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賢一は椅子から立ち上がると社長に向かい深く頭を下げる。
「社長、会社を騙していたこと大変申し訳ありませんでした。森川住販による負債はISLAND住販から今後5年かけて返していく予定です」
「これも高い授業料だったと言うことにしよう。新二もこれからは甘えるばかりでなく自分で考えそして行動の伴う生き方をするように。賢一は今回の件でお前の能力を測るいい機会になった。4月から副社長としてのちにこの会社を代表するものとしてしっかりとやってもらいたい。」
「と、言うのは建前でお前たちはもう大人だ。ただ、正しく悔いのない人生を送ってほしい」
夫人の視線が熱く注がれているのがわかる。でも、この状況で自分から自己紹介っていいんだろうか?というより森川彩香がいるところで結構きついかも。
「母さん、すっごい期待しているところ悪いけど、今日はこれで帰るから。紹介はまた後日、これから俺の未来が掛かってるから。じゃあ」
賢一が差し出した手を取ると「いこうか」と囁いた。
二人揃って頭を下げてから出口に向かって歩き出す、ドアを開ける寸前
「新二、彩香さんを送ってあげて。もうハイヤーが来る事はないから」
その一言で、森川彩香の泣き声がさらに大きくなった。