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深瀬さんはあんまり笑わない。と言っても学校ではの話だが。
もうすぐ体育祭が始まる。高校1年生になっての初めての体育祭だ。どんなものかは進路決めるときに調べてたからわかるけど、いざするとなるとやはりわからないことだらけだった。
体育祭準備を進めるため、通常授業は少なくなる。その分、深瀬さんと会えるということだ。
「あ、深瀬さん!」
準備倉庫前でポニーテールに髪を結ぶ深瀬さんを見つけて、思わず声をかけてしまう。
「…!市ノ瀬ちゃん。どうしたの?」
「いえ、特に何も…。深瀬さんを見かけたので声かけようと思って。」
「え…わざわざありがとう。」
深瀬さんには私にしか見せない表情がある。それは笑顔だ。心から笑ってる表情を見えるのは私だけの特権である。
「深瀬さんは何に出るんですか?今年も掛け持ち?」
「ううん。100メートル走だけ。運動は苦手だから。」
「そうなんですね。私も得意なほうではないですw」
「…その…だから、えと…」
「…?どうしました?」
「お、応援のつもりで、頭撫でてほしい…」
思わずフリーズしてしまう。どれだけかわいいのよこの人。
深瀬さんは顔を真っ赤にしながら、「や、やっぱりなんでもない…!」と走り去ろうとするので、私は腕を掴んで思いっきり自分のほうに寄せた。
そして、なるべく優しく頭を撫でる。
「…!あ、ありがとう…。」
「いいえ。頑張ってください。応援してます(*^^*)」
すると深瀬さんは満足そうに頷き、私を思いっきり抱きしめた。
「ちょ、深瀬さん…!?」
「…なんでもできる気がしてきた。ありがとう。本当に…。」
さらに顔をうずめてくる。
強く抱きしめたいと思うが、ぐっと堪え、また頭を撫でた。
「はいっ…。」
「あれ?深瀬さんどこー?」
するとグラウンドから、深瀬さんを探す声がした。私はそっと深瀬さんを離し、ファイトっ…!とガッツポーズを見せてみる。
深瀬さんは私と同じく笑ってガッツポーズをして見せ、そのまま「はい!」とグラウンドのほうに走って行った。
深瀬さんに応援したつもりが、逆に私が深瀬さんに応援されてしまった。
今日はいつもより早く走れる気がする。