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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。シスターとベルに同席して貰ってトライデント・ファミリーの幹部マルコさんとの会談に臨んでいます。

マルコさん持参した手土産は『ライデン社』の試作自動拳銃であり、大変魅力的なものでした。下手にお金を積まれるよりこの様な手土産の方が嬉しくあります。個人的には好感が持てますね。

マルコさんが提案した取引については、うちの信条としてお断りさせていただきました。麻薬の類いが莫大な利益を生むことは理解していますが、私個人としても扱いたくはない商材であることに変わりはありません。

カナリアお姉様、ユーシスお兄様だって私を見限るでしょう。

何より、帝国の麻薬撲滅に尽力されていたお父様の活動を娘の私が汚すわけには参りません。そんなつもりもありませんがね。

取引をお断りしたのですが、マルコさんはある程度予想していたのか残念そうにしませんでした。素敵な手土産の件もありますし、私はマルコさんともう少しお話をすることにしました。

「マルコさん、貴方は私に何を望みますか?」

「迂遠な言い方は苦手なんだ。ハッキリと言わせて欲しい」

「どうぞ?」

「うちとの同盟関係の締結、それが俺の望みだよ」

「それはトライデント・ファミリーとしての望みですか?」

「いや、俺個人の願いだ。もちろんファーザーを納得させる自信はある」

マナミアさんの調べでは、トライデント・ファミリーのボスであるドン・ベネットはプライドの高い典型的なマフィア。所謂ファーザーと呼ばれる人物ですが決して大物とは言えない。

ではなぜ群雄割拠の十四番街で短期間に勢力を拡大させることが出来たのか。

それは目の前の男性、つまり幹部のマルコ=テッサリアが切れ者だからです。マナミアさんからの報告書にも要注意人物と書かれていましたし、シスター曰くマフィアの世界では名の知れた有名人なのだとか。

「同盟か。うちとそっちじゃ規模が違うが、うちのお嬢を舐めてるって訳じゃねぇよな?旦那」

ベルが口を挟みました。うちでは発言も自由です。貫禄?大切なものが居ればそれでよし。舐めて侮ってくれれば万々歳ですからね。

「もちろんそんなつもりはないさ。暁とうちじゃ格が違うのは理解してる。だが、そうだな。代表はまだまだ組織をデカくするつもりだよな?」

「はい」

「俺はアンタならシェルドハーフェン、つまり裏社会の制覇も夢じゃないと考えてるんだ。エルダス・ファミリー、血塗られた戦旗を葬り去った実力は目を見張るものがある」

「運が良かっただけかもしれませんよ?」

「そう考えるバカも居るかも知れねぇが、俺は違う。俺達に十四番街を任せてくれるなら、アガリはもちろんアンタの尖兵として派手に暴れ回ってみせる」

「つまり、同盟とは名ばかりの従属化ですか。他の連中が認めるのですか?」

シスターが口を開きました。確かにいきなり従属化を申し出てきたことは驚きましたが、ドン・ベネットや他の幹部達が納得するとは思えません。

「シスターカテリナの心配は最もだ。だがな、これまでは何とか勢力を拡大させることが出来たが、正直頭打ちの状態でな」

マルコさんが言うには、更なる勢力拡大を目指していてもドン・ベネットや他の幹部達が今ある利益に固執して組織の整備が遅々として進んでいないのだとか。

「鮮やかに勝ちすぎたとは思う。他の組織からも一目を置かれているが、今のままじゃ虚を突かれて壊滅するだけだ」

「だからうちと手を結ぶと」

「大規模な組織を二つも壊滅させて、ロウェルの森から起きたスタンピードまで跳ね返したアンタ達の力量を見込んで頼んでるんだ」

「仮に私達が支援しても、他の連中が心を入れ換えるとは思えませんが?」

「その時は、俺が貰う。アンタ達を失望させるつもりはない。出資分はしっかりと働かせて貰う」

シスターの疑問に答えたマルコさんの表情は……良いですね、ギラギラしています。この人は自分の野望のためならボスも殺すでしょう。

野望と向上心に満ちた、まさに裏社会の人間ですね。

「ではマルコさん、貴方の望みは何ですか?」

「麻薬王」

ニヤリと笑うマルコさん。

帝国で流れる麻薬の八割はシェルドハーフェン、それも十三番街の畑で栽培されたものです。

それを支配できれば、間違いなく麻薬王と呼ばれることになりますね。

「暁の勢力圏内で麻薬の取り扱いは厳禁、これを護れますか?」

「ああ、当然だ。ヤクを取り扱うのは俺達であり、暁には関係ない話だからな」

ふむ、傘下組織の取り扱う商品に関してまで突っ込んでくることは無いかも……いや、そこは私の出方次第か。お義姉様やサリアさんは黙認してくれるでしょうね。

『オータムリゾート』や『海狼の牙』は麻薬も取り扱ってるみたいですし。

カナリアお姉様には事情を説明すれば理解が得られると思います。対価が怖いけど。

「分かりました」

私が手を叩くといつの間にかセレスティンが隣に立っていて、マルコさんに金貨の袋を差し出しました。

……いつの間に入ってきたのかな?

「執事の嗜みでございます」

うん、触れないことにします。知らなくても良いことはたくさんある筈ですからね。

「これは?」

「素敵な手土産と、個人的に興味深いお話をしてくれたお礼です。金貨百枚あります」

「なっ!?」

いきなりの大金でビックリしていますね。星金貨一枚分です。安くはありませんが、私のポケットマネーですから。

……必要ないと言っても私の取り分として座っていても大金が入ってくるんですよね。少しでも使わないと。

「こんな大金を!?」

「これはトライデント・ファミリーではなく、貴方個人に対するお礼です。どう使うかは、貴方の自由にしてください」

「はははっ……気前が良いとは聞いていたが、これ程とはな。尚更代表を失望させるわけにはいかねぇ。定期的に連絡員を寄越して経過を伝える。まあ、期待してくれ」

「はい、期待しています」

マルコさんは足早に館を後にしました。

「良かったのか?お嬢」

「あの手の男は、下手をすればシャーリィに噛み付きますよ」

「その時は、十四番街と十三番街を貰います」

「ヤクに手を出すのか?」

「いいえ、私の傘下に居るなら好きにさせます。噛み付くならそれを口実に十四番街を貰います。そして十三番街の薬物畑を燃やします。それに、私は言いましたよ?暁の勢力圏内で麻薬の取り扱いは厳禁だと」

「なるほどな、お嬢がシェルドハーフェンを制覇したら旦那も商売が出来なくなる」

「その時はマルコさんに決断を迫るだけですよ」

当たり前ですよね。

「……末恐ろしい娘になりましたね。相手の野望を利用するとは」

「出来れば仲良くしたいです。プランBの十四番街制圧はあんまり採りたくはありませんが、その時は麻薬撲滅を成し遂げるだけです」

頑張ってくださいね、マルコさん。

シャーリィは満面の笑みを浮かべながらマルコを見送った。数多の抗争と危機は彼女に強かさを会得させつつあった。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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