テラーノベル
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Attention, please!
前編をご覧下さい
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30分ほど掛けて、エミさんのバイクに跨り辿り着くは目的地。
時刻はちょうど午前5時。
早起きの奴らは起きて活動していそうな時間帯だが、A国のトップは報告通りだらしない奴らしかいないようで。
南東の補給路へ、丁度タイミング良く補給部隊が到着。
荷物の中に紛れ込み、あっという間に城壁内に侵入完了。
その時に隣で悪い笑みを浮かべるエミさんがおったから、これも予定通りなのかもしれへんけど。
表側の情報によると、一応通信部は南東、つまりここからすぐ近くの場所にあるらしいのだが当然それはダミー確定。
「どうする? 手分けして探すか?」
「……いえ、こういう場合大体城の配置的に南西にあると思います。」
「ほんまに? まぁエミさんが言うなら平気か」
荷物からおり住宅街の脇道でこそことそ作戦計画を立てる。
通信部制圧の際俺たちお得意の爆弾は封じることにした。
爆音で近隣住民を叩き起させ混乱状態にするのもいいが、メインディッシュは矢張り最後じゃなくては。
俺は屋根の上によじ登り、暗闇に隠れ移動する。
エミさんはお得意の頭脳を使って路地裏を歩き渡り通信部を目指した。
「着きましたね」
「流石エミさんやな、予想的中やん」
無言で拳を突き出せば、ぐっと握り拳でハイタッチしてくれる。
こういう所がいいんよなぁ。
「俺先突っ込むから援護任すわ」
「了解です、無茶しないでくださいよ」
「っは、舐められたもんやな!」
通信部と言えばコンピューターだの、機械系統が大量にある場所。
軍の設備的にも重要ポジションに当たる所、当然護衛はいると思ったのだが…
「……あっさり侵入出来てしもうた」
通信部のブレーカーを落としてパニクっになったところを制圧しようと考えていたが、真逆こんなにも手薄だとは思っていなかった。
「…罠か?」
だが実際人の気配はあるし、設備的にもここが本丸で間違いない筈だ。
「むさ、ん……ゾムさん…!!」
「エミさん?!」
突然胸元に入れて置いた通信機が音を成す。
「どうやら先に読まれてたみたいや、今外結構キツイんやけどゾムさん一旦こっち来れへん!?」
エミさんにしては珍しく切羽詰まった声が、通信機から聞こえてくる。
「……エミさん、あと何分耐えれる?」
「っ、15分が限界やね」
「そんだけありゃ充分やわ、そっち一旦任せた」
「了解!」
さてと、となるとここのお偉いさんは既に逃げたか、将又部屋の中央でケラケラ笑ってるか…
おーん、どう考えても後者やな。
「っ、不味いわぁ…」
ゾムさんにはカッコつけて15分とか言うてもうたけど、正直言うて10分が限界なんよな。
「はぁ、手榴弾使えたらもうちょい楽なんやけ、っど!」
まぁ仕方あらへんわ、ゾムさんと爆弾は最後のお楽しみにしよう約束したからね。
路地裏から路地裏へ、場所を変えつつ、撃ち殺した相手の物資で反撃を繰り返す。
「自分の国なのに全然この人ら道知らへんのなぁ…」
思わず嘲笑とも言える言葉が出るが、実際その通りなので誰も文句は言うまい。
「おっと」
路地の角を曲がりかけた瞬間、足が止まる。
「……は?」
そこにおったのは、さっきまでの雑兵とは明らかに違う“整った隊列”。
無駄のない構え、視線のブレの無さ。
何より__
「……遅すぎやろ、出てくんのが」
思わず乾いた笑いが漏れる。
まるで、ここに誘導されたかのような配置。
一歩、後ろに下がる。
その瞬間。
__パンッ
乾いた音。
壁が弾け、頬をかすめる熱。
「っ、狙撃…!」
反射的に物陰へ滑り込む。
“見られている”。
しかも、ただの監視やない。
動きを理解した上で撃ってきてる。
「はは、成程なぁ…」
通信機に手を伸ばす。
「ゾムさん、聞こえる?」
数秒のノイズの後、返答。
「聞こえてるで」
「こっち、“当たり”やわ。しかも結構えぐい」
一瞬の沈黙。
『……やろな』
その一言で、全部察する。
「あぁ、そっちもか」
『せや。“お偉いさん”、ちゃんと居るで』
その声、ほんの少しだけ楽しそうで。
思わず小さく息が漏れた。
「ほな、予定変更やね」
壁越しに、再び弾丸がめり込む。
コンクリートの欠片がぱらぱらと落ちる中、口角を上げる。
「15分言うたけど__」
足に力を込める。
「10分で終わらせるわ」
「……ほーん、やっぱ予想通りって感じか」
壁一面に広がるモニター。
この施設の電源は既に落としたはずやのに、
中央の一角だけが淡く光を帯びている。
その前で、男が一人。
脚を組み、ワインを揺らしながら、こちらを見もせずに口を開いた。
「おやおや、君が噂の“味方最大の脅威”か」
「そうやけど? おっさんは誰なん」
「おっさん……。ほう、私のことかい?」
グラスの中で赤が揺れる。
ゆっくりと振り向いたその顔には、焦りも警戒も一切ない。
「それ以外おらんやろ」
「はは、随分と遠慮がない」
男は立ち上がるでもなく、ただ指先でモニターを軽く叩いた。
次の瞬間。
__パッ
一斉に画面が点灯する。
「っ……」
映し出されたのは
「エミさん…」
路地裏で銃を構える姿。
その周囲を、円を描くように囲む部隊。
しかもさっきの雑兵やない。
今、外で当たってる“あれ”や。
「君の相棒、なかなか粘るね」
くつくつと喉を鳴らして笑う。
「だが……あと何分持つと思う?」
沈黙。
ゾムは視線だけを画面から外し、男へ戻す。
「……さぁな」
「おや? 興味がないのかい?」
「あるで」
一歩、踏み出す。
「あるから聞いとるんや」
その声音に、先程までの軽さは消えていた。
「なんで“そこまで分かっとるんか”ってな」
男の口角が、わずかに上がる。
「簡単な話だよ」
グラスを傾け、赤を喉へ流し込む。
「君たちは、“最初からここに来るように動かされていた”」
静寂が落ちる。
遠くで、かすかに銃声。
「南東の補給路、手薄な警備、偽の通信部の情報」
一つ一つ、指折り数えるように並べていく。
「どれもこれも、“君たちのために用意した”」
「……」
「さて」
男はようやくゾムの方へしっかり視線を向けた。
「この状況で、君はどうする?」
「任務を続けるか」
「それとも__」
モニターに映るエミの姿を、軽く指で示す。
「助けに行くか」
男の言葉が、やけにゆっくり響く。
数秒。
ゾムは、ふっと息を吐いて
「……アホか」
小さく笑った。
「なんでどっちか選ばなあかんねん」
視線を上げる。
その目には、もう迷いなんて欠片もない。
「両方やるに決まっとるやろ」
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝後編に続く
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