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10. ◇郷里へ向かう
私は新幹線の窓ガラスを見続けた。
流れゆく街中の風景が続き、そして、トンネルを抜けてしばらくすると美しい
田園風景が窓越しに見えた。
しかし、徐々にそれらの風景は、振り払おうとしてもどうしても離れてくれなくて――――
夫と仲良く手を繋いだきれいな女性の残像へと変わっていった。
私にはっきりと記憶があったのは、夫と女性が仲睦まじく手を繋いで
エントランスを潜り抜けて来た横を、一瞥もせず走り去ったその辺りまでだった。
気がつくと、腑抜けた状態でボンヤリと、私は自宅のリビングにいた。
夫はどうするだろうか。
同棲までしているのだから本気の付き合いなのだろう。
何より、ここしばらく夫は私に会いに帰って来ていない。
だから、もうすでに私への気持ちもないのだろう。
いつ私に別れを切り出そうかと迷っていた?
そんなところだろう。
私に知られたことで、思い切りがついたのではないだろうか。
きっと、近日中に離婚を申し出てくるのだろうなぁ、とか
あれこれ考えているうちに……
夫が私たちふたりの店を持つために、遠くの店で頑張ると言ってくれた
昔のやさしい夫の姿や、将来を見据えて話していた時のうれしそうな様子が
蘇ってきてしまう。
そのため、私の胸は、増々苦しくなるばかりだった。
これがただの夢だったら……。
余りにも切なくて、ひとり部屋で私は号泣した。
泣き疲れたあと、何も食べてなかったことに気が付いて、
お腹がすくくらいなら大丈夫……
まだ私は大丈夫だと自分を励まし、買い置きしてたうどんを
ささっと作り、食べた。
『泣いてばかりいても駄目なんだよ? 元気出さなきゃ』
って、一生懸命自分を励ました。
そうでもしてないと、また泣いてしまいそうだった。
いずれ、夫から何がしかの連絡があるとは思っていたけれど、
まさか私がこっちに帰って来てほんの数時間後に、追いかけるようにして
自宅に戻るだなんて、誰が想像できただろうか!