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#ドアマットヒロイン
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ようやく国境付近まであと一息というところで、賊がわんさか出てくる出てくる。こんなことなら馬車の椅子のクッション具合を改良するよりも、装甲をオリハルコンとかしっかりしたものにしておけばよかったわ。
盗賊。山賊。暗殺者。人攫い。なんか怪しいローブを纏った集団。
絶対最後のは、教会関係だと思う!
だって名乗っていたからね!
「我らは崇高なる白銀比の素晴らしさを追求する同士だ! 我らの同胞となる者を返してもろう!!」
ローブには正方形と、対角線の線が入った銀の刺繍が目立っていた。隠す気ゼロだな。国際問題になるんじゃないの?
今までの追っ手の中で、一番粘着されそうな予感しかない。しかも全員が術者っぽい。
野宿をするため馬車を停車していたので、完全に気が緩んだタイミングを狙っていたのだろう。
周囲は森に囲まれていて馬車で逃げるにも速度が出ないだろう。しかも相手は五人。こちらはお父様とミレイア姉様、リュカと御者が二人……。
「ロゼッタ、いざとなったら転移魔導具で逃げなさい」
「ミレイア姉様、でも……」
「ゔぅ!」
幻獣猫も私の肩に乗っていて警戒している。いくら幻獣猫であっても、この人数をなんとかできるとは思えない。
「この魔法陣で同胞となる者を、取り返してみせる」
術者たちは見せびらかすように空に魔法陣を展開していく。それは私の知る魔法術式とは異なり、正方形の術式だった。本当に白銀比が好きなのね。
「あれは、まさか」
「捕縛に特化した魔法術式!?」
「そんな物まで──くっ」
捕縛に特化した術式!? 魔導具に使うだけじゃなくて魔法術式そのものでが魔法になる。なにそれ? 面白そう。うーん、彼らの正方形は美しいけれど、魔法術式においてはなんだか薄っぺらく感じてしまう。
「どうして図形だけで構築しているのです? ここに数式を組み込まないと魔法を展開する際、単純な命令を二つか三つしか入らないじゃないですか」
「「「「「!?」」」」」
全員が固まった。ちなみにミレイア姉様たちも同じく固まっている。
「あ、あの! この魔法陣こそが完璧だと思うのですが……何が足りませんか?」
敵の術者が魔法陣を展開したまま質問をしてくるので、率直な意見を口にする。
「魔力そのものは高いですが、白銀比の形で作られる場合、魔方陣で作ったほうが強いでは?」
「まほうじん?」
私は彼らの魔法陣を見様見真似で作り上げつつ、正方形の形をなした4×4の魔方陣を作り出す。
14、7、2、11
1、12、13、8
15、6、3、10
4、9、16、5
縦、横、斜のどこを和算しても34になる。これが魔方陣であり、ここに魔力を流すことで、より複雑な34つの術式を組み込む。ちなみに元の世界では「魔の正方形」って呼ばれていた。
元の世界の数学の方程式や図などに魔力を込めることで高度な魔導具が作れることは実証したが、よくよく考えれば魔法も魔法術式を用いれば魔導具の媒体を必要とせずに魔法を使えるのではないか。
その考えに至れたのは、眼前にいる魔術者が魔法術式を展開することで証明してくれたのだ。実際に試してみたらできてしまった。うん。自分でもビックリ。
「この魔方陣を展開すれば、あらゆる属性の攻撃を弾くよう命令を追加してみました。魔法攻撃力が高い場合は、その限りではないけれど、時間稼ぎにはもってこいだと思うのです」
「「「「「おおおおおーーーーー!」」」」」
なぜか拍手喝采を受けてしまった。この人たち何しに来たのだろう?
まあ白銀比が異様に好きな気持ちだけは、伝わってきた。うーん。好きなことに忠実すぎて暴走している?
「今のレベルですと私を捕縛は難しいですよ。だって粉々に砕きますし、魔力量的にも耐久する自信があります。……強行するよりも正攻法のほうが堅実的ですよ」
これで引き下がってくれないかな?
そう思ったのだけれど、ちょっと甘かった。術者全員の目が鋭く、雰囲気もガラリと変わる。
「ここまでの叡智。やはり我々には必要な方だ」
「刺し違えてでも、お連れしなければ!」
「えええええ!?」
「ロゼッタ、下がって」
あああ! 交渉失敗。敵に塩を送るだけではなく、士気を上げるだけでした!
せめて肩の上にいる幻獣猫は守らないと!
そう思っていたのだが術者たちのいる場所に、稲妻が迸る。
ズドーン、と直撃した。
しかも逃げ場がない四方からの同時攻撃。あまりの速さに瞬きも忘れてしまう。
すごい!
「ぎゃああああ」
「うごけなっ……」
強大な魔力を使った一撃を前に、なす術もなく従者たちが膝を突いて崩れ落ちる。あんな強力な攻撃魔法があるのね。これじゃあ、魔法術式を展開する前にやられてしまうわ。
ん? でも今の魔法は誰が?
「ロゼッタが見逃してやると言っている間に去るべきだと思うが、それともここで犬死にするか?」
「え」
私のすぐ傍に金髪で水色の美しい瞳を持ったジルベール様が佇んでいた。しかも王族の正装姿だ。ま、眩しい。
ううん、それよりどう考えても、式典の途中で来たみたいな格好なのですが!?
「ジルベール様?」
「ロゼッタが危ないと分身体からSOSが出ていたらから、転送魔法を使ったんだ。間に合ってよかったよ」
そういうなり、私をギュッと抱きしめる。会わない間に距離感がバグっている!?
無理矢理離れようとしたが、ジルベール様の手が震えているのに気づき、抵抗する気が失せてしまった。
だって「大事だって、大切だ」って全身で伝えようとするのだもの。不覚にも嬉しくなってしまったのだ。