それから、おんりーの手をもう一度握った。
「……気持ち、伝えられたからかな」
「……え?」
「ずっとひとりで抱えてたもんが、少し軽くなったんちゃう?」
おんりーは、しばらく黙っていた。
そして。
「……そう、なのかな」
小さく笑った。
本当に病気が治ったのかどうかは、まだわからない。
明日になったら、また花が咲くかもしれない。
それでも。
少なくとも今は、ひとりじゃない。
自分の気持ちを知ってくれた人がいる。
同じ気持ちを返してくれた人がいる。
それだけで、世界が少し違って見えた。
「……おらふくん」
「ん?」
「……ありがとう」
おらふくんは、一瞬きょとんとしたあと、優しく笑った。
「こちらこそ」
そして、少しだけ照れくさそうに付け足す。
「……好きになってくれて、ありがとう」
おんりーは、また顔を赤くした。
「……っ、もう! そういうの、急に言わないで!」
「えー? 恋人になったんやから、ええやん」
「よくない!」
「なんでー!」
いつものように言い合って。
いつものように笑って。
でも、つないだ手だけは、離さなかった。
机の上の青い勿忘草が、ふたりの間で静かに揺れていた。
その夜。
帰り際、おらふくんは玄関で靴を履きながら、ふと思い出したように振り返った。
「……なあ、おんりー」
「ん?」
「明日も、会ってええ?」
おんりーは、少し目を丸くした。
それから、ふっと笑った。
「……当たり前じゃん」
「ほんま?」
「だから、二回聞かないでって!」
おらふくんは、楽しそうに笑った。
「ほな、明日も来るわ」
「うん」
おんりーは、ドアの前に立ったまま、彼を見送った。
おらふくんが廊下の向こうへ歩いていく。
いつもなら、背中が見えなくなるまで寂しくて仕方がなかった。
明日も会えるのに。
またすぐ話せるのに。
それでも、離れるのが怖かった。
でも今日は違った。
「……おらふくん!」
気づけば、呼び止めていた。
おらふくんが振り返る。
「んー?」
おんりーは、少しだけ迷った。
そして、勇気を出して言った。
「……また明日ね!」
おらふくんは、一瞬驚いたあと。
誰よりも嬉しそうに笑った。
「うん! また明日!」
その声が、夜の廊下に響いた。
おんりーはドアを閉めて、ひとりになった部屋でそっと息を吐く。
机の上には、青い勿忘草が一輪。
もう、悲しいだけの花じゃなかった。
忘れないで。
そんなふうに願うだけの花じゃなかった。
忘れたくない人と、明日も会える。
その約束を、そっと胸に抱いて。
おんりーは、青い花を大切に飾った。
窓から差し込む月明かりが、花びらを淡く照らしている。
「……おやすみ、おらふくん」
誰もいない部屋で、そっと呟く。
それから、少し照れくさそうに笑った。
「……大好き」
青い勿忘草は、静かに揺れていた。
まるで、ふたりの明日を祝福するように。
――今度こそ、その花は、幸せのために咲いていた。
花吐き病、完結しましたー!!✨️
どうでしたか?!
長くなってしまい申し訳ない😭
コメント
1件
おおおおお最終話!!完結おめでとうございます😭✨💕 おらふくんの「好きやった」からの流れ、胸がギュッてなって何度も読み返したよ…!おんりーがずっと諦めようとしてたのに、花が咲くたびに好きでいることを自覚しちゃうの、切なすぎて涙腺崩壊した😭💦でも最後は青い勿忘草が「幸せのための花」になったのが本当に尊い…! 「また明日」言える幸せ、ほんとエモすぎてやばい…! 素敵な作品をありがとうございました🌸✨